第44話 閑話 「英雄が、英雄になった日」
1000文字程度の短い短編です。
親の世代を書くのは、ネタバレにならないか少々不安ですが……。
「終わった?」
「ああ、終わったよ」
涼野冷の問いは、きちんとネクストに届いた。
破壊されつくして、瓦礫の山と化した東京。
そんな荒廃しかけた世界。
そこに立つのは、戦争の勝者。
「なあ、冷」
「ん?」
「俺たちは、この戦争で何を得たんだ」
ネクストは、すべてが終わった東京の街並みを。
唯一残ったビルの最上階で、ネクサスら20人は見下ろしていた。
総ての終ったあと。
何も残らない、そこで。
ネクストは、自分の彼女に問いかける。
「俺はいったい、何人殺したんだ。その中で何人、俺たちと違う正義を持って、何人……」
しかし、ネクストは知っている。
全員、だと。
この戦争は、正しくは戦争ではなく、国際紛争なのだ。
一般人と一般人が戦争をする第1次、第2次とは違う。
能力者と能力者が戦った、第3次戦争。
そこに巻き込まれた。……巻き込まれた?
「他の人たちには、関係ないことなんだよ。……あの人たちが考えているのは、自分たちが守られたって、それだけ。……ネクスト君は、今日から」
今日から。【英雄】になるの、と冷。
その単語の意味は、一体何を示しているのだろう。
18歳のネクストには、全くもってわからなかった。
「死んだ人たちは戻ってこない、そのくらいわかっているのに」
「だからこそ、俺たちは。次の世代にはこんなことがないようにしないと、絶対に」
そうNEXTの言葉を引き継いだのは、すすけた紅の髪の毛を払った青年だ。
名前を、関帝朱玄という。
零璃と赫良の父親になる男だ。
「ネクスト、お前は一人じゃない。それは前々から言っているはずだろう。……【ソキウス】を率いて、この戦争を終わらせた。それは事実なんだから」
この日を持って、【ソキウス】という「仲間」を意味した同盟は、伝説となった。
そして、ネクスト・アルカディアを含む世界を救った20人は、最終的に12の姓に落ち着く。
その中で、呼ばれるようになったのは【英雄12家】。
代表であるネクストは【生きる伝説】となり、世界に大きな影響を及ぼす存在となる。
「本質は変わらないのにな」
「……ん?」
今日も、某国の巨大な城に。
ネクストは、冷や仲間たちと色々な会議を繰り返し、時には世界中を飛び回っている。
世界を、二度とあんな状態にしないように。
英雄は、休まるところを知らないが、休むところを与えられても拒否したのだ。
 




