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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第1部:第2章
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第74話 「休日初デート7(終)」

デートはここまで。


お泊りの様子は、書くかどうか未定です。

「いてて」

「ちょっとやりすぎた感じはしますが、でもいい試合でしたね」


 結果、怪我をした。

 澪雫みおが強すぎて、言い訳する気にもならないというのはいささかどうしたものやら。


 俺程度の能力では、彼女に文字通り「切断」されるんだが……。

 どうやって攻める? の前に勝てない。

 防戦になっていたと思っていたら、俺は床に伏せっていた。



 というわけで、今は帰路だ。

 ホテルで泊まるのをやめて、結局天王子学園に戻ることにした。


「今日は、ネクサス君の部屋に泊まろうかな、とか思うのですけれども」

「おう」

「……ちゃんと、夜ごはんも作りますよ。……夜は二人がいいです? それとも皆さんも呼びます?」

「いや、澪雫と二人で」


 彼女にそう告げると、何を思ったのか澪雫は顔を赤らめる。

 夜ご飯は何を作ってくれるんだろう。


 ん、夏前でも寒いな。


「手、つなごっか」


 少女の手は、体温では冷たく。

 しかし、心境的にはあたたかい。


 視線を前に向ければ。すでに夕暮れは近づいている。

 そこにあるのは、綺麗な赤からオレンジへのグラデーションであった。


「何が食べたいです?」

「初めてだから、澪雫が作りたいものでいいぞ」

「はいっ」


 返事をした澪雫の顔は、どこかほっこりしたように緩んでいた。

 こちらを気恥ずかしそうに向く澪雫。


「それにしても。……うーん」

「そういえば、母さんに刀を返したんだな」

「私では、まだ使いこなせませんから」


 朱玄しゅげんさんに見てもらったときから、「次に師範に会うときには刀を返す」と決めていたらしい。

 それがあんなに早く来るとは思っていなかったらしく、今は武器なしである。


「体術の心得は?」

「ないですね」

「なら、刀を買うまでは俺から離れるな」


 澪雫が、いくら剣の名手だとしても、武器がなければただの少女なのだ。

 能力者として認定されているにも関わらず、彼女の能力は正直不完全能力者でも下のランクだろう。


 それでも、天王子学園にはいれたのはその剣が認められているからだな。

 俺の母親も、ちょうど俺たちの時期はまだ能力が使えなかったらしいし。

 いや、今でも使えないか。


「離れない、とは?」

「そのままの意味だけど」


 俺がそう返すと。澪雫は何かを察したらしくそのままうつむいた。

 夕暮れの赤い空に反射している、それでもわかるほど顔は赤い。


「どこかに、買いに行かないとですね」

零璃れいりに頼んで、作ってもらってもいいかなって俺は思うけど」


 友人のコネクションを使ってオーダーメイドを作ってもらうというのも、一つの手段としては十分だろう。


 彼女の使う剣というのは、総じて短いのが特徴だ。

 究極なまでに、俺の母親を意識したんだからそれもそうだろう。


 刀なら小太刀・脇差。剣ならナイフ・ダガーなどの短剣。


「なあ、たとえばこれは持てるか?」

「はい。専攻しているのは短刀剣ですが、一応片手剣なら使えます」

「なら、手に入れるまでこれを預けておく」


 頭の上に、ハテナマークを乗せたような、そんな顔をした澪雫を見据えて、俺は立ち止ると地面に手を付けた。

 運がいいことに、俺たち以外の人はいない。


 天王子学園、土曜日の夕暮れ。

 別に人がいても構わないが、見られて変な噂を立てられても問題だからな。


「……?」


 疑問の顔のまま、こちらを向く少女に俺は笑いかけて、力を籠め能力を発動させる。

 何かを引き抜くように、手を地面から離すとどうだろう、そこには一本の剣が現れたではないか。


「……これが、属性武器の創造能力ですか?」

「能力に手馴れている人はできると思うけどな、このくらい。普通は地面に手なんて付けなくてもいいんだが……」


 今回、生成する武器の長さ。それのイメージを確定させるために俺は地面からの長さで作ったというわけだ。


 ちょっと、思ったよりも長くなった気がする。


「ちょっと修正した方がいいかもしれん」

「や、これでも十分です。ええと」

「俺から10メートル以上離れたら、消滅するから」


 彼女に忠告し、同じく簡単に属性能力で鞘を作成する。

 作るのは簡単だ。思い通りに、俺の場合なら【氷】属性の能力者だから【氷】属性の武器程度は創れる。


 でも、これはあくまでも作成者が一時的に使うことを想定された能力の使い方で。

 しかも、それが「個体として存在している」限り俺のエネルギーは消耗される。


 澪雫には、そんなことを教えない。


「家まで、何もなければいいけれども。……一応持ってて」

「はい」


 氷を削って出来たような鞘と剣。

 どちらも半透明で、手をかざせば向こう側が見えるようになっている。


「思ったよりも、軽いのですね」

「ちょっと軽くしてみたんだが、やっぱりしっくりこない?」

「大丈夫です」


 ……そうか、そりゃあよかった。

 

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