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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第1部:第1章
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第09話「歓迎会2」

「え、お姉ちゃんって」

「む。……俺は女だが何か?」


 性別逆転姉弟かよ!

 俺と魅烙みらくが同時に叫ぶと、零璃れいり赫良かくら先輩の二人ははにかんだように笑った。

 どうみても、美少女とイケメンが抱き合っているようにしか見えないのに、本当は逆なんだから、驚きである。


「……赫良ちゃん、ここで話はやめましょう」

「あ」


 姉さんの言葉に、零璃の姉はばつの悪い顔をした。

 そのまま零璃を離すと、ウィンクしながら後でねといい、さっと俺たちから離れる。


 確かに、周りを見回すと視線がさらに強くなっているような気がする。

 うーん、どうすべきか。俺たちの顔はそんなに知られていないから、なんともいえないんだろうが。


「さて、俺たちも俺たちで楽しまないとな」

「そうだね……」


 魅烙は、「かっこいい人だにゃー」とか言っている。

 全く脳天気。さっきの恥じらいはどこに行ったんだ。


「じゅるり、ごはんごはん」


 舌なめずりまでしているあたり、せっかくの色気が台無し。

 まあ、そんなところも猫っぽくて良いところ、ともとれる。

 自由なことは、消して悪いことではない。


「それにしても、さっきの可愛い先輩が学園一位?」


 魅烙の質問に、俺は黙ってうなずく。

 一応、姉の話によれば俺との関係は出来るだけ秘匿していた方がいいらしいから、俺は基本的な情報だけを彼女に渡した。


「そう。天王子序列コード001:【氷帝姫ヒョウテイキ】」

「でも、さっきは【氷姫ヒョウキ】ってよばれてたにゃ」

「正式名称と通称とで違うんじゃないか?」


 そんなものがあるのかも知らないけれど。

 俺は首を振ると、魅烙が持った更に肉と野菜を乗せた。


 きょとん、とこちらを見つめる魅烙。


「病み上がりだし、ちゃんと食べろよな?」

「にゃん」


 素直にそれを食べる。魅烙は口にほおばると、おいしいと笑った。

 と、隣を見ると零璃はまるでハムスターの状態。

 ……ほおばりすぎ、と思ったがまだまだ入りそうだな。


 むきゅもきゅと音がでそうな勢いで、丁寧ながらも食い荒らしていく零璃。

 本当にいいのか、それで。


「ネクサス君は食べないの?」

「んー、食欲がないな」

「うー?」


 この数日間、身体を動かしていないからかあまり食欲がない。

 昨日の、校舎裏争いも俺は手を振っていただけだからな、運動かどうかって訊かれたら首を横に振るしかない。


 もっとこう、身体能力をすべて使って、能力も使うような運動がしたい!

 運動って言ってしまってる時点でおかしいんだけれどもね。


「って、お」

「んにゃ?」


 見回してみれば、霧氷むひょうの周りの空気がどう見てもおかしいな。

 彼女自身は気にしていないような素振りを見せていたが、顔はゆがんでいる。


「うわぁ」

「私の時よりも露骨にゃん……」


 まあ、母親に頼まれたとはいえ俺には関係ないことだしいいか。

 と思って、零璃の方にちらりと目を向けると彼女……じゃなくて彼は思いっきり潤んだ目でこちらを見つめていた。


「……いや、俺に頼るのやめてくれない?」

「でも……。いいや、ボクがいくぅー」


 軽い口調と軽い足取りで零璃は霧氷に近づくと。

 なにやら話しかけ始めた。


 うむ、俺じゃないから少し不愛想とはいえ霧氷も普通にしゃべれてるな。

 ここは零璃に任せて。


「にゃ、ふたりきりっ」


 俺は魅烙と楽しむことにしよう。








------------------------------------




「へえ、あなたも能力関係が苦手なんですか」

「そうだね。……ボクの一家は鍛冶屋一家だから、能力的な戦闘は特異じゃないんだ。……ってあれ?」


 ボク、関帝零璃は今、霧氷澪雫さんと席に座って談笑を楽しんでいた。

 よく見ればよく見るほど、きれいな人だとはボクでもわかる。


 いや、よく勘違いしてるけどボク男だからね? 女の子大好きだからね?

 たぶん。


「その刀って……」

「これですか? 師範からいただいたものなのですよ」


 ボクは、見覚えのあるような無いような形状の小太刀を見て言葉を詰まらせた。

 霧氷さんは、目を細めて微笑みボクに見せてくれる。


 あ、これ。


「これ、お爺ちゃんがつくった奴だ」

「そうなんですか?」

「うんうん。白玄お爺ちゃんの!」


 うぇぇ。綺麗だよぉー!

 剣聖が持ってておかしくない。

 現剣聖の涼野冷さんは、ボクや霧氷さんみたいに能力が不得手だけど。

 この小太刀2本は、所有者の少ない属性能力を何倍もの密度に凝縮させる力が宿ってる。


 ……お爺ちゃんも、今はもう作れないものだって言ってたし……。


「この刀、本当に使いやすいんです」

「うんうん」


 しかも、白玄お爺ちゃんの魂と、20年前に10代の若さで世界一位に君臨し、世界を救った剣聖の魂が合わさってる。

 それが、【魔武器】を作っていたボク達の能力に磨きをかけてて。


「本当にいい刀だね」

「そうなの?」


 ボクは力一杯うなずき、周りを見回しながら霧氷さんに言った。

 周りに、多くの敵の反応。


 色欲の視線。肉欲の気配。

 そして、敵意。





「霧氷さんの力、ご拝見っ。だねっ」

「……ふふっ」


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