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どろぼー

うりゃ

何日かたった或る日の夜。


ギルドに登録してから、今までキリーたちは一度も依頼を受けていない。


なぜなら、装備をそろえなければならないからである。


キリーは、鎧やら、魔法防御用のマントやらを物色していたのだが、結局この帝国謹製のパワードスーツにかなうものがないのである。


魔法防御用のものはプルートがいるときに見るのだが、此の娘、どれも「物足りぬなあ」といって却下してしまう。



プルートの基準が高すぎるためである。


そうしていつまでも決まらずにいるのだ。


そうして、今日も決まらずに、無駄に金の入った袋を腰に下げて帰る。


ただ、今のキリーは少し酔っている。


プルートが買い出しに出かけたため、1人で飲んでいたのだ。


完全なヒモである。


そのため、咄嗟に起きた出来事に気づくのが遅れた。


後ろから、ぼろ切れを纏った少女にぶつかられたのだ。


キリーがうん?と思って少女をみると、見覚えのある麻袋が少女の手の中に。


何故に?と酔った頭で少し考えてしまったため、少女の姿が路地裏に消えてしまった。


流石にすられたことに気づいたキリーは急いで屋根に飛び乗り、少女の後を追う。


入り組んだ路地裏では屋根からの方が索敵しやすいためだ。


更にレーダーで少女を追跡、見つからないようにつけていく。


隙を見せたら後ろから襲うつもりである。


そうして少女の後をつけていくと、スラムにたどり着いた。


少女はスラムの一つのボロ小屋に入っていく。


キリーもドアを開け、中に入ろうとするが、カギがかかっている。


仕方ないので、ショットガンを構築、12ゲージを発砲した。


ショットガンは別名マスターキーとも呼ばれ、蝶番を吹き飛ばしてドアを破壊してしまうこともできる。


そうしてショットガンを魔晶石に変え、背嚢に放り込むと、中に入った。


中では少女が怯えながら此方を見ていた。


「さて、返してもらおうか」


と、キリーは努めて優しく言った。


これ以上少女を刺激して反抗されても面倒だからである。


「……やです」


しかし、少女から帰ってきたのは拒否。


「一応理由は聞いておこうか」


キリーはおおよそ、この住環境から理由は検討はつけていたが、確認。そして相手の意にそうようにすることで、なるべく穏便に、面倒のないように処理するつもりだ。


「明日食べるものがない、から」


食料の製造はキリーの十八番である。


無言で床の土から手元にライ麦パンを作った。


「これでいいか」


そうして少女に渡す。


少女ば突然のことで目を見開いていた。


「どうやったのです?」


「土をパンに変えただけだ。雑菌はついてないから安心しろ」


しかし少女は訳が分らない、と言った顔である。


「とりあえず食ってみろ」


というと、キリーは少女の手からパンを少しだけ千切り、食べる。


「毒はこの通り、ない」


そして、少女は無我夢中で食べ始めた。


少女のパンはすぐになくなってしまった。


足りない、という瞳でキリーを見上げる。


「まずは金を返してくれ」


少女は大人しくキリーに金の入った麻袋を渡した。


キリーは新たに、食パンをつくった。


そして、腰のバヨネットを抜き、食パンを6枚に分ける。


同時に、作った皿にのせ、背嚢から残りの林檎ジャムを取り出しつける。


「食っていいぞ」


とキリーが言うや、少女は食パンを一口。


突然口の中に広がった林檎の上品な甘さに涙が出た。


生まれてこの方食べたことのない味。


味覚が刺激され、脳髄に染み渡る、本能からの歓喜。


少女は今まで一人で生きてきた。


物覚え着いたときからこのスラムで生き残ってきた。


食べ物もろくになく、盗みで何とか食いつなぐ。


失敗したときは殺される寸前まで痛めつけられたこともあった。


残飯を漁ることもしばしばである。


そんな中でまともに味というものを感じる余裕もない。


そんな中で、帝国軍に支給される蜜多め高級林檎を使用した無添加ジャムを味わったのである。


その歓喜は、少女が一生の中で感じたことのないものであった。


少女は涙を流しながら、食パンを貪るのではなく、味わう。


ゆっくりと咀嚼し、その味を、歓喜を噛み締める。


しかしすぐに1枚食べきってしまう。


そして目の前のキリーが既に3枚食べてしまっていることに気づく。


本人は自分もついでに夕飯を食べてしまおうと単純に思っただけなのである。


しかし、少女の瞳から光が消える。


あまりの絶望に、この世の終わりと言わんばかりにキリーにその瞳で責める。


キリーもさすがに気まずくなり、残りの二枚を食べるように指し示す。


そして、また少女はひと時の幸せをかみ締める。


その目の前で、キリーは新たにクラッカーとツナ缶を開けた。


そして半分だけ食べると、残りを少女に食べるように差し出した。


少女はパンを食べ終えると、今度はクラッカーに手を伸ばした。


ただしこのツナ、上にマヨネーズがかかっているのである。


それを食べた少女の脳髄には、ある種の快感が走る。


先ほどの林檎の上を行く快感が走り、脳の神経細胞一つ一つが歓喜の大合唱を歌う。


そして林檎のときとは違い、クラッカーはすぐになくなってしまった。


少女は物足りなさそうに、しかしながら満足げな表情だ。


キリーは皿を魔晶石に変えると背嚢に放り込み、立ち上がり、そのまま小屋を出た。


そうして宿に至る夜道を一人で歩く。


既にあたりの喧騒は収まり、静かである。


そうしてしばらくいくと後からついてくる足音が聞こえる。


振り返ってみると、先ほどの少女がついてきていた。


「まだ何かあるのか」


「あの、その、ええと、私を連れて行ってください」


「そうか、まあいいだろう」


「なんでもしますからおねがいってへ?」


「どうした?ついてくるんだろう?」


「あ、はい」


これはただのキリーの気まぐれである。


先ほどの盗みの技術、それから身の振る舞い、どれもこの少女は素質があるように思えたのだ。


それに女性、というのはそれだけで武器になる。


ハニートラップがそのいい例である。


つまり動かせる駒としてかなり使えるのではないか、とキリーは思ったのだ。


そんなふうにキリーが思っている中、少女はかなり喜んでいる。


「そんなに喜ぶことなのか」


「あのクリーム色のどろどろを食べられるだけでもう私は幸せです」


「それはマヨネーズだ。覚えておけ」


「はい、お父様」


と、ここで、キリーは怪訝な表情になった。


「なんだその呼び方?」


「だってお父様の名前を知らないですし、その、スラムでずっと一人で親の顔も知らないもので…」


「ああなるほど」


とキリーは納得したような顔になった。


「俺は元帝国軍大佐、キリーだ。今はランクGの冒険者をやっている」


「キリー、がお父様の名前ですか。私はラーヘス、と言います」


「んじゃこれから宿に戻るが、ラーヘス、お前はまず体を洗え。服は後で適当に作ってやる」


「わかりました」


そうして二人して宿への道を戻るのだった。


「ところでラーヘスはステータスは使えるのか?」


「ええと、なんでしょうかそれ」


「こう、魔力を手に集めて『ステータス』と唱えるらしいんだが」


「ステータス」


Rahves Lv10


種族:人間


体力:100


魔力:2000


力:40


知力:30


敏捷:100


物理耐性:1


魔法耐性:0


スキル

フラウロス

ナイフLv3

盗みLv4

無属性魔法


称号

なし


公式にはなし



「ようわからん。フラウロスとか悪魔かよ」


「私も初めてみました」


「まあこれはプルートに見せればいいか」








ここまでお読みいただきありがとうございます。

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