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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第1部:第2章
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第61話 「凱旋ディナータイム2」

画像つき。

 俺が携帯電話を切って元の場所に戻し、部屋に戻るとみんながこっちの方を見つめていた。


「どうしたんです?」


 最初に口を開いたのは、当たり前というかなんというか澪雫みおだった。

 ほかのみんなも、心配しているのか気になるのか、そんな感じの顔をしている。


「喜べ、食費代が浮くぞ」


 頭の上にハテナを浮かべるみんな。

 説明する俺。


 目を見開くみんな。

 顔面蒼白な澪雫。


「はわわわ、そんな場所に行けません……」


 ああ、言ってたな。

 澪雫は比較的普通の家庭からだったか。

 それと、刑道けいちも。


 刑道は学園長の息子だから、何とかなるかもだけれどもな。


「別に、大丈夫」

「怖くないよー」


 神御裂かんみざき姉妹が、澪雫をなだめるように声をかける。

 もちろん、先に声を出したのは姉のほうである。


 二人の言葉を聞いて、少々平穏を取り戻した部屋の空気は、次の瞬間零璃が腹の音を鳴らした時に打ち破られた。


「あっ」


 まだまだ時間はかかるが、早くそっちに向かった方がいいだろう。

 もちろん、俺たちには交通手段がないから空港へ、だが。







「おー、きたか」


 空港に着いた俺たちを待っていたのは、烏導うどう輪化りんげ先生と八神やがみ夫妻だった。


「こんばんは」


 夜になっても爽やかな王牙おうがさんの声と、沈みきったというのに柔らかい太陽のような温もりの華琉はるさんの声。

 それは俺たちに、ある一種のリラックス効果をあたえているようだった。


「烏導先生も、招待されたんですか?」

「ん、八神夫妻にな」


 烏導先生は、確か20年前の戦争では英雄として総合的には呼ばれていないが、別の地区――確か関西――で善戦しており、最新版の歴史の教科書には載っているはずだ。


 そう、今回俺たちが呼ばれたディナーパーティーには、そんな教科書に載った未来の偉人たちが揃いも揃っているのだ。


「今日、だれが結局くるんだ?」

「そうだな、【英雄12家】全員とあとは【楽園エーリュシオン】、【5聖家】と……ここの学園長・理事長じゃないか?」


 ほら、また新しい単語が出てきた。

 【5聖家】とは、日本で千年以上も前からずっと直系で続いている能力主体で大成した5つの家系のことだ。


 一つは、日本最有力の魔剣鍛冶【関帝かんてい家】。零璃の家。

 一つは、最古の能力剣流【神御裂家】。こうそうの家。

 一つは、日本で初めて「能力」という概念を見つけ出した【風庵寺ふうあんじ家】。

 一つは、最強の拳術を持つ家系【八龍やりゅう家】。

 そして、他4つの家系を守り続けてきた【皇羅おうら家】。


 人の苗字に文句をいうつもりはないが、こう堂々とした名前を見ると、神御裂家が【小山】姓から心機一転して変わった理由もなんとなくわかるような気がする。


「はわわわ」

「ん、霧氷むひょうどうした?」


 5聖家、という単語を聞いて改めて震えだしたのは澪雫である。

 一般人にはきつすぎるか、さすがに。


「あー、澪雫ちゃん、大丈夫大丈夫」


 華琉さんが彼女の心境を察してか、彼女の背中を擦った。


「私も、天王子学園に入学するころは本当に一般人だったから、ね?」


 明らかに一般人じゃないけどな。

 華琉さんも、俺の母親も16歳の時にはすでに有名人だったんだから、一般人じゃないだろう。

 一般家庭の出身かもしれないが、少なくとも一般人じゃない。

 これは、王牙さんにも言える。


「確かに、ネクストと出会って周りが一気に変わった気がするなー」


 俺の親父は、いったい何人の人生を狂わせたんだろうか。

 いや、むしろよくなっている人もいる、はず。


 ていうか、いてくれないと俺が……やりきれない気持ちになる。


「そんなことより、新生【ソキウス】の同盟章は決まったの?」

「えーと、これですかね?」


 と、俺は持っていたプリントを華琉さんに手渡した。

 ステンドグラスをかたどったもので、中の色は属性のシンボルカラー。


挿絵(By みてみん)


 違う色同士でも、ちりばめれば一つの結晶となる。

 そんな願いを込めて、最初っから作っていた。


「……これ、旧【ソキウス】と似ているわね」

「参考にしたのはあります」


 俺はもう一枚、持っていた旧【ソキウス】のシンボルのコピーも見せた。


挿絵(By みてみん)


 旧【ソキウス】のよりは、幾分か豪華にしたつもりだが、どうだろうか。

 確か、今【ソキウス】は【トライアンフ】に名前を変えて、いろいろとやっているんだっけか。

 【トライアンフ】は、日本語に訳せば【凱旋がいせん】だと。


 こら、そこ陰謀論とかいわない。


「おー来たな」


 王牙さんが指差した先には、小さな光の粒が見えた。

 だんだんとそれが近づいてくるにつれて、プロペラの回る轟音と、ジェット噴射をしているのだろうかエンジンの音が周りに発散していた。


「あ、これうちのだ」


 零璃がつぶやく。

 ……これは、関帝家のヘリコプターか。

 なるほど、お迎えがかなり豪華だな。



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