ギルド
ふいー
二人が町に入り、先ずいったのは冒険者ギルド。
身分証明証の代わりに、そこが発行するギルドカードが使える、との情報を得たためである。
ギルドの外見はかなり大きなドーム状の、天辺にはギルドの旗と思われるものがたっている、非常に特徴的な建物であった。
キリーが其の入り口の扉を開け、中に入る。
すると、中には夕方だからだろうか、多くの冒険者がいた。
其の中には酒を飲んでるものもいる。
そんな中、受付に向かって二人は進んでいく。
周りからは、新参者であるからだろうか、珍しいものを見る目で見られた。
「ご用件は何でしょうか」
「ギルドカードの発行と、大まかな冒険者の説明を」
「かしこまりました」
そうして、受付嬢は手元の引き出しをあけ、青銅色の金属板を取り出した。
「ほう、魔法金属であるエノーズ、かのう」
「なんだそりゃ」
「bronze、つまり青銅に似ているから、それをもじってenorzbと、誰かがつけた名前じゃよ」
「それでは、こちらにステータスを発動してください」
ふたりは、ステータスを唱える。
すると、エノーズの表面に、ステータスで表示されるものがすべて、載っていた。
「こちらに表示されているものは、例外を除く称号と、罰、名前、種族、職業を除いて非表示にすることが可能です」
キリーは早速、自分の異世界人の称号、ステータス、「超能力」を非表示にしてみた。
キリーが横を向いてみると、プルートは魔王の称号、ステータス、スキルを非表示にしていた。
「で、料金はいくらかのう」
「合計で銀貨4枚となります」
さすがに魔法金属を使っているだけあり、仮の身分証の2倍はするようだ。
「ではこれでよいか」
「はい、ちょうどお預かりします」
金を持っていないキリーの代わりに、プルートが全て払った。
「おいおいあんちゃん、もしかして幼女にひもかあ?」
ちょうど後ろにいた冒険者の一人がプルートが金を払ったのを見ていた。
確かにはたから見れば幼女に金を払わせたただの青年である。
しかし、当のキリーはエノーズという金属に夢中である。
「ふむ、どうやら魔法金属というだけあって反魔素にも反応する、ということは魔素を含む青銅、で間違いはないか」
またもやスキャナーを取り出して成分分析と実験を行っていた。
「お主よ、そんなことは後でもよかろうに」
プルートが嗜める。
「うん、ああそうだったな。すまない。それで、冒険者の詳細を説明してほしいのだが」
「わかりました。先ず最初はGランクから始まり、F、E、D、C、B、A、S、SSと9つのランク分けとなっています。基本的に上のランクの依頼は受けることができません。依頼の中には契約料を必要とするものもあります。これらは危険な依頼に力のない者が無理に受けることがないようにするための措置です」
「なるほど」
「それから詳しい罰則はこちらのギルドカードから見ることができるので、ご覧ください」
「あい分かった」
プルートがそう返事し、二人は振り返る。するとそこには先ほどキリーをヒモ呼ばわりした男が立っていた。
「あんちゃん、俺様を無視するとはいけねえな、ランクCのイーク様を無視するとはなあ」
しかしキリーは、罰則の確認をしながら振り向いていたため、気づいてない。
「あんちゃん、いいかげんにしねえか?」
イーク、と名乗った冒険者は青筋を浮かべている。
が、キリーはいまだに気づかず、前進しようとしてイークにぶつかった。
「お主よ、そのところかまわずに集中してしまうのはどうにかならんのか」
「おお、すまない。こればっかしはどうにもならん」
「おまえよおおおお、もう我慢ならねえええええ」
イークは腰に下げたクレイモアを抜き放った。
「おいおい、それじゃあ罰則にひっかかるぞ?」
キリーが呆れながら、自分はいつでも腰からバヨネットを抜けるように手をかけた。
ここで超能力を使うと、色々と目立つ。
そのため、キリーはここではバヨネットまたはデザートイーグルで対処することにしたのだ。
後ろでは「またイークか」だの「新人相手に手加減してやれよ」だの、冒険者たちも観客となってみていつ。
「罰則なんざくそくらえだああああああ」
叫びながら、イークはクレイモアを左下から右上に切り上げた。
キリーはバヨネットを抜きながら、クレイモアの側面にバヨネットをあて、軌道を逸らした。
ついで、自分はバックステップで距離をとり、デザートイーグルを取り出す。
「FREEZE!!!!」
キリーは叫びながら、イークの心臓に照準を定め、いつでも殺せるようにトリガーの安全装置を解除する。
あたりの雰囲気が一度に凍る。
皆、其の魔銃の異様さに驚いていた。
「武器を捨てろ。手を頭の上に、さもないとお前の心臓を撃ち抜く」
デザートイーグルの迷彩色をみたイークの顔がどんどん白くなっていく。
「は、はは、あんちゃん、魔銃なんて冗談きついぜ……」
さいわい、こちらの世界にも銃に準ずるものはあったらしい
イークは自分のクレイモアを捨てると頭を手の上におく。
そこで、はっと我に返ったギルド職員がイークを取り押さえ、キリーに魔銃を降ろすように指示する。
そして、別室に案内されることになった。
「とんだ災難じゃったのう」
「まったくだ」
「そういうなってあんちゃん」
キリー、プルートの横にはイークがいる。
先ほどの騒乱の結果、イークが以外にも「調子に乗ってました、すみません」と立派な土下座を披露したのである。
そうして同席していたプルートが
「其の男を仲間とするのはどうかのう、お主よ。其の男、曲がりなりにもランクCじゃ。冒険者の手続き、旅の準備なんかは其の男に任せるのが楽だと思うが、どうじゃ?」
といい、
「それもそうだな」
とキリーがいったためである。
二人とも、上に立っていたものだけあり、人を見る目は鍛えられている。
実際、ギルド内でもイークは性格には難があるが、仕事はきっちりこなす、案外信頼できる人物として評価されていた。
ギルドも被害をうけた二人がそういうのであれば、今回の罰則として、キリー、プルートの指導を無償でするということとした。
「ところでイーク、いい宿は知っておるかの?」
「ええ、姐御。ここをしばらくいったところにいい宿がありますよ」
そうしてイークは今回の罰を不問にしてくれたプルートを敬い、姐御というようになった。
「んじゃそこに今夜は泊まるとしよう」
追加しすぎるのもどうかとは思うけど、あと一人だけ追加予定