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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第1部:第2章
57/199

第57話 「決闘パーガトリー3」

「結局、あれでいいの?」


 かえりみち、零璃にそう聞かれて俺は後ろを振り返った。

 今のところ、計画はその通りに進んでいるしそもそも決闘に乗ってくれたのは好都合とも言えるだろう。

 一体、何に対して「あれ」を使っているんだろうか。


「気にするな」

「でも、ボクのせいで負けたりとかしたら」


 名誉に関わるとかそういうことを考えているのだろうか。

 しかし残念なことに、俺はそんなこと気にしない。


 まず、負ける要素がないからだ。


「勝てるのか?」

「愚問だな、刑道けいち


 俺は【神羅の伝説】の息子だ。

 まだ完全に能力に目覚めていないとは言え、日本でいう「蛙の子は蛙」をいい意味で実現できるように努力はしてきた。

 何回死にかけたかすら覚えていないし、そんな事は今関係ない。


「決闘のことは、時間があるし俺は自信があるから大丈夫。……それよりも、最後の一人以上を探さないと」

「……私が、直接掛け合ってみます」


 そういってくれたのは、澪雫だ。

 あのときから、もう1時間は裕にすぎているというのに、まだ若干パニックになっているというか、なんというか。


「本当に、澪雫みおさんはどうしたの?」


 特に何もないです、と澪雫。

 俺のせいだろうし、俺が今話しかけたところでパニックを起こすだけだろうから、今は放置。

 後で個別に話をしたほうがよさそうだ。


「なんでもないです、なんでもないです、何もなかったんです……」


 自分に言い聞かせるようにし、最終的には笑いたいのか泣きたいのかわからない、そんな顔で彼女は消え入りそうに呟くと脱兎の如く寮のほうに向かって駆けだした。


 その後ろ姿をポカーンと見つめる俺たち。

 そして彼女の姿が見えなくなって、ゆっくりと目を見合わせて。

 俺たちは、同時にはぁと息を吐いた。









「澪雫、いるか?」


 日も暮れて、外はすでに藍色。

 物音はほぼしない、そんな平和な夜のなか、俺は澪雫の部屋の前にいた。


 ノックしても、反応はない。

 まだ夏前、少々肌寒いそんな空気は、むしろ俺の感情を冷静にさせる安定剤の代わりとなっていた。


「澪雫?」

「……こんばんは、ネクサス君」


 ドアが開いた、かと思うと澪雫にくいっと引っ張られて部屋のなかへ。

 ……いかにも女の子の部屋、だな本当に。

 基本的に水色系統の寒冷色でまとめられているが、ぬいぐるみとかもある。


 ていうか、なんで引っ張られたんだろう。


「外にいられても、周りの目線とか気になりません?」

「成らないけど」

「……あの」


 よく見れば、彼女の顔は赤かった。

 なぜかはわかっているのだけれど、それでも可愛いと思ってしまうのは俺がおかしいからなんだろうか。


「あの、お昼の、あれって」


 まだ半信半疑でいたのか。

 まあ、いきなりさらっと俺が言った点もあるが。


「あの、冗談、なんですか?」

「少なくとも、冗談ではないことは確かだな」


 冗談であんなせりふ、俺は死んでも吐きたくない。

 だからこそ、少しでも。


 と、澪雫の顔がさらに赤くなっていく。


「あの、どういう、意味なんですか?」

「どういう意味も何も、ってかんじだけれども」


 男が女に対して言う、意味のある言葉なんて限られたものだと思うんだが。

 もしかして澪雫、男性との恋愛関係がないとかいうんじゃなかろうな。


 ……いや、十分にあり得るか。

 俺の母親を目指していたのなら、ずっと剣に人生をつぎ込んできたということなんだから。


「あの、だいじょうぶですか? えっと、私そういうのよく分からなくて」


 ……なんだか、やりにくいが。

 いいって事にしておくか。

http://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/203855/blogkey/1009728/


第一目標到達記念ということで、リクエスト受け付けてます!

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