2 ただ生まれ、ただ生きる
寝て起きて、多少は気持ちの整理もついた。
どれほど寝たのか分からないが、空腹感はない。しかし口寂しさからたまごの殻を食み食み。ぼんやりと今を生き、ぼんやりと思索する。
前世での自分は過労で死んだ。間違いあるまい。人生四十年、働くばかりの毎日でありました。思い返してもつまらぬ。いつか報われると信じてまじめに生きたが、ついぞその「いつか」は訪れなかった。
何も成せず、何者にも成れず。無駄な人生だったのではなかろうか。……あ、だめだ、悲しくなってきた。
頑張って働いたって無駄なんだ。俺は前世でそのことを学んだ。
じゃあ、もう、逆に思いっきり怠惰に過ごすのはどうだろうか。それはそれで無駄な気もするが、良く言えば贅沢な時間を過ごしているということだ。
そうだ。せっかく畜生に生まれて、馬車馬のごとく働く必要などない。その日暮らしができればいいのさ。
腹が減ったら獲物を狩って!
眠くなったら横になる!
日がな一日ぼんやり過ごして、怠惰な日々を極めるのだ!
せんべいよろしく囓っていたたまごの殻の、最後の一欠けを噛み砕き、決意を堅めた。
なんだかわくわくしてきたぞ。待ちに待った夏休みがついに訪れたのだ! しかも無期限。いやっほーぅ!
そうと決まれば、とりあえず寝るぜ! 気にするこたぁねえ、時間はたっぷりあるんだ、ガハハハハハハハ! てなわけで、おやすみなさい。