8日目 狂気の色慾
久しぶりの投稿です!!
心層世界にクロードが入ってから数分--アトラスは椅子に腰を下ろして小さなため息をついた。
「さて、巫女様を彼女の元へ行くことに成功した訳だし--そろそろ出てきたらどうかしら? シス」
アトラスは自分の背後に向かって声をかけた。 すると、誰もいないはずの壁際に一人の少女が立っていた。 その少女--シスは血塗れのシスター服を身に纏っていて三日月型に歪んだ口元に血塗れの顔。右手には他のシスター服を着ていた少女の右腕だけが握られていた。
「キヒィ、バレちゃいましたァ? キヒィヒヒ♪」
気味の悪い笑い声をあげてシスは自身の舌をベロりと出して告げた。 まるでそれは狂った快楽殺人鬼のようだ。 アストラは悲しげな顔で後ろを振り返り口を開いた。
「あなたがここに来た時から私は気づいていました。 あなたが魔神の一人であることは・・・ですが私は例え魔神だったとしても更生させればいい子になるのでないかと思い、あなたを育ててきました。 だからこそ--私は悲しいです」
「ハァ? いい子ォ? バッカじゃないのォ? いい歳したババアがクソガキみてェな幼稚な夢をまだ見てるですかァ? キヒィ・・・キヒヒヒヒヒ!! 笑わせるならもっと面白い話をしてくださいよォ、オバサン♪ それに悲しい? 悲しいとか意味わかんねェんすけどもォ? もっとわかりやすく言ってくれやがりませんかァ?」
「はぁ、本当に悲しいですよ。 結局、魔神と人間は争うことしか出来ない運命なのですね。 わかりました、私の力をもってあなたに安らかな眠りを与えてあげましょう」
アストラはそう言うと杖をかざして声を上げた。
「「十二星座を鍵として--
聖霊の王顕現す--
果ての彼方に歌う浄化の唄--
闇を滅し闇を葬る神の裁き--
《滅浄の神裁!!」
途端、アストラの背後に黄金の大扉が現れた。 その扉には十二星座の絵が彫られており、その各々の星座の下に小さな窪みのある扉。 そこから、更に空中に十二星座の鍵が出現し、その窪みへと吸い込まれていった。 扉の軋む音が部屋の中を支配する。 黄金の光が発せられ、扉が完全に開かれた。 その扉の中から全身を光で覆われた巨大な人型のシルエットが顕れた。
「キ、キヒィ♪ 見せましたね、
見せちゃいましたね!! 聖霊王〈アストラル•ゼロ〉!!
それが来るのを私は待ってたんですよ!! ということで、ほ・か・く♪」
シスはニヤリと笑い、指を鳴らした。 瞬間、アストラが召喚した聖霊王が突如顕れた全裸の女の下半身に鳥籠が生えた気味の悪い何かに飲み込まれた。 そして消えた。
「シス! あなたは何を!?」
「教えてあげましょーか? オバサン。 死ぬ前の置き土産にとしてはいいんじゃないですかァ♪ テなわけで、教えてあげますよ、アストラ様♪」
アストラはその笑顔に背筋が凍るのを感じた。 あれが本当にあのシスなのかと。 あんなにいい子だったあの彼女からは程遠い気味の悪い笑顔。 アストラは腰が砕け、杖を支えに地面にヘタレこんだ。
「えーと、とりあえずそのままで話を聞いとけってんですよ、オバサン。 私が言う前に倒れられるのは困るから頑張ってくださいねぇ♪ それじゃ、教えますね。 召喚した聖霊王を取り込んだあの鳥籠のことを。 あれは私の権能〈狂美嬢ノ愚籠〉。 私だけが使える特殊能力って奴ですよ。 で、この能力はこんなことにも使えたりしやがるんですよねぇ、っと」
シスは何も無い空間に両手を差し込み、カーテンを開けるように左右に押し開いた。 途端、何も無かったはずの空間に大きな歪みが生じ、その中から眠りについているクロードとヒナが現れた。
アストラはその瞬間、嫌な予感を感じ取った。
「キヒィ♪ 結構好みの顔してやがりますねぇ♪ この男」
