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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第1部:第3章
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第92話 「強さの理由」

「なんだか、全然成長しませんね」


その日の夜、訓練も終わりに差し掛かろうかというときに、澪雫みおは遠慮なく言い放った。

俺の目を見つめ、内側を見透かすように目を細める。


「やっぱり、気持ち的なものだと思うのですよね」

「気持ち的な、問題か」


たとえば、澪雫が能力を使用することに対して渋っているようにか?

と、反論してみたくもなったが、ろくなことにならないためやめておく。


「でも、俺はそんなこと考えていないんだけどなぁ」

「焦りすぎではありませんか? 強くならなきゃいけないって、思い詰めすぎだと思うのです」


焦るのは当たり前だろうよ。

自分の彼女のほうが己自身よりも強いと思ったら、彼氏側は焦るに決まっているだろう。


「でも。大将が一番強くないとダメだろうよ」

「いやいや。私たちは総合的にもネクサス君を慕っているから、盟主として認めているのですよ」


かぶりを振る澪雫。


「能力的な力がすべてなら、痕猫あとねこ刑道けいちさんが反論するはずでしょう?」


刑道けいちって、今学園何位だったっけ。

……6万人中20位だったかな、まだまだ届かないや。


「でも、そうしたら刑道はなんでそこまで強いんだろう」

「彼のポテンシャルは、すべてが彼の属性能力に収縮されていますからね」


能力を使ってあの、物理法則を無視したような動きもやるし。

能力を使って、地形は変えるし。


そんなことをすれば体力の消耗なんて尋常でないはずなのに、それを連発できる。


「ネクサス君は、能力の開花がまだなんでしょう?」

「うん」


両親の判断によると、だが。

父親は先天的に開花した状態だったから、今もそれはもうとんでもないことにしている。

いや、父親は別格か。何回開花を繰り返して強くなったのか分からないし。


母親は、開花こそなかったものの剣の才能は開花していた。

だからこそ、「涼野流剣術」なんてものを考えだし、【剣聖】と呼ばれるようになった。


「ゆっくりやっていきませんか?」

「そうだな……」

「私も、能力の付与が今まで以上にできるように、一層努力しますから」


やさしく微笑みかける澪雫のイメージは、天使である。

生暖かい視線を感じるが、まあいいだろう。


とりあえず、俺が何をすべきなのはわかった。

しかし、どうやったらそれができるんだろう?


「時を待ちましょう?」

「でも、このままだと陸駆りく先輩に勝てないだろう」


陸駆さんは学園序列2桁だ。

だからこそ、何とかしないとなぁって思ったりする。


「血筋的にも、能力的にもまだ無敗ですし、彼は」

「そうなのか?」

「そうですよ」


どこからそんな記録を持ってきたのだろうか。

とにかく、強いのはわかった。


「簡単に言えば、痕猫君に零璃君を合体させたような人ですね」

「うーん」

「強いのは確実なんですよね。しかもあの体格ですし」


体格は……うん強そうだね。








「今日のごはんも、私が作りますよ?」


訓練が終わり、さて自分の部屋に戻るかそれとも拠点でそのまま寝るかというとき、澪雫が呟いた。


「みなさんで食べますよね?」

「そうするかぁ」


訓練を続行しているみんなに伝え、とりあえず俺はソファに座った。

キッチンにはいって澪雫を手伝おうかとも思ったのだが、彼女が拒否するのなら仕方がない。


「今日は何が食べたいですか?」

「澪雫のお好みで、どうぞ」


冷蔵庫の中も確認させてくれなんだから、わからないのは仕方がないことで。

だから、とりあえず何も考えないことにする。


「澪雫ー」

「はい?」

「……なんで、俺の母親を尊敬するようになったんだ?」

「私と境遇が似ていながらも、悲観することがなかったからですよ」


それはちょっと違うんだけれども。

母親が剣術を習い始めたきっかけは、自分を守るためだった気がするんだけど。


……まあ、それを指摘したって仕方ないからね。

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