死んでも言えない「好き」がある。
『俺の彼女、歌姫なんだぜ』……はいはい、そーですか。そのセリフ、もう何回聞いたと思ってるの? 綺麗で可愛くて胸が大きくてお化粧が下手で、「化粧なんかしなくても可愛いよ」とか言ったらめちゃくちゃ喜んでたんでしょ?
全部覚えてるって。あんたが言ったことだから。
ヤキモチとか嫉妬とか、そーゆーどこにでもある『看板』なんか掲げたくないの。だってさ、なんか安っぽいし。どーせなら、あんたに二度見されるくらいのものは作んなきゃね。もちろんハンドメイド。
のろけを聞くのはもう飽きた。偉いでしょ? こんなに何日も何時間も、よく耐えたよね。自分でもすごいと思うわ。
ま、せーぜーふたりでイチャイチャしてな。
……え? け、喧嘩したの? 何で? ……彼女が髪切ったのに気付かなかったから?
……バカじゃないの? 泣きそうな声出しちゃって、ったく。そんなのはね、「怒る顔が久し振りに見たかった」とでも言っときゃ良いの! 分かった? バカみたいに正直になる必要なんか、どこにもないの。恋愛は駆け引きなんだから。
え? そう? 頼りになる? なにそれー褒めても何も出ないからね? ま、でもまた相談くらい乗ってやるよ。何年女やってると思ってんだ。私に聞きゃあ全部一気に解決よ。
……うん。ありがとね。頑張れ。応援してるから。……はぁ?! うっさいわバカ! 余計なお世話! 誰のせいで彼氏いないと思ってんの?!
……ゴホン。失礼。
まぁともかく、頑張ってね。また何かあったら遠慮なく電話して? 聞くから。
うん、またね。おやすみなさい。