表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第1部:第2章
75/199

第75話 「神剣アンサラー」

澪雫みおちゃんの刀? うん、うん。ちょっと待っててね」


 月曜日。

 零璃れいりに、澪雫の刀についての話を持ちかけると、彼は持っていたタブレットを操作し始めた。


 どうも、自分の作った「作品」のデータは全てその中に集められているらしい。


「澪雫ちゃん澪雫ちゃん。この中の物だったら……ちょっとくらいは安くできるよ」


 普通の人なら、「友人から金を取るのか」とか考えるのかもしれない。

 反感を持つかもしれないのだが、これは違う。

 武器一つ一つの価値が、恐ろしいほど高いものなのだ。


「うー、やっぱり高いですね」

「……零璃、澪雫に値段を見せるな」

「あ。はーい」


 俺の言っている意味が分かったらしく、零璃はうなずくと値段の表示を消す。

 その行動に澪雫は首を傾げるが、俺が気にしないでいいというと釈然としていない顔ながらすぐに頷いた。


 正直、澪雫に刀の値段を払わせるつもりはない。

 この少女は、俺の彼女であること以前に母親の一番弟子である。

 そのくらいの金がないわけでもないため、俺が払う。


「それなら、オーダーの方がいいかも。澪雫ちゃんに一番あったものを作った方がいいかもね」

「でも、私はそんなお金、ありません」


 確かに、オーダーなら高い物は高級車が1台買えるほどの値段がしたり、さらには家を買えるようなものも存在する。


「澪雫に金は出させない」

「へ?」

「……いいから、オーダーでも何でも買ってこいよ」


 零璃に次はいつ店にいるのかを問いかける。

 あと、俺が持っている正体不明な剣の鑑定も頼むことにした。


「そうだよね。その剣、ちょっと触ってもいい?」


 零璃にうなずき、鞘ごと渡す。

 が、零璃が鞘からその剣を抜くことは、出来なかった。


 彼が唸っても、力を入れても。

 鞘と剣が離れることを拒否しているように、動かないのだ。


「抜けないよ?」

「え?」


 と、澪雫も持ってみるが抜くことが出来なかった。


 俺は普通に抜けるのに、少しおかしいなぁ。


「はい」

「うー、何でなんだろ」


 抜けば、その後は何ともなかった。

 傷の付き具合だとか、どこかに紋があるかなどを簡単に調べ。


 あっと、何かに気づいたようにタブレットを操作し「これじゃない?」と俺に見せた。


「え、これ俺が持っていいものじゃないだろ」

「でも、貴方のお父さんなら持ってておかしくないんじゃないかなぁ」


 タブレットには、固有名詞付きの剣の名前。

 作った人は不明、取り扱いレベルは最高。


 例えるというか、これは、もし本物だったなら。

 「現存する伝説の武器」という呼び方が、一番だろうか。


「名前は【応える者】、……【アンサラー】。20年前に、世界を救った剣そのものだよ」










「うーん、あり得なさそう」


 食堂で新生【ソキウス】のメンバーが集まり、食事をとる。

 さっきの話をし終わって、俺はぼそりとつぶやいた。


「……その根拠は、なに?」


 と、疑問をぶつけてきたのは神御裂かんみざき双子姉妹の一人、こうである。

 放課後には、神御裂の姉妹と澪雫の3人に剣の訓練を受けなければいけないし……。


「まだ才能が開花していない俺に渡したところで、って感じがするけど」

「だからこそなんじゃないかな」


 切り返したのは、痕猫あとねこ刑道けいちである。

 刑道は、何かを思案するように難しい顔をすると、しかしと続ける。


「開花したその時のために、事前に渡すというのもあると思うが」

「先天的に開花していた親父ですら、完全に使いこなすのに3年いるって言ってたぞ? ……あ」


 なるほど。だからこそという訳なんだろうな。


「でも、これって魔剣の一種なのかなぁ」

「どっちかというと、それ以上のものだから神剣の一種だね。特殊能力を有して、確実に人が作ったという物を【魔剣】。作った人が不明で、剣が人を選ぶのを【神剣】って呼ぶようにしているんだって」


 ここらへんは、さすがというか詳しいのは零璃だ。

 とても不健康なことに、カップラーメンを啜っている。


 俺は澪雫が作ってくれた弁当を食べているが、それをみた神御裂の双子とか、刑道とかがうらやましそうな顔をしたのはすぐに分かった。


「ん、おいしーよ?」

「そういうのじゃなくて……、正直羨ましい」


 一口いい? と澪雫にねだっているのはそうの方である。

 もちろん、多めに持ってきている為澪雫はほほえんで許可した。


「ネクサスは本当に恵まれているな」

「本当にもっともだよ。……正直、俺よりも澪雫の方がスペックは高いのに」


 何で俺なんかを好きになったのやら。

 ……や、俺から行ったんだった忘れてた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