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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第1部:第2章
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第52話 「朝礼ホームルーム」

「さーて、ホームルーム始めるぞー」


 朝の授業が始まる前、王牙おうがさんは妙に間延びした声でそう告げると、ぺらぺらとノートをバインダーをめくりつつ、連絡事項を読み上げる。


「ていうか、特進クラスはやっぱり、半分くらい来ないか」


 王牙さんの言葉は。妙に悲しそうだったが、時に気にしてはならない。

 特進クラスに入ると、座学の授業が免除されるという特典がある。

 そのため、今日の1時限が座学だから今の時点で来ている人は少ないのだ。

 まあ、俺や零璃れいりたちは来ているけれど。


 座学は、受けないで図書館に行きネーミングを考えるつもりではあるが。

 そもそも、属性能力とかの話ならともかく、国語や数学は、公務員になりたいわけじゃない限り高校以上のものは必要がなくなるようだ。


 しかも、俺の進路は決まっているから、な。

 死なない限り。


「あー、先週土曜日の公式試合に出た人、前に出ろ」


 そう呼ばれて、俺たちは席を立って前にでる。

 でも、席から立ち上がっていない人を見ればその中でも特進で参加していたのは25人程度だった、ということだろうか。

 そもそも、確か前回は大規模戦だったから4万人が参加していたらしい。

 4万って、だいたい1軍くらいの多さである。


「はい、これ。自分の名前のやつとったら戻れ。説明する」


 封筒、か。

 結果通知かな。


 特に何も考えなくてもいいような気がしたが、俺はとりあえず席に戻り、中身を空けた。

 ……ああ、戦闘記録だ。


 ゲームのスコア票みたいに、さらっと渡してくるあたりどうなんだとも思ってしまった。


 王牙さんの説明を聞き流しつつ、俺は順位の変動がどこにあるか、探した。

 が、見つからない。


「ネクサス・アルカディア。順位の変動については口頭だ」

「はいー」


 やっぱり見られていたか。

 ちなみに王牙さん、感知系の能力も持ち合わせているため目を閉じていてもほかの人の動きが分かる。

 ここにいるたった50人程度なら、瞬きのタイミングですらおそらく把握できるのだろう。


「公式試合に参加しなかった人は、前に渡したプリントに記載してあった通り無条件で序列が下がる」


 この言葉に、数人プリントを熟知していない人があわてたが、王牙さんはどこ吹く風だ。

 正直、この学園に来て戦闘訓練や公式試合に出ないというのは、戦闘ができない代わりに何か超特殊な能力を有しているわけでもない限り、普通は考えられないことだろうからな。


 偵察、という目的でわざと序列を下げに行く、という戦略もあるのかもしれないが俺ならしない。


「じゃあ、参加した人で順位に変動のある人を……」


 と、読み上げて……って。

 変動のない人のほうが多いのか。


 変動のあった人は。

 零璃れいりが499位から350位まで急上昇。

 魅烙みらくが300位から301位にダウン。

 澪雫みおが550位から600位までダウン。


 ほかの人は変わっていないのか。

 特に痕猫あとねこ刑道けいちあたり、上がったり下がったりしているんじゃないかと思っていたんだが。


 澪雫の件は仕方ない、というのも多々あるが。

 あの時離脱しなかったとしても、ほかの人に甚振られていた可能性があるから、あの判断で間違いではなかったはずだ。

 魅烙は姉さんの同盟【楽園エーリュシオン】の加護か、狙われることはほぼないし彼女自身があれだ、遠距離からのスナイプを得意としているんだから生存率はなかなか、といったところだろう。


 それにしても俺は?


「ネクサス・アルカディア。150位から130位に上昇」


 まあ、こんなものだろう、なぁ。


 序盤のものと、澪雫をリンチしていた涼野流の三下をぼこった結果がこれだろう、と俺は一人で勝手に判断してはぁとため息をついた。


「さて、ここで今日のは終わりだな。何かあったら今ここで聞くか、俺の準備室に来てくれ、時間があいていたらいるから」


 準備室、か。

 俺はメインの職員室にしか言ったことがなかったな、そういえば。

 なるほど、先生方は泊まり込みの先生がほとんどだから、ってことなのか?


 というより、少なくともこの学園の教師、数百人はいるんだよな……。

 さすが国立機関。


「さ、解散!」


 そんな元気な声とともに、王牙さんは手をたたいてにかっと笑う。

 女子生徒の何人かが、その爽やか全開な笑顔に当てられて顔を真っ赤にしたのを、俺は見落とさなかった。








「王牙さん、人気だよなぁ」

「そうですね、とても30代後半の身体ではないですし、何せネクサス君の父親の、相棒なんですよね?」


 それはそうだけども、と俺はうなずきながら適当に分厚い辞書を本棚から抜き出しつつ、ため息をついてしまう。


 ここは図書館の一つだ。

 人が少なく、司書さんも少ない。


 ただ、なんだか男女比がちょうどよくて微妙に雰囲気が甘い気がする。


 ……いいんだ、気にしない気にしない。


「澪雫、朝はその、すまん」

「ん? 何がですか?」


 むしろ、気を煩わせて申し訳ないですと澪雫。

 ……いい子すぎる!







「さて、席に行きますか……あれ?」

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