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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第1部:第1章
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第37話「第1回公式試合8」

 神鳴かみなり陸駆りく

 その名字は、確かに父親からきいたことのある名前だった。


 20年前、世界を救った「英雄」とその仲間たち。

 その中に、父親から俺が聞かされている名字は……。


 『アルカディア』・『デスロスト』その他全12家。

 その中に、神鳴家も入っている。

 だからこそ、彼は同盟アライアンス楽園エーリュシオン】に入っているのだろう。


 同時に、常人から一線を越えた能力者であるというのも。


「ほぅ」


 しかし痕猫あとねこ刑道けいち、これにも一切怯まない。

 英雄12家じゃないのに、なぁ。


 わからないことでもない。名前や血筋にとらわれず、血統主義を真っ向から叩き潰すような人間も、いていいのだ。

 能力者は、普通の人間以上に努力で何とかなる可能性の高いものなのだから。


「おっと、ネクサスの相手はこっちね」


 そういって姉さんが俺たちに当ててきたのはヴァロッサ・バレット・デスロスト。

 ……さっき撃ってきたのもこの人だろう。


 この学園には、美形が集まっているとはいえ多すぎないか。

 いや、神鳴陸駆先輩は筋肉ダルマだけれども。


「1年の始まり、その初めての近接戦闘がネクサスっていうのは……うれしいねぇ」


 色気120%。

 しかし、油断してはいけない。

 ヴァロッサは、遠距離からの攻撃が苦手なんだ。


 言い間違いとかじゃなく、本当に「苦手」なのである。


「この二人に勝った人と勝負する。いつもそうだから、ね」


 氷羅ひょうら姉さんはそういうと、また天使のような白い翼で頂上に帰ってしまった。


 つまり。この二人がゲーム的に言えば大ボスということだ。

 ラスボスは、姉さん。


「絶望しかない……」


 隣で零璃れいりはそうつぶやくが、本当にそうなんだからどうしようもない。

 本気で強いんだよ……。


「5分、持つかな?」


 そういうなり、ヴァロッサは能力で素早く刀を抜くと、体の随所にジェット噴射でもついているかのような早さでこちらに迫ってきた。


 もう、ここまできたら痕猫刑道のことも気にしてはいられない。

 とにかく、零璃に負担をかけないように……!



「吹雪け」


 俺は零璃の腰を抱き寄せて吹き飛ばされないようにし、ヴァロッサに対して追い風になるように暴風をまき散らす。

 雪ではなく氷のかけらを混ぜた吹雪のような何かは、直接ヴァロッサを吹き飛ばそうとするが、彼女の移動スピードがわずかに落ちたくらいで変わらない。




 次に、俺は氷の固まりをぶつけることにした。

 凍えつつすでに何も言えなくなっている零璃は後ろにかばいつつ、1メートル四方の氷を滑らせる。


 当たった。

 しかし、その勢いは変わらない!


「遅すぎ」


 氷を溶かせないことを知っている、ならば斬ればいいじゃないみたいな考え方は脳筋っぽくて嫌いじゃないんだが。

 なんて言えばいいのか、この状況においてはただただやっかいである。

 太刀筋が速い。そのくらいはわかっている。

 確か、母親の教えも授かっているはずだ。

 ヴァロッサ自体の親は、両方とも完全な遠距離攻撃タイプなのに。


「ネクサス、危ない!」


 零璃が太刀筋に入った俺を守ろうと鋼の壁を作り出す。

 が、それをヴァロッサはいとも容易く切り裂く。


「……邪魔」

「ひぃっ!?」


 底冷えするような声に、一瞬。

 反応が遅れた零璃は、次の瞬間消えた。



 テレポートしたのだ。

 おそらく、あのままだったら上半身と下半身が離れていただろう。


「……ふぅ」


 【小組ファーチ制度】で片割れが退場した場合、もう片方も退場する。

 そのルールに則って、安心しているんだろうが。



 それはちょっと甘い。

 そんなんじゃ、さすがに厳しすぎる。


 だからこそ。






 俺はヴァロッサが気を抜いた一瞬の隙をついて、突進する。


「なっ!?」


 そして一撃目、右脚で蹴り上げる。

 とても単純な攻撃だ。

 しかし俺の脚力から、という特別条件からするに。


「んぅぐ!?」






 吹き飛ぶ。

バトルシーン苦手ってどうしても思ってしまう…

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