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過労死から始まるドラゴン転生  作者: questmys
一章 幼生期
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18 空を斬る、その技の名は『ドラゴンキック』!

 サイクロプス の 一撃!


 おお ナイト!

 つぶれてしまうとは なさけない……。


 とんだがっかり騎士だと落胆しかけた――が、潰れたフルプレートが青白く輝き出す。

 潰れていたと思われた全身は地面にめり込んでいただけだった。光を放ちながら、僅かもへこみのないその体が起き上がる。

 奴の着る鎧はただの鉄の塊ではなかったのか! 関節部が開き、青白い粒子を放出。肩胛骨の当たりからも羽根のように粒子を撒き続けている。


「ぬうっ、あの鎧はもしや!」


 じいさんが驚きをあらわにした時、「知ってるのかじいさん!」とよほど合いの手を入れたかった! が、しかし、フルが近くにいるので我慢する。周りに元ネタを知っている奴も居ないので我慢する。でも、ああ、なんだろう、モヤモヤする! すごくモヤモヤする!


「ほう! 流石はバルシェン殿、御存知でしたか!」


 すっこんでろタレ目ェッ! 貴様のドヤ顔が鼻につく!


「まさかとは思うたが、やはりあれが『聖人の蒼鎧(そうがい)』。かつて勇者が魔神と闘いし時に纏ったという、伝説の!

 すると、あのトラスタという御仁は!」

「そのっ通ぅり! 彼こそが! 我らが『後光(ヘイロゥ)騎士団』副団長!

 トラスタ=ヴィル=アインス! なのですっ! げふっ!」

 最後のは俺が背中から足蹴にしたせいで出た音だ。なんかむかついたので蹴倒した。


「アインス家……勇者の一族は世俗を捨てて隠れ住むと聞いておったが、何故騎士団などに入り、このような場所にまで……」

「ふぐぇっ」

 なんか誰もこの優男を気にしていないのでトドメを刺しておいた。寝ていろ、うるさいから。

 さて、これでようやく闘い見物に集中できる。


 ◆


 フルプレートは青白く発光し始めてから、終始サイクロプスを圧倒していたように思う。


 撒き散らされる粒子の効果なのだろうか、普段の重厚な足取りなど感じさせず飛ぶような軽やかさで動き回り、敵の巨体から放たれる攻撃も難なく受け流す。

 しかし、如何せん武器が良くない。鎧はじいさんが言うような勇者のお下がりなのかもしれないが、手に持つ剣と盾は発光していない。切れ味も悪く、大剣であるはずなのにその攻撃は重みを感じさせない。

 推測だが、鎧の効果で反重力だか重さをなくすだかしているのではなかろうか。おかげで防御や回避には優れるが、攻撃に体重が乗らず威力を下げてしまうのだろう。これで剣の切れ味が良ければ相性抜群なのだろうが、どう見てもあの剣は重さで叩き斬るタイプだ。相性は悪いと見た。


 一方のサイクロプス側。

 攻撃は通じず、自身も利いてはいないが、ちまちまと加えられる斬撃に苛ついているのが見て取れる。

 大丈夫かな、あれ。怒りゲージ溜まって急に必殺技出してきたりしないよね。範囲攻撃でこちらにまで被害が及べばフルをはじめとした村人達を守りきる自信がない。

 ちと怖いが、加勢するべきかもしれない。大丈夫、俺の爪と牙は武器になる。一角熊を相手に証明した。あのデカブツにだって通じるはずだ。


 というか、何を馬鹿正直に斬撃ばかり繰り返しているんだ、あの騎士は。見るからに弱点である目玉を積極的に狙えばいいのに。


 ボディはやばいよ。顔やんな、顔を。


 眼球に突き刺せ大剣、狙うだろ当然、弱点だから断然、てなもんよ。

 よおし、ここは一つこの俺が手本を見せてやらねば。おし、よし、いける、いくぞ! 奮い立て闘争心、目覚めろ本能! あの怪物に痛恨の一撃を食らわせてやるのだ!


 ドラゴンキックをお見舞いしてやる!


 説明しよう、ドラゴンキックとは、雲よりも高く飛び、そこから急降下して相手に蹴りを放つ、重力との素敵なコラボ攻撃である。たった今考えた。


 いざ、実行すべし!

 久しぶりに羽を広げて大空へ飛び上がる。火口を飛び出ようとしては溶岩に落ちた、あの頃の俺とは違う。今ならいける、あの雲の上のずっと向こう側まで!


 その時、俺は見た。サイクロプスの体に無数の傷が付き、血を流す様を。

 もしや、トラスタの執拗な攻撃は時間差で傷を付けるものだったのか! 巨体に対して切断は不可能と見るや、搦め手ともとれる執拗で地味な作業を繰り返していたと。

 それはもしかすると、巨人の意識を己に集めて村人を攻撃対象から外そうとする意図もあったのかもしれない。普段、自警団の中で俺が盾役を務めている時のように。


 ありがとう、蒼い騎士殿。

 その騎士道精神に溢れる戦い方に敬意と、そして感謝を。

 でもそれはそれとしておいしいところは頂きます。弱点に一発、キルマークゲットだぜ! 棚からぼた餅、ごっつぁんゴール。


 ご馳走様でーす!


 重力による加速を得て、俺の体は空を斬り、風を巻き起こして地上へと降り注ぐ。そして目標地点にはサイクロプスの目!


 サイクロプスはその巨体を仰向けに倒し、眼球にはトラスタのトドメの一撃が加えられていた。

 轟く断末魔、痙攣し息絶える巨人。

 されど止まらぬ俺の加速。

 そのままのスピードで森に突っ込み、木々を薙ぎ倒していらぬ被害を出す俺ドラゴン。


 欲をかいた結果がこれだよ。

 すごく恥ずかしくて、気まずい、です。てへぺろ。

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