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蒼氷のゼニス  作者: 鶴琉世乃
第1部:第3章
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第93話 「忠誠と行動」

 まっていたって、訓練をしなくたって2日3日と時は経過していく。

 対戦相手の同盟アライアンスは、一人では本当に大したことがないのだが、酷いのは数だ。


 こちらが7人なのに対し、多いときは4ケタの数で攻めてきた。

 多勢に無勢、しかし負けるわけにはいかないのに、リーダーであるはずの、一番頑張らなければいけないはずの俺は能力を制限されている。

 どうしようもなくやりきれない気持ちでいっぱいになってしまうのだ。


「はぁぁ。……さすがに、疲れました」


 6日が終了したところで、澪雫みおは肩で息をしながら感情を押し殺すように呟く。

 顔には疲れが目立ってきていて美しい顔立ちは台無しだし、息は荒い。

 なにより、二つの刀を持つ手が震えており、動きにキレというものが全くなかった。


「なあ」


 いい加減、俺にもやらせてくれないかと澪雫に話しかけようとする。

 澪雫だけではない、他のみんなも満身創痍で、とても訓練なんてできる状況ではなかった。


 毎日試合後、この訓練が疲れ一番の原因ではないかとも思うのだが彼女たちはなぜか頑固だ。


「いえ、大丈夫ですので」


 しかし、澪雫はそれを拒否。

 その荒い息は過呼吸なのかと思ってしまう程度。


 とても大丈夫には見えないのだが、いや本当に。


「今日の訓練を、再開しましょう」


 まともに動けるはずもないのに、それでも頑なな澪雫をみて、 俺はここまで制限してきて、何の意味があるのだろうか。


 俺の知る由もない……といわれればそれでしまいだが、しかし……。


「いや、今日の訓練はなし」


 俺は、澪雫だけではなく、他のメンバーにも聞こえるように声を張り上げる。

 澪雫はすぐに反抗の目をこちらに向けてきたが、それは極力目に入れないようにした。


 理由は簡単、入れてしまえば俺が言いたいことはすべて頭の外に 吹き飛んで行ってしまうからである。

 美しい。その言葉だけでは言い表せないほどの、宝石のような瞳が、こちらを見つめていることはわかっている。


 例えれば、月明かりに照らされた蒼い海か。

 それとも、森の主に守られ数世紀ひた隠しにされていた神秘の湖か。


「僕たちはまだやれる」


 痕猫あとねこ 刑道けいちが、そういって能力を発動しようと手を挙げるが、それを制する。


「盟主命令だ」


 多目的室の電灯を素早く消灯し、部屋を出る。

 と、後ろから手を引かれる感覚がして、振り向くとそこにいたのは神御裂かんみざきそうだった。


「……」

「どうした?」


 最初、彼女は何も言わなかった。

 ただ、蒼の名前の由来になったのだろうその目で見つめられ、少々恥ずかしい気持ちにもなる。


「どうした?」


 もう一度訊くと、彼女はたった一言つぶやく。


「なんで?」


 たった三文字。たった一言。

 しかし、それだけで彼女の言いたいことはすべてわかってしまう。


「身体を酷使しすぎだ。そのままじゃ壊すぞ」


 それだけをいうと、俺は話が済んだと自分勝手ながら判断して彼女の手を振り払う。

 少し邪険になってしまったような気もするが、残念ながら。


 時間を書けると俺の気持ちも変わっていきそうな気亜するから。

 彼女は、追ってこなかった。


 追ってこなかったが、しかし。

 後ろから突き刺さるような目線は、俺が角を曲がるまで続いていた。







 剣筋の乱れは気の迷いということになるのだろうか。

 俺は、この一週間何があったか頭の中で反芻しながらも剣を振り続ける。


 澪雫やこうから教わった剣の振り方を忠実に守る。

 二つの剣派から、同時に教わるというのは結構難しい気もするが。


 しかし、両方のものをいいとこどりすれば問題はないだろう。

 一回、二回。そのあとは抜刀術の素振り。


 剣を振る数が十を超え、二十を超えたところでいったん剣を鞘に埋める。


「明日、全員分も背負って頑張らないと」


 それが、俺の力程度では不可能でも。

 それを、可能にしなければならない、のだから。


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