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過労死から始まるドラゴン転生  作者: questmys
二章 亜成体期
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39/79

9 尋問(してない)

 ケンタウロスを咥え、空を飛ぶこと暫し。適当な森を見つけて着陸した。

 つい、いつもの体格のつもりでいたが、今は巨大なドラゴンである。己の体で木々をなぎ倒し、盛大に森林破壊してしまった。

 反省はしている。そしてこの経験を次に生かそう。よし、オーケーオーケー。ドンマイ俺。


 さて、こいつにはいろいろと聞きたいことがある。まずは逃げられないように拘束しよう。

 最初は丈夫なツタで木に縛り付けるつもりだった。そのために森を目指したのだ。ところがどっこい、そんなに丈夫なツタは()ぇ。枯れたツタはポロポロと崩れ落ち、若いツタはブチブチっと引き千切れる。

 なんだこれ。使い物にならない。クーリングオフや!


 そんなわけで次策を練ろう。


 プランB、岩を重石にする。

 潰れて死ぬか。却下。


 プランC、なぎ倒した木を利用して檻を作る。

 作れるか? 自問自答。無理。はい、却下。


 プランD、手足を折って逃げられなくする。

 誰が? 俺が? いやー、無理ですわ。却下。


 プランE、穴掘って埋める。

 穴掘りは得意です。採用。


 世の中経験だね。何事もやっておいて損は無い。あのウサギ狩りも無駄ではなかったのだ。おかげで俺はこうして穴を掘っている。何なら穴掘りドラゴンと渾名されてもいい。穴掘りドラゴンは土属性だ。土の竜、すなわち土竜(モグラ)である。

 俺はモグラだ。

 やったね、爬虫類から哺乳類へ進化したぞ!


 などとくだらないことを考えているうちに結構な深さの穴が掘れた。

 さて、獲物の様子を確認しよう。暢気に寝やがって。ここがお前さんの墓場だ。ぐはははははは。


 はい、今日料理するのはこの生きの良いケンタウロスです。

 あらかじめ用意しておいた大き目の穴に気絶しているケンタウロスを入れましょう。次に、首から上を残すような形で土を被せます。踏み固めるときは丁寧に、そしてしっかりと。ケンタウロスが身動き一つ取れなくなるよう十分な圧力をかけましょう。気分はランマー。土木作業のおっちゃん達が現場で使ってる上下にピストン運動する例の機械です。

 上手にできましたか? あとは煮るなり焼くなり思いのままです。獲物が目を覚ますまで昼寝でもして待ちましょう。果報は寝て待てというし。

 では、おやすみなさい。


 ◆


 ……なんか、うるさい。

 何事かと思って薄目を開けて確認する。土から猿の頭が生えている。顔を真っ赤にして「ぬふっ」「ぬふっ」言っているけど、なんだこれ。ちょっと面白いな。


 しばらく見ていようと思ったが、寝起きでアクビが我慢できなかった。

 おや、寝て起きたらいつもの子供ドラゴン姿に戻ってら。まあいいか、でかいままだったら不便そうだし。


「~~~っあふ。おはよう」

 こちらの挨拶を無視して猿の頭は忌々しげにそっぽを向く。教育がなっとらんな。お里が知れますわよ。

 涅槃仏よろしく横になったまま、猿の顔を眺め続ける。

 さて、何から聞こうかな。聞きたいことは色々あるんだけどな。


 まー、いいかー。時間はたっぷりあるしー。のんびりやろうかなー。

 急ぐ旅でもないしなー。フルの修行はまだまだかかるはずだ。数日ぼんやり過ごしても問題あるまい。

 尋問は根気のいる作業である。やったことないけど。


 目をつむり寝る体勢に戻る。寝るのは得意だ。なんせ実家(火山口)では寝てばかりいた。寝続けるのにも意外と体力がいるのだが、こちとらドラゴン、体力には自信がある。

 寝よう。怠惰に。ただひたすらに。


 君がッ 喋るまで 寝るのを止めないッ!


 と、まどろみ始めた頃、再び耳に届く「ぬふっ」の声。あー、土の中から出ようとして藻掻いてるのか。無駄っぽいけど。

 頑張れ頑張れ。無駄な努力を。滑稽に抗え。無様に抵抗しろ。


 それからどれだけ時間が経っただろう。

 強情な奴め。なかなか口を割らぬ。

 疲れたろう。腹も減ったろう。喉が渇いたろう。便意も堪えられまい。それでも抗うか。見上げた男よ。無駄だがな。ふはははははは。

 む、今ふと気付いたが、俺こいつに何か訊いたっけ? 「おはよう」しか言ってない気がする。


 ……まあ、いいか。


 半目で猿の顔をじっと眺める。

 こいつを土に埋めてから此の方、俺は微動だにしていない。横になったまま、時に眠り、時に眺め、何も語らず、ただそこにいる。

 その姿は、目の前の猿にどのように映るのか。なんだか若干憔悴している気がする。赤い顔をしていたのも昔の話、今は青冷めている。表情には怯えが浮かび、狂人を見るような目で俺を見ている。

 はて、俺は何かやらかしたかな。ただぼんやりしていただけなんだが。


「貴様の、目的は、なんだ。お、オレをど、どうする、つもり、なんだ……」


 声がかすれている。口の中が乾くほど緊張しているのか。そんなに怯えることはない。俺はただ、寝起きでぼんやりしているだけだ。

 しかし、やはり言葉は通じるんだな。自称魔王の呪文は聞き取れなかったが、普段の会話は共通の言語なんだな。


「いい加減にしろ」

「なんとか言ったらどうなんだ」

「オレを解放しろ!」

「我らが魔王、ジルダリアス様が黙っていると思うなよ」

「このままでは済まさぬ。このままでは!」

「あああああ」

「ひっ、ひぃっ、ひっ……」


 ぼちぼち喋り出した猿の頭だが、返事をするのが億劫で黙っていたら、突然泣き出した。

 ん~、なんか、ごめん。

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