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過労死から始まるドラゴン転生  作者: questmys
三章 成体期
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1 海で発見 無人島

 これまでのあらすじ!


 どこにでもいる冴えない四十男であった私はある日突然意識を失ってしまった。

 目覚めた時には見知らぬ場所。そして身体は何故か0才女児に。女児って言うかドラゴンだけど。は虫類ですけど!

 その後なんやかやあって、ぬいぐるみみたいなマスコットキャラに渡された魔法のステッキを使って変身! 業罪にまみれた人の世を魔法の力でピカッと浄化!

 魔法幼女マジカル☆コート!

 よい子のみんな、大概の事は魔法と力技でなんとかなるぞ! きゃぴ♪ きゃぴ♪


 なんつってな。

 嘘だ――――たら良かったのにね。

 前半は真実っていう…………いやいや、まだだ、まだ審判の判定待ちだ。オッスオッス。


 ◆


 空を飛んでいる。

 一路、西を目指して。


 じいさんの口車に乗って、竜王タナカに会う事を決めた俺ドラゴン。

 巨大化はせず、のんびり遊覧飛行の旅である。「私が竜です」とばかりに主張するあの姿では地上の人々を無駄に騒がせてしまうからね。

 ついでに言うと、高さも大分上げて飛んでいる。雲を下に見る、地上に影すら映さぬ高高度。変温動物であるは虫類の身には、ちぃと辛い冷たさの風が吹いていた。


 道中、馬野郎に滅ぼされたヴァノス国の村や町、城なんかが目に入った。高い空から見える範囲は広く、嫌でも視界に収まってしまうのだ。

 焼け跡である。

 荒墟である。

 瓦礫の山である。

 おそらく魔王軍の侵攻ルートであったのだろう。破壊の跡は線を描くように残されていたから。線上から逸れた場所にある村落などは蹂躙の痕もなくきれいなものである。


 ただし、人の姿は無い。


 全員が殺されたのだとは思わない。難民となって南へと逃げたのだろう。

 南下するほど人類領域の奥深くとなり、安全が保証されるのだから。

 だが、それを受け入れる体制が南の国――ウィス国やサス国にあるのかが問題だ。


 嫌なものを見てしまった。心胆寒からしめる光景であった。だが、「見なければならない」とも思っていた。


 負ければこうなるのだ。


 現代日本に生きて平和呆け慣れしている己に渇を入れるために、その事実をはっきり認識する必要があったのだ。

 自分が女神だなんて欠片も思っちゃあいないが、何かしらの打開策は見つける必要がある。でなきゃ人類は本当に滅亡の危機だ。


 ◆


 ついでなんで、折角だし魔族領域も見学しておこう。

 ということで馬野郎の出身であるワスナ国上空を進路に選び通過する。


 人類領域との境界線付近は――――なんというか、滅ぼされたヴァノス国と同じような状況で――――心中は大変複雑である。


 やったからやり返されたのだ。

 因果応報。そんな言葉が胸に突き刺さる。


 ううう、軽い気持ちで見に来ただけなのにマッハでストレスフルである。

 人類側は被害者ではあるけど、加害者でもあるんだよなー。


 いかんな。実に良くない心境だ。ちょっとだけ魔族側にも情が移りそうになってる。

 しかし俺はフルの安全と栄光のために心を鬼にするのだ!

 さらば魔族領域! 次に来る時は貴様らを陰から支配し、フルを伝説に残すための生け贄とさせて頂く。その首洗って待っているがいい!


 敵情視察はもう十分だ。

 西へ、西へ。竜王タナカの住処を目指して、いざ進め。


 ところがだ。

 目立たないように高高度を維持していた事があだとなった。大空から覗く視野は広く、遮る物は何もない。つまりは地上丸見えである。

 うっかり、普通に生活している魔族の様子が目に入ってしまった。ドラゴンの優れた視力も相まって、はっきりくっきりばっちりしっかり見えてしまった。普通の村で、普通の住人達が、普通に過ごしている様が。


 普通の住人って言っても馬野郎と同じく猿顔の角ありで四本腕なんだが。いや、ちらほら別の魔族? もいるな。悪魔っぽいのとか、鬼っぽいのとか、猫耳とか。人類と変わらぬ営みを見てしまったらどうしても情が――――猫耳? 猫耳いたぁぁぁぁぁぁぁぁ!


 うわー、かわいい! 猫耳めっさかわいい! あまりの愛らしさに思わず二度見してしまった。おぁ、近くに猫耳幼女もいる! は、犯罪的なかわいさだ!


 ええもん見たのう。やはり異世界ファンタジー。無限の可能性を感じるぜ。


 ◆


 今回の視察の結果には大満足だ。なんだかいらんもんも見た気がするが、得られたものは大きかった。

 ほくほくしながら飛んでいると視界の先に海が現れた。じいさんの話では、陸地が見えるか見えないかって所まで進んだ先に無人島があるという。

 もはや見るべきものも見られる相手もいないので、魔力解放して巨大化。誰はばかることなく高速飛行で陸地を離れていく。すると水平線の向こうから山の(いただき)が姿を見せ始める。

 あれが(くだん)の無人島か? あの山に竜王がお住まいなんですかね。俺も産まれた場所が場所だからな、火口の雰囲気には一家言(いっかげん)ありますぜ?


 海にぽつんと浮かぶ島ではあるが、なかなかの大きさだ。富士山とタメ張れるんちゃいますか? 高さは富士山に軍配が上がるものの、裾野まで含めると結構な広さを誇る面積を、この無人島は上回っている気がする。目算なので大体の感じだけど。


 さて、それでは早速ですが竜王宅を訪問しましょう。あ、菓子折忘れちゃったけど大丈夫かしらん? ここは一つタナカさんの懐の広さに期待してお邪魔しま――――あれ? 火口がない。っていうかこの山、火山じゃないぞ?


 はてさて、目的の竜王さんはいずこに?

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