胸中にある深海へと続く愛と苦痛
今更愛を貰っても、
もう何処へも行けやしない。
今更愛を貰っても、
もう何者にも成れやしない。
今更愛を貰っても、
あの日が帰ってくるじゃない。
今更愛を貰っても、
ぼくはひとには戻れない。
もう遅いんだ、
遅過ぎたんだ。
とっくに壊れたロボットに、
螺子をあげても直りゃしない。
とっくに倒れたこの僕に、
水を掛けても立ちはしない。
もう遅いんだ、
遅過ぎたんだ。
君が好きと僕に言っても、
もう僕は生きられやしない。
ただ後悔の涙だけが、
頬を伝って落ちるだけ。
だから何にも言わないで、
いっそのこと見殺しにして。
あなたの愛が遅かったのだから、
僕の命が枯れたのだから。
僕を悪人にしないでおくれ。
ありきたりな一つの命にして。
淡々と消えていった、
たった一つの命にして。
あなたの胸中にあるその愛は、
もうただの武器でしかない。
今更愛を貰っても、
僕の四肢が裂けるだけだ。
今更愛を貰っても、
僕の胸が貫かれるだけだ。
だからもう捨てておいて、
可燃ゴミの袋に入れて。
ボロボロのズボンと切れたTシャツと、
穴の空いた靴下と薄汚れた帽子と、
君の胸中にある不満と偽善と、
嫉妬と憤怒と虚栄と憎悪と、
ついでに僕の身体と一緒に。
深海へと投げ捨てておくれ。
あなたがくれたその愛が、
いわゆる世界の愛ならば。
あなたがくれたその愛が、
本当にあなたの愛ならば。