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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第1部:第3章
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第83話 「巻瀬ルナナ」

巻瀬まきせルナナです!」


 拠点を確保して、ほっとするのも一瞬の事で。

 一息ついたかついてないかくらいの時に、零璃が連れてきたのは巻き髪ツインテの少女だった。


 けばい、というのは間違っているが。

 しかし、彼女の身体からはなんというか、きらきらした成分が発散されているような気もする。


「零璃君、どういうことです?」

「さすがに、拠点が確保できたら人を増やすんじゃないかなって思って」


 どうも、彼の話を聞いていると。

 この……ええと、巻なんとかさんは零璃の小学生時代からの幼馴染で?

 関帝かんてい家にも幾分かかかわりのある家らしい。


 いや、血統の事はどうでもいいんだ。

 ええと、大丈夫なんだろうか。いろいろと。


「待ってください」


 警戒をしているというか、疑問を持っているというか。 とにかく、難しい顔をしているのは澪雫みおだ。


 それもそうか。今まで数か月、ほぼ身内で鍛えあってきたのにという気持ちもあるんだろう。

 なんだかんだ。全員ここに入る前から接点はあったしな。


「私から、いくつか質問をしてもよろしいでしょうか」


 と、その前にネクサス君、いいですか?

 澪雫は俺に許可を取り、俺がうなずいたのを見て零璃と巻……なんだっけ。


 巻瀬か。巻瀬さんに向き直ると、口を開いた。


「まず、貴方はなぜここにはいろうとしましたか?」

「ええと。……ここなら、零璃もいるし変な勧誘もないかなって」


 ……まともではあるが、その回答はまともではないような気がした。

 この同盟アライアンスは、正直言って評判が悪い。

 何もしていなくとも、評判はある程度下げられているといっていいだろう。


 つくりかえる前の天王子学園にあった【伝説】の同盟アライアンスと名前が一緒で、後ろに【楽園エーリュシオン】の楯もある。

 おそらく他の同盟アライアンスは、ここをつぶしたくて仕方がないだろうが、それも俺の姉という存在が抑止力になりすぎているのだ。


「まあ、いいんじゃないか?」

「でも。正直言って疑問です」

「私も、澪雫ちゃんの意見に賛成」


 と、横やりを入れてきたのはこうだった。


「私はここを、エリート集団だと思わないし。そもそも私含めて変な人の集まりだけど。……簡単にはいれるような場所だと思ってもらっては困る」


 いったい、紅は何を見据えているんだろう。

 確かに、目標として「全員200位以上」を掲げているが、それもあと3年とかなりの時間があるのだ。


 自分たちのテリトリーの中に、よそ者を入れたくないという気持ちはわかるが。

 だからこそ、俺は先ほど「様子を見る」という目的でいいんじゃないかといったわけなんだが。


 周りを見れば、刑道けいちも険しい顔をしているし、そうも同様。

 賛成派は、俺と零璃くらいという……。


「うーん」


 この場合、一番困っているのは俺でも零璃でも、澪雫でもなく連れてこられてこういう状態になっているのを目の当たりにしている巻瀬さん自身だと思うのだが……。


「巻瀬さんは、何ができるのですか?」

「え?」

「特殊能力というものもありますし、何か特記することはあります?」


 澪雫なら、【涼野流剣術】。

 俺なら、【ISC】。

 零璃なら、【スティールクラフト】と【完全記憶】。


 このように、なんというのか。属性能力以外のものはないのか訊いているんだろう。

 入ってくる人の情報を探っているのは、入ってくることに対して拒否したとしてもこちらにメリットがあるからだ。


「今のところはない、かなぁ。学園で小さなライブをしているくらい」


 ライブ? 何か、音楽でもやっているんだろうか。

 ……ああ、そういえば体育館のほうで何か歌の披露がなされていたのだが、それかもしれない。


「ていうか、一番は。ネクスト・アルカディアさんを尊敬していることだと思うよ」


 この言葉は零璃。

 零璃は、俺のほうを向くと簡単に説明してくれる。


 いや、それはいいんだが。


「まあ、正直この中でネクストさんを尊敬していない人なんていないと思うがな」

「キツイこというように聞こえるけど、事実だからね」


 学園長の息子と、これまた有名人のダブルパンチを正面あら当てられるこの状態。

 正直、俺が彼女なら泣きながら帰っているところである。


 さすがに、これには零璃もあわて始めた。

 俺は正直どちらでもいいんだよな。完全招待制でやっていければ、20人30人と行かない限り身内でお互いに高めあっていけばいいと思うし。


 でも、他のメンバーは全員、それではいけないと思っているらしい。

 しかしそれは、この同盟の創設メンバーであることに誇り的な何かを持っているということにもなって。


 それなら、それでもいいかなと思ってしまう俺であった。


「うー」


 それでもよくないのは巻瀬さんのほうだろうけれども。

 いったいどうしたものやら。ピリピリと肌が焼けつくような感覚を肌に感じながら、俺は手を挙げた。


「どうしたんですか?」

「ためしに、1週間くらいいさせてもいいんじゃないか?」


 俺たちはいつも通りにするし、彼女には試用期間だからって言っても特別扱いはしない。

 それでもいいというのなら。


 と、俺が言ったところで巻瀬さんの眼はみるみるうちに輝きだし、逆に他のメンバーは表情が「やれやれ」といった感じに変化していった。


「ネクサス君はやさしすぎるのです」

「うん?」


 やさしさが強さとは思っていないが。

 でも、くるものを拒んでいてはという気持ちも確かにあるからな。


「よろしく、巻瀬……ぇ」

「ルナナですっ」


 それにしても、……少々、神御裂かんみざき家当主をリスペクトしたような名前だな。


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