5 悪運に恵まれる
これまでのあらすじ!
女神と邪神が戦った。んで、女神死んだ。邪神も死んだ。
でも女神側には勇者が、邪神側には魔王が残っている。
続く人類VS魔族の構図。
しかし、女神は倒れる前に人捜しの遺言を残していた。
それこそが人類の希望。俺の飼い主、神託の聖女・フル!
フルはやる気だ!
仕方ねぇ、俺が先に魔王を倒して陰から戦況をコントロールするのだ!
そしてフルを伝説に残す。ふふふふふ。
◆
肝心の魔王だが、北の方にいるらしい。これは神殿で世話になっている間に調べておいた。
見せてもらった世界地図の、下半分が人類領域、上半分が魔族領域。で、我が国の王都の位置は大分南の方。村にいたっては更に南。南に行くほど安全で平和なお勧めの立地です。まあ、その分発展とは無縁のドの付く田舎な訳だが。
道理でなぁ。剣と魔法の「け」の字もなかったもんな。自分がドラゴンじゃなかったらファンタジー世界だということを疑っていたよ。
RPGで言うところのはじまりの町(村だけど)と最初のお城ってところだ。ゲームしてると「魔王も勇者がレベル低いうちに倒せばいいのに」なんて思うが、この世界で言えば「人類領域の奥深くにいて迂闊に手が出せない」訳だ。それでも頑張って一角熊やらサイクロプスやら送り込んできたあたり根性のある輩である。
もっとも、俺の敵ではなかったがな。わっはっは。
なんつって。本当は熊相手で瀕死でしたよ。油断大敵な。うむ。
そして現在の俺はというと、一路北へと北上中。
南の方の魔物は弱いから放っておいていい。低レベルのモンスターまで駆逐していてはフルの成長の妨げとなるから。俺だけじゃ手が足りないって事もあるけど。
目指すは人類領域の中程。魔王軍の侵攻もあり、なかなか強敵が押し寄せているそうな。
本当は真っ直ぐ魔族領域まで向かいたい。一気に敵の頭を叩いてしまいたい。
しかし俺は弱い。一角熊と闘い傷を負うくらいに。魔王を倒すなど夢のまた夢よ。
故に強くならねばならぬ。闘いの経験を積み、身体を鍛え、魔族の王に届き得る力を身につけるのだ。
むむ、おあつらえ向きに揉め事の気配発見。馬車一台と護衛らしき騎馬隊が魔物の群れに襲われ、逃げている。
魔物はケンタウロスのように下半身から馬の体が生えた、上半身は四つ腕の毛むくじゃら。顔は猿っぽいが、頭に二本の角が生えている。それが七匹。六匹は裸で、先頭の一匹だけが馬の体も含めて鎧に身を包んでいる。そして全員が長槍を装備。
なかなか難敵の予感。武者震いがしやがるぜ。
「あいや、暫く! し~ば~ら~く~!」
時代がかった口調で己を鼓舞し、追う者の前に飛び込み立ち塞がる。
「ぬぅ! 何奴!」
と聞かれて答えぬは歌舞伎者の名折れ。
「我こそは~! 流れのドラゴン、名をコート! 義により人に味方す者也! この身は未熟なれど、追われる民草を見捨ててはおけぬ。いざ、助太刀致す!」
「ぐはははは! この俺様を前にしてその意気や良し! 小さき者よ、かかってくるが良い!」
鎧馬が足を止め、四つ腕を広げて俺に対峙する。しかし残りの六匹は構わず駆け抜け、馬車の集団を追い続ける。
「あ、こら、待たんかい!」
「余所見とはいい度胸だ! くらえ!」
離れていく集団を目で追うや否や、後方から聞こえた風切り音に危機を感じ身を翻す。轟音と共に槍の穂先が頭をかすめ、鱗が数枚吹き飛んだ。痛いっ!
「有象無象に構う暇など無いぞ! この俺様を足止めできたのだ、光栄に思うが良い!」
ぐぬぬ、無視して追うには厄介な相手か。
やむなし、まずはこいつを仕留める。
む、そういえば言葉を話す魔物に相対するのは初めてか?
「お前、言葉を話せるのか」
「貴様も話しておるだろうが」
いや、そうだけどさ。
「今まで見てきた魔物は言葉なんか喋らなかったからな」
「ふん、余程田舎で暮らしてきたと見える。魔物と魔族の区別も付かぬか。畜生連中と同等に見られるとは不愉快であるぞ!」
ほう、魔族! これが魔族!
魔族と魔物は、人と犬猫のようなものなのか。
「魔族ってのは、あれかね。強いのかね」
「無論! この俺様は特にな! 特々別にな!」
おおぅ。どうして俺は、こう、初手から大物を引き当ててしまうのか。呪われてんのか。悪意を感じる巡り合わせだ。
「どうした。怖じ気づいたか、小さき者よ! この俺様に立ち向かってきたのはただの虚勢か!
かかってこい! この俺様の槍が強者を求めておるぞ!」
「怖じ気づくだぁ? この俺ドラゴンに向かって馬風情が寝言をほざくな。大口叩くとドラゴンキックが空を斬るぜ?(決め台詞)」
「ぐはははは! ドラゴン風情がこの俺様に挑発とはな。いいぞ、この槍で蹴散らすに相応しい不貞不貞しさよ。串刺しにされてもその口利けるか試すが良い!」
対峙する俺達の間に射殺す視線の火花が散る。この闘いはもう止められんぜ。
「改めて名乗ろう。俺の名はコート。ドラゴンをやっている。貴様が今生で聞く最後の名前だ。俺と闘えたことをあの世で自慢しな」
「では応えよう。我が名はジルダリアス。いずれ三界を支配する魔王よ! 小さき者、貴様も我が槍の誉れとなれ!」
「いざ! ――え、魔王?」
「もはや問答は無用!」
「ちょー! 要るだろ、問答! 魔王って!」
なんだ。どういうことだ。訳分からん。
魔王って北にいるはずだろ。ここはまだ人類領域だぞ。それも中程だぞ。
なんで魔王がこんなとこにいるんだよっ!




