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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第1部:第1章
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第38話「第1回公式試合 その後1」

 吹き飛んだヴァロッサに俺は最接近し、空中で脚を回転させトルネードキック。

 これは中国武術でいう旋風脚だ。


 そのまま、再度後ろに飛んでいった彼女。

 俺はいったん飛び上がり、そして頭に向かってドロップキック。


 着地、そして間髪入れずに右の拳へと能力を集中させ、そのまま腹にパンチ。


「なん……で?」


 ヴァロッサは、脳が揺れて意識もなくなりかけている。そんな状態でも、今の状況がわかっていないらしい。


 かなり、リョナ的な傷が付いているがこれは戦闘だ。

 零璃れいりの仇はとった。


「【小組ファーチ】のデメリットは、メンバーの一人が欠ければ強制的にもう片方も戦闘離脱となる」

「そう、だから、私は」

「ただし、それはすぐっていう訳じゃない。……5分の猶予が与えられる」


 それを、暗に王牙おうがさんは【仇討ちタイム】と呼んだ。

 人というのは、殆どの場合一人倒したら安心するのだ。

 勝って直後に冑の緒を締められる人は限られる。


 だから、その短時間に総攻撃を他の人はかけられるということ、だ。


「ヴァロッサはもうほっといてもテレポート対象。というわけで俺は」


 もう時間だ。

 そして俺は自分の意識が、消えてなくなるのをはっきりと感じながら、倒れた。









「……ここのテレポート、なんか変な感じだな」


 医務室。

 目を覚ました俺は、胸の部分に包帯を巻いてはいるものの元気な様子である零璃の隣で、そうつぶやいた。


 俺はほぼ無傷。強いて言えば、再展開をミスった零璃の飛び散った金属片が左腕に突き刺さっていたが、半袖で隠している。

 あのミスは、俺を守ろうとして零璃がやったものだ。

 彼を責める必要はないだろう。


「ごめんね、ボクのせいで」

「何言ってるんだよ。俺を助けようとしてくれたんだろ?」

「うぅ」


 釈然としない様子の零璃だが、仕方ないだろうな。

 時間が解決してくれると信じて、俺は彼に話しかける。


澪雫みおのところにいってみるか」

「……ん、そうだね」


 いってみる、といってもそこまで遠いものじゃないのだが。

 別室だから、いってみるで間違いはないのかな。


「それにしても、テレポート後すぐの録画をみたけどあれは何?」

「あれって?」

「ほら、ネクサスがやった3次元的な蹴り攻撃? 何か身体能力強化の能力でも使ったの?」


 使ってないな。


「使ってない。脚力は能力がうまく使えなかった頃に、能力なしで能力者と戦えるか訓練をしていた時のものだな」

「へぇ~、すごい」


 訓練したら、ボクも生身で出来るかなと零璃は言ったが……。

 実際、訓練したら誰にも出来る。


 能力者の基本身体能力は、一般的に能力者以外の人……一般人と変わらない。

 しかし、能力者は一般人よりも数百倍、人によっては数千倍の延び幅がある。

 一般人は「努力で何とかなる」はまあまあ通用するが、能力者はかなり通用するのだ。


「零璃はそのままでもいいんじゃないか?」

「そんなことないよ。天王子学園に入ったからには、人並みは最低でもつけておきたいし」


 人並みの戦闘力は十分あるだろうに。

 これ以上何を望むのか。


「ネクサスに見限られないようにしなくちゃね」

「見限るって。……零璃には零璃の特長があるだろ、そこをのばせばいいんだよ」


 零璃の場合、その特殊能力を属性能力に付与させるとか、その逆とか出来たらなおいいな。

 まあ、こういうことは今考えるべきことじゃなくて授業が本格的に始まってから考えるべきことかな。


「ねえ、あのとき絶対に5分たってなかったよね」

「おう」

「なのに何で『時間だ』ってつぶやいたの?」


 なに、読唇術でも持っているのか?

 俺、口パクで自分にしか聞こえないくらいの音量だったはず何だが、どうなんだろう。


「俺の脚力最稼働の時間は20秒だぞ、普通は」


 1日1回とかじゃなく、別に数十分休めば再使用は出来るんだがそのあとが問題だし。

 と、俺が零璃に説明していると、澪雫の病室前についた。


 女性は個室らしい。男性は全員同じ部屋であることが多いと聞くのに。

 零璃くらいは、個室でもいいんじゃないかな。


 あと、個室はもちろん同盟アライアンスだなぁ。


「澪雫、入ってもいいか?」

「ネクサス君と、……零璃君ですか? どうぞ」


 スライド式のドアを開けると、まず名は言ったのはパイプ式のベッドだ。

 そこに、一人の少女が横たわっている。


「ドアは閉めていればオートロックがかかるそうですよ」

「ハイテクだな」

「そうですね。……二人とも、中継みてましたよ」


 そうほほえむ澪雫は元気そうだけど。

 俺たちの方を向こうとして体を動かすと、やはり顔はゆがむか。


「無理しなくてもいい」

「……そうですね、すみません」

「けがは大丈夫なの?」


 零璃の質問に、切り傷が数十あるだけですと澪雫は答える。

 その顔も、声も切なげなものだったが、それ故に俺は怒りがさらに募った。


 が。


「いいんですよ、ネクサス君が私のことで起こる必要はありませんから」

「いや、でも」

「いいんです」


 澪雫はそう繰り返し、俺と零璃に手をのばす。

 握れという意味だろうか。


 握ってやると、澪雫は「わかってくれました?」と微笑んでくれた。


「これからは、よろしくお願いいたしますね、二人とも」

「ああ、そのことなんだが……」


 少女に、俺は同盟アライアンスを作ることを伝える。

 と、「いいですね」と賛同してくれた。


「……同盟アライアンスが設立すれば、ネクサス君は盟主になるんですか?」

「ああ、一緒に目指そうか」





 頂上ゼニスを!

第1章終了まであと数話

そのあと第1章のまとめと閑話を数話書く予定です。

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