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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第1部:第3章
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第84話 「拠点起床」

 新しい拠点に移ってから1日がたった。

 1日目は、掃除とか備品調達とかをくりかえしていたおかげで、全員が崩れるように睡眠をむさぼっていたが。


 起床すると、そこに漂うのは何かを揚げた香り。

 思えば拠点には立派な食堂があるな、と考えながら起き上がり、においに誘われるがままやっていくとそこには女性陣の姿があった。


「あら、起きたのですね。おはようございます」

「おはよう。……他のみんなもおはよう」


 挨拶をすると、澪雫みおをはじめキャベツをあろうことか日本刀でアニメのごとく切り刻んでいるこうと、その他の姿があった。


「ルナナさんを付け加えれば、7人ですからね。昨日はつかれているでしょうし、大目に作ろうかなって」


 そういいながら、コトコトと何かを煮込んでいるのは澪雫である。

 鍋を覗き込むと、中は白い。


「シチューか」

「シチューですよ。蒼さんとルナナさんは、鳥のから揚げを。紅さんはサラダをそれぞれ作っています」


 さすがに、まだ零璃は起きていないようだ。

 何もすることがないため、少しうろうろしているとテレビを購入したことを思い出す。


「なんだか、こういうの家族みたいでいいですよね」

「そうだな」


 ていうか、何度も思うがエプロンを着た澪雫はとても似合っている。

 紅と蒼は、正直にあっていないし巻瀬さんはどこにいるんだろう?


「天王子学園の地域って、テレビ普通に見れるんだ」

「どういう意味ですか?」

「こういう、隔離された学園でありがちな閉鎖空間かと思ったんだよ」


 小説とか、アニメとかでありがちじゃないか。

 外との情報を一切断たれるとか、そういうのが。


 くすくす、と笑う澪雫に若干の恥ずかしさを覚えつつ、俺は頭を掻く。


「もしそれなら、とても外出でディナーなんてできませんよ」

「……そういえばそうだな」


 普通に、何事もなく一か月前出かけたことを思い出し、恥ずかしさが増す。

 ニュースでは、当たり障りのない不幸な出来事を鬼の首を取ったような顔で報道する人が映し出されていた。


「うーん、変わってないなぁとかいうんだろうか」

「ネクサス君のお父様がですか?」

「ああ」


 いかにも言いそうだな。


「あ、盟主だ。おはようございます!」

「ネクサスでいい」

「ネクサスさん、おはようございます!」


 ……なぜ敬語?

 他にも、なぜ昨日は綺麗だった手がなぜ絆創膏だらけだったのかとか、なぜヘルメットをかぶっているのだとかいろいろと突っ込みどころは満載だったがそれらをすべて心の隅へと押しやる。


「おはよう」


 俺が彼女にそう返すと、巻瀬さんはにへらっと顔を緩ませる。

 そして、そのまま小指を角にぶつけたような顔をして、悶絶していた。


 これが、アニメでいうドジっ娘属性か。

 リアルでみると、悲惨なことこの上ないな。


「そういえば、夏休み中はどうするんですか?」


 そんなことに一切の関心も寄せず、俺に訊くのは澪雫である。

 どうする、というのはなんなんだろうか。

 それは同盟アライアンスとしてのものなのか、それとも個人的なものなのか。


「とりあえず、みんなが良ければ一緒に海に行こうかなとか考えてるよ。あと澪雫とのデートも」

「えっ!? ネクサスさんと澪雫さんって付き合ってるんですか!?」


 そこに飛びつくか。

 君とは関係のない話だ、とか言ってみたいがさすがにやめておこう。


 ていうか、昨日の態度から見てわかると思っていたが、わからないか。

 疑問の表情からか、百面相をしている巻瀬さんに、俺はうなずくことで肯定を示した。


「だ、大ニュース」

「別にニュースになることでもないだろ。人が誰に恋し、結果的に愛情を注ぎ込むなんて」


 取り立てる方がおかしいのだ。

 そういうのは、やっぱり。


「どどど、どんなところが好きになったんですか?」

「全部。澪雫が母親の弟子だったこともいい方向に働いたし、実際付き合っても今のところ欠点が見つからない」


 とりあえず、意味の分からない腹いせとして大げさそうに言ってやることにする。

 まあ、本音であって大げさでも何でもないのだが、日本人にそれは過剰気味だったらしい。


 澪雫は顔が熟れたトマトのように赤くなって、そのまま後ろに倒れそうになったし。

 巻瀬さんは、澪雫ほどではないにしろ顔を赤らめて後ずさりをする。


「す、ストレートに言いますね」

「何が?」

「……もういいです」


 よし。勝った。

 変な達成感に見舞われながら、俺は心の中でガッツポーズをする。


 そして、テレビ同様昨日購入したソファに座り込むと、あとは美味しそうな香りに悩まされながら、みんなの起床をまつのだった。


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