第58話 「決闘オーバーキル1」
ネクサスのフルネーム初公開!
「はい、つれてきましたよ」
金曜日の朝、澪雫が俺の前につれてきたのは双子の姉妹だった。
両方とも黒髪のロングで、容姿はほぼ一緒。
違うところと言えば、片方の眼が太陽のように紅色で、もう片方が深海のように蒼いことだろうか。
「初めまして、神御裂 紅です」
「初めましてー、神御裂 蒼です」
……名前の付け方は、だいたい想像がついた。
ついたんだが、あまりにも率直につけ過ぎじゃなかろうか。
俺でも予想できたぞ。どういうことだ。
「俺はネクサスだ」
「しってる、アルカディア家の長男」
「伝説の息子さん、だね?」
無表情だというのに。
しゃべり方一つで、こんなにもイメージに差はでるものなのか。
ちなみに、先に発言するのはだいたい紅のほうである。
「私たちはどこにも所属していない」
「だから、出来れば入りたいんだけど……」
その前に、と両方同時に右手の人差し指をぴんっと上に向けた。
「その前に、貴方の強さが知りたい」
「だから、お昼の決闘の結果をみてから、ね?」
そうくるか。
いや、予想はついていたけれども。
予想はついていたんだけれども……。
「火をみるよりもあきらか。とは思わないんだな」
俺には負ける要素がない。
なんども俺はそう思っているんだが、他の人はどうなんだろう。
「貴方が負けるとは思ってない」
「けど、貴方の強さが知りたい、から」
そうやってもの寂しげに俺を見つめるのはやめてくれないかね?
変な期待を抱くものなんだぞ、男って言うのは。
「とりあえず、まあいいか」
「とにかく、楽しみにしてる、から」
「期待を裏切らないように、お願いね?」
期待されてる。
……まあ、その期待を裏切るつもりはないけれども、ちょっと。
ちょっと、零璃の顔色が優れないというか。
「零璃、その服装はいったい何なんだ?」
「……どよーん」
どよーんて。
服装も、いつもの可憐さすらイメージさせる助走ではなく、まるで囚人服のような地味で味気ない服装だ。
いったいどうしたというんだろう。
「不安がる事なんてないんだぞ」
「不安じゃないよ。……ただ、ボクのせいでネクサスに迷惑をかけちゃうんだし」
そういいつつ、俺に目を合わせようとしない零璃。 俺の顔が有名になるきっかけにも成るし、今回勝てば【ソキウス】の運営も幾分か楽になる気がする。
俺は俺で考えがあるから、って言おうとしたがやめた。
彼の……零璃の顔が暗すぎる。
これはちょっといただけない。
「勝てるんですか?」
唐突と言うか、なんというか澪雫がそんなことを聞いてきた。
それは、一体どういう意味なんだろうなと俺は考えつつ、結局訳が分からず彼女に聞き返す。
「え?」
「自信満々な感じですけど、本当に勝てるのです?」
「ああ、問題ない」
問題があっちゃいけないんだよ。
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「へえ、こんなにもくるものなんだな」
「目測ですが、少なくとも3000人でしょうか」
澪雫がぐるっと見回し、呟く。
そして俺の方を向いて、ちょっとだけ恥ずかしそうに笑った。
気が散るんだが、可愛いから許す。
ここは、歓迎会の時に一回だけ来たスタジアムだ。
完全に見世物バトルだよな、これ。
「ネクサス君のご両親もいらっしゃいますね」
彼女の指さした方をみると確かに、両親が居た。
俺に気づいたのか、誰にもみられないようにしてウインクをすると、すぐにスタジアムの中央へ視線を戻す。
そのかわりというかなんというか、ぶんぶんと俺に手を振っているのは関帝夫妻である。
零璃と赫良さんの両親。父親のほうは何となく分かるんだが、どうみても零璃の母親、零璃と同じくらいの年に見えてしまう。
なんだっけ、日本でなんて言うんだっけ。
ああ、「合法ロリ」っていうやつか、なるほど。
「両者、前へ!」
司会はこの俺、八神王牙がつとめさせていただきます!
そんな感じにテンションがとても高い王牙さん、いったいどうしたんだろう?
と、俺はとりあえず相手の男対峙するように、スタジアムの中に入っていく。
何人かは、俺が誰か分かったのかな?
いや、分かったのは特進クラスの人と、あとは別の人だろうな。
「ルール説明行くから、よく聞けよ」
そういって王牙さんの提示したのは【殺したら失格】【戦意喪失させたら勝ち】という簡単なもの。
殺さない程度に殴ればいいと言うことだ。つまりはごり押しでも何とか成ると言うこと。
ルールを理解して俺が頷くと、相手の男子生徒は何がおかしいのか、せせら笑った。
「では、上級生から名乗りを」
「天王寺序列1590、天杯 レグリ」
そういって、天杯と名乗った男子生徒は俺をみる。
その顔は、ゆがんだ笑いのような、何とも言い難い顔をしていた。
「こいよ、一年風情」
とんだ挑発の仕方だなぁ、と思った。
思ったけど、決して口に出さない。
俺は自分の両手を握りこみ、冷気を発散させて周りを巻き込む。
勿論、最初に犠牲になるのは、相手だ。
「天王子序列130、【涼氷】」
この時点で、相手の口から漏れた声は「ヒェッ」だった。
よく分かる、その気持ちはよく分かるが零璃に手を出したお前が悪い。
「ネガリゼウス=イクリスプ=ゼオン=スティーレイル=アプホールデン=セイント・ブリザルド・アルカディア」
この時点で相手は浮足立っていた。
やっぱり、ここまで言えばわかるか。
俺が誰なのか。
「さぁ、はじめましょうか」
ネガリゼウス=イクリスプ=ゼオン=スティーレイル=アプホールデン=セイント・ブリザルド・アルカディア
を、英語にすると
Naigallyzeus=Ekkoulessupe=Xeon=Styreel=Upouoroudene=Saint・Burrezald・Arcadia
長いです……




