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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第1部:第1章
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第39話「第1回公式試合 その後2」

 澪雫と情報交換をしていると、軽くドアがノックされた。

 そしてドアがスライドし、あいたその先には。


 俺の両親。


 【神羅の伝説】、ネクスト・アルカディアは堂々と。

 【剣聖】、レイ・アルカディア。旧名、涼野すずのれいは心配そうな顔で。


 部屋に入ってくると、母親は俺たちに気づいた。


「あ、ほら。ここにいるって言ったのあってたでしょ?」

「……そうだな」

「ええと、師範しはん?」


 澪雫は、俺の両親をみて目を白黒させている。

 そりゃあそうだ、この二人は「至上最強の夫婦」と呼ばれている位なのだから。


 母親は、澪雫のあちこちをみて「大丈夫? 大丈夫だね」と傷を調べている。

 いや。澪雫の師範である母親の方は何となくわかるんだが。……父親の方はなぜきた。


「ちょうどネクサスも。……ええと」

関帝かんてい零璃れいりともうします」

朱玄しゅげんの娘か」

「男です」


 えっ。と父親は食い入るように零璃を見つめた。

 その気持ちはよくわかる。俺も1週間たってやっとなれてきた。

 どうしても。美少女にしか見えないんだがなぁ。


 今度、身体検査をする必要がありそうだ。

 このまま、もし本当に女だったら俺はどうしようか、とか考える前に射父親はごほんと咳払いをして話を続けた。


霧氷むひょう澪雫の所属していた同盟アライアンスは解散した。……いや、冷が解散させたか」

「ちょっと、度が過ぎてたね」


 母親の口調は何でもない、というよう声だった。

 でも、その裏に隠されている、怒りは顔ににじみ出していて本当に怖い。


 でも、それを感知できているのはどうも家族だけみたいだ。


「で、ネクサスは俺の意志を継いでくれるのか?」

「ん、ああ。……【ソキウス】を復活させようかな、って本気で思い出してる」


 【ソキウス】。

 それは、父親が学生時代に創設した同盟アライアンスだ。


 簡単に言うと、英雄12家は全部あれだ。

 【ソキウス】の構成員の、特に活躍した12人なのだ。


 まあ、中は中で結婚しあっているから正しくは20人くらいなんだけども。

 ……王牙おうがさんと華琉はるさんとか、両親とか。


「そうか。……応援しているぞ」

「……親父、ここに姉さんがいるなんて一言も言ってなかったな」

「言ってないぞ」


 ぬけぬけと言いやがって。


「俺と姉さんの関係を秘匿しているのは、姉さんが……だから?」

「例え氷羅が人間であろうとなかろうと。ネクサス、お前がほかの能力者と違おうと俺たちの家族であることに代わりはない」


 言うことはかっこいいし。

 いいんだが、どうなんだろう。


「澪雫ちゃん、ネクサスのこと、考え改めた?」

「はいっ。……ごめんなさい」


 なんか俺の知らない間に話が進んでいた。

 俺のことの考えを改めるってどういうこと?


 まあ、最初の方こそ澪雫は俺を、親の仇とでもみるかのような顔でいたけど。

 今はごらんの通り柔らかいし、なんだかんだかわいいと思うんだが。


「ああ、そうだ忘れていた」

「んあ?」


 父親の服装は相変わらずマントなんだが、そこから取り出したのは一本の剣だ。

 黒い鞘に入っているため中身は見えないが、さすがにここで見せる訳にも行かないのかそのまま渡してきた。


「これは?」

「寮に帰ってから抜け」

「……剣名は?」


 俺の質問を無視する親父。

 どうも、いちいち質問するなっていう意味だろうな。


 ということは、かなり有名な剣のはずだ。


「さて、帰るとするか」

「そうだね。……澪雫ちゃん。ネクサス君をよろしくね、零璃君も」

「はいっ」

「はい」


 二人が返事をしたのを確認すると、両親は病室から出ていった。


 残されたのは、ベッドに座ってニコニコしている澪雫と。

 鞘とそれに入った剣を呆然と見つめている俺と零璃。


「結局なんだったんだ、これ」

「でも、あの『英雄』がくれるってことだから、力を認められたんじゃないの?」

「たぶんなぁ」


 重さはそこまで重くないな。

 長さも、120センチメートルくらいで長剣の類と言える。


「もしかして、それって」

「ん?」

「私が師範から受け継いだように、『あのとき』使われたものでは?」


 澪雫が言っている『あのとき』というのは、やっぱり20年前のか。


 まあ、何でもかんでもアレに結びつけるのはよくないかもしれないが。 能力者の地位を確立したのは、確かにあれなんだよな。


「ネクサス君、強くなってくださいね」

「……んん? ああ」


 澪雫にそういわれて、俺はうなずくが。




 そのときはまだ、彼女の言葉の裏に張り付いた気持ちを。


 俺は、まったく気づけていなかったのだ。

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