シスはクロードの顔、そして服をぬがし全身を艶めかしそうに赤い舌で舐めまわし始めた。 水のような音をあげて、イヤらしく舌がはい回る。 しかし、そんなことをされても心層世界へと意識がいっているクロードに変化はない。 そしてシスは満足したのか舐めるのをやめ、無抵抗のクロードに口づけをした。 それはまるで死体にキスをする女という異常な光景でアストラは嫌悪感と怒りで胸の中をごちゃ混ぜな憎悪でかられていた。
「シス!! あなたはなんてことを!!」
「ハァ? うっせぇんですよ、オバサン。 あ、もしかしてこの男に惚れましたか? それはすいませんでしたねぇ♪ 私の中古品ですけどキスでもします? それとも性行・・・」
シスの言葉を遮り、アストラの杖から放たれた閃光が壁を破壊した。
「あ〜、まさかの図星でしたかぁ? これは失敬失敬♪ それじゃぁ、この男は尚更あなたに渡せなくなりましたねぇ。 てなわけで、この男とそこのクソ女は私がもらっていくことにしやがりますね♪ それじゃ、そろそろオバサンも死のっか♪ 」
シスは自身の権能〈狂美嬢ノ愚籠〉から呼び出した魔獣にアストラが食いちぎられる瞬間、二線の剣閃が魔獣を切り裂いた。 そして、地面に降り立ったのは、二人の少女。
「ふぅ、なんとか間に合いましたね、姫様」
「えぇ、そうね。 テレシア」
そこに現れたのは、レイピアを握るロストと刀身が濡れ羽色、先端にいくにつれて白色に輝く刀を手にしたテレシアだった。
「アンタら、何もんでやがりますか? 私が魔神と知ってて私の魔獣ちゃんを切り殺したんですかァ?」
「えぇ、貴方につけられた屈辱を忘れるわけがありません。 色慾の魔神--システリア•グレンダ」
テレシアはそう叫び、自身の胸元を露わにさせた。形の良い程よい大きさの胸元の中心、そこには禍々しく黒い雷が迸る刻印のようなものが刻まれていた。
「あらァ? それって私のコレクションに刻みつけているヤツじゃねえですかァ」
「えぇ、そうです。 私はあなたに忌まわしき刻印を刻まれた元コレクションの一人ですよ」
「オメェだったんですかァ? あの時!
私のコレクションを数体傷つけた唯一の脱走者!!
コレクションNo.02『白鴉の聖女』!!」
「そんな名前はとうの昔に捨てましたよ。 アルデミラ王国第二王女:サラテシア・ヴァルテ・エストナーレ様の従者:テレシア。 それが今の私の肩書きであり名前です」
テレシアは刀の尖端の方をシステリアの方へと突き出すように持ち替えた。 それは白鴉の刺突の構え。音を置き去りに相手の肉体を貫く白鴉剣術弐ノ型〈白鴉音雷〉の発動モーションだ。
「その剣・・・それは私が『鴉ノ國』で手に入れたコレクションNo.10『白鴉刀』。 オメェはそれまで奪ったんでやがりますか!?」
システリアは喉が張り裂けんばかりに叫んだ。 空気が激しく乱れ、禍々しい雰囲気が部屋一帯を包む。 そして--
「顕現しろ、コレクションNo.12『堕ちた神王』。 コレクションNo.04『刀剣の神術所持者』」
空気が爆ぜ、システリアの左右に漆黒の棺桶が姿を現した。 やがて、その棺桶の蓋がひとりでに動き中から何かが姿を現した。
一人は、白地の燕尾服を着た白髪の男性。
もう一人は、赤色の髪と青色の瞳をした美青年。
「それは・・・」
現れた二人の青年にアストラとテレシアは息を飲んだ。 存在することはありえない。 そもそも生きていること自体が有り得ない。 彼らはかつて巫女が生まれる前から生きていた悪と善だ。相反する者。 片方が光を蝕む闇。 はたまたもう片方は闇を浄化する光。 それがもし手を組めば、無敵のタッグとなる。そんな事は本来ならありえない。 しかし彼らは既に意志を持たぬ屍。色慾の魔女に従う奴隷。
「さぁ、最高の殺し合いを始めやがりましょうか!」
色慾の魔女、システリア・グレンダは狂気を滲ませる表情で、快楽を求める性の獣のように宣言した。
次回は、現実世界での主人公二人の出会いの物語を投稿します!
ひねくれクズと猫かぶり投稿次第、投稿します!




