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過労死から始まるドラゴン転生  作者: questmys
二章 亜成体期
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24 邪神降臨

 敵を敵と認識した瞬間に身体の奥底から力がわき上がり、マヒ状態はあっさり解除された。すかさず拘束を引きちぎり闘技場へと飛び出す。


 邪神の周りを渦巻く魔力が練り上げられて形になる。地上の二人を守るため巨大化して羽根を広げ覆い被さるが、放たれた黒い雷は左翼を吹き飛ばし、地面に大穴を穿った。

 文字通り身を削られる痛みに悲鳴を上げてもんどり打つ俺ドラゴン。しかし追撃を警戒するため必死で我慢し上空に意識を向ける。

 闘技場には魔法無効の仕掛けがあったはずなのにこの結果である。激戦は必至であった――のだが。


 追撃は、来ない。

 どころか、邪神は身を翻し飛び去ろうとすらしている。

 まるでこちらに興味を示さない。

 敵とすら認識されていない。


 ……あれ、いいの?


 拍子抜けすら感じる展開ではあるが、事なかれ主義の俺からすれば願ってもないことである。馬野郎を殺された恨みや、片羽根ぶち抜かれたことに対して思うところはある。あるのだが、戦いが始まり群衆が巻き込まれる危険性を考慮すれば、何事もなく収まるに越したことはない。


 ところがである。


 俺の意志に反して身体が動いたのである。

 翼は完治し、全速力で邪神を追いすがる。けれど意識はのんびりしていて「あれ、なんか空飛んでる~」なんて考えている。邪神に対して放つ咆吼も、牙をむき出しにして襲いかかる様子も、まるで他人事である。

 結局邪神は俺が追いつく前に転移魔法か何かで消えてしまったのだが、身体が(いきどお)り唸り散らすのに対して、頭の中は「何しに来たんじゃあいつ」と冷ややかな突っ込みをしていた。


 空には静けさが戻り、群衆が(にわか)にざわめき出す。後に残ったのは闘技場の穴一つ。馬野郎は――死体すらも、残らなかったか。


 ◆


 地上に降り立つとすぐに魔力が霧散し、平時の子供ドラゴン姿へと戻った。やっぱ働いてんなあ、謎の仕掛け。減衰して尚、地面に大穴を開けるこの威力。流石は神といったところか。(おと)ろしい相手である。


 しかし、なんだったんだろうなあ、先ほどの感覚は。

 頭は冴えているのに身体の制御が聞かない感じ。身体を盾に二人を庇おうとしたところまでは心身一致していたのだ。それが突然ずれた。

 例えるなら、テレビゲームをやっていてプレイ途中でムービーが始まったような感じ。自分視点なので動いているようには見えるが、動画再生中なので操作は一切受け付けない。自分で動かせないので仕方がないからぼんやり眺めている。そんな様子。

 うーむ。あれをやったのは――本能さん、なのだろうか? 極自然に羽根の回復とかしてたし。邪神に対して敵意むき出しだったし。


「こりゃまた、えらい事になったのう……」

 考え込んでいた横でじいさんの声がしてハッとする。

 そうや。えらいこっちゃやであんさん。わての計画丸つぶれでんがな。魔族領域へ攻め込む足掛かりが消えてしもうたで。

 世界を裏から操りフルを伝説に残す俺のパーフェクトプランががががっ!


「作戦会議ーーーーーーーーー!」


 馬野郎を生け贄に捧げて、俺は緊急招集令発動! プランAが墓地に送られ、姫殿下をデッキから一枚取り出し場に表示! 姫殿下の効果により、新しいプランという名のトークンを無限に生み出す!

 さあ、ここからはずっと俺のターンだ!


 ◆


「我々連合軍の敗北にようやく合点がいきました。

 女神様が邪神と相打ちになられたと聞きましたが、既に邪神は復活していたのですね。そしてその加護を受けていたからこその、()の魔王の猛反撃だったのでしょう」

 場所は城の中、会議室。

 集まったのは俺、じいさん、姫殿下、そして何故か騎士A。あとついでにこの国の王様も。

 余談だが、国王は闘技場にもいた。姫殿下の隣に座って一緒に観戦していたのだ。ところが一言も喋らないどころか身動き一つしないのでてっきり背景か何かだと思っていた。顔もなんかモブっぽいし。

 っていうかこのおっさん、目ぇ閉じてんな。寝てんのか?

「……コート殿。まじめな話の最中です。お父様の顔をのぞき込むのは止めて下さい。それ、普通だったら不敬罪で死刑ですからね!」

「いや、寝てんのかなって……」

「寝てるわけ無いでしょう! お父様は寡黙な方なんです!」

 えー、でも、ドラゴンの顔が鼻先まで迫ってるのに、身動ぎ一つしないよ? これ、寡黙とかそういうレベルと違うくない? あれ、息してる?


「…………死んでる」


「死んでません! あー、もう、話が進まない!」

 姫殿下が頭を抱えだしたところでじいさんに促され大人しく席に戻る。

 や、違うんですよ。ただ、ほんのちょっと気になっただけで、話の腰を折るつもりは無くって。


「こりゃ、大人しくしておれ。

 それよりも、チビよ。先ほどのあれは邪神で間違いないんじゃな?」

「はいともさ。ドラゴンの本能がそう告げている」

「なるほど、ドラゴン(笑)の本能ですか……」


 おや、姫殿下の発言に悪意を感じるぞ?


「しかし相手が邪神で間違いないのであれば、わたくし達人類が行うべき行動はハッキリしています。邪神の後継と同じくして生まれ落ちたであろう、次代の女神様を探す事です」


 じいさん、こっち見んなし。


「女神様の御加護さえあれば、どうにか均衡状態まで戻す事が出来るはずです。自らの有利を悟った魔族軍がいつ攻め入ってくるかも分からない今、新たな女神様の捜索は人類の急務であると言わざるを得ません。

 捜索隊を編成しましょう。更に各国への協力要請も。形振りを構っている場合ではありません。コート殿にもその機動力を用いて協力して頂きますからね!

 さあ、急ぎましょう! 人類領域の安寧のために!」


 じいさん、こっち見んなって!

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