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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第1部:第1章
35/199

第35話「第1回公式試合6」

短くなってきましたね。


次回から長めに書こうと思います。(3000字くらい)

「あっちゃー」

「どうしたんですか、ヴァロッサ先輩」


 となりで、ヴァロッサ先輩が悔しそうな声を上げる。

 私のペアの先輩は、私と同じ遠距離型の武器を使っているんだけど、どうしたんだろ?


「急いでここを離れなきゃ」

「え?」


 私が訳も分からず聞き返すと、先輩はかなり焦った顔で今さっき向いていた方向を指さす。

 まだなにも見えないけれど、遠くの方から「何か」が近づいてきているような気がする。


「ネクサスが、攻めてくるわ」

「ふぇ!?」


 意外すぎる言葉。先輩の話を聞く限り、どうみてもあり得ないタイミングで金属の壁に銃弾が阻まれた、というのだから。

 ……零璃れいりくんの仕業かな。


 でも、音速以上のスピードで撃ち出される銃弾を、生身の……能力者とはいえ人間が反応できるの……?


魅烙みらくちゃん、近接戦闘はできる?」

「人並みには、できるとは思いますが」


 なら大丈夫ね、とヴァロッサ・バレット・デスロスト先輩はちょっと待って、と私に指示するやいなや、姿を消す。

 山頂に向かって、迷彩を施しつつ思いっきりダッシュしていったんだとおもう。

 なんだか、忍者みたいだなぁと私は思いつつ、スコープをのぞき込んで正面の警戒を怠らない。


 目の前にはただでさえ半壊しているというのに、数十分前の氷羅ひょうらさんの攻撃によって全壊した廃墟が広がっている。

 でも、その中に何百人の伏兵がいるか。

 隙あらば、打倒【ゼニス】に燃えている人が、何人いるのかはわからないけれど。

 先輩の話によると、かなり多いらしい。


「有名税、だっけ」


 確かそんな名前の用語があったような気がするけど。

 ……集中、集中。


「……肩が出てる」


 私はそうつぶやきながら、トリガーを押し込み一人を撃墜させる。

 ヘッドショットでもなければ、心臓に当てたわけでもない。


 武器の性能によって、体の一部に当ててそこから焼き尽くす、ただそれだけ。

 私は母親のように射撃の名手でもなければ、父親のように武術で人外じみた強さを誇るわけでもない。


「悔しい」


 追いつきたい。

 でも、追いつけない。


 だから、自信満々のネクサスくんに、憧れながらも……。

 彼の実力は努力によるものだとは知らず、あのときはひどいことをいってしまった。


 私も、ネクサスくんも。

 待遇は、そんなに変わらないはずなのに。








---------------------------------


「ついに、ネクサスがきたって?」

「……うん、ミスした」


 悔しそうな顔で、ヴァロッサはうなずく。


 守ったのは赫良かくらくんの弟さんかな、零璃れいりくんだったっけ。

 誰がどうみても美少女なのに、能力は結構えげつないね。


 はじかれた、っていわれてるから展開速度も防御力も高いってこと、かな。


「ネクサス、いい友達を見つけたね」

「……防御特化。それだけだぞあいつ」


 となりで赫良くんがなにやらいっているけど、ここは無視しましょう。

 私的には、まだネクサスとは戦いたくないのだけれど。


「相性が悪いのか?」

「ネクサスがね。……いっちゃあ悪いけど、私は才能型。ネクサスは努力型。……特にまだ覚醒していないネクサスが、私に勝てるわけがない」


 言い方は確かに厳しいかもしれないけど。

 正直、私がネクサスに負ける要素が見あたらない。


 まだ、ネクサスは才能が開花していない。

 その状態で、私に勝てる訳がない、これはネクサスもわかってるだろうし、私もわかってる。

 両親だってわかってるはず。


「なあ、確か氷羅って実年齢はいくつだっけ?」

「実年齢、という意味は分からないけれども。……私が、【人間】として認識されてからっていう意味かな?」


 戦場で世間話。

 こんな緊張感がまるでないことができるのは、私の立場だから。


「そうそう」

「最低でも22歳じゃないかな。でも調整とかいろいろあったし、確かなことは調べてもらわないとわからないかも」

「そうか」


 私は「人間」なのかどうか、そんなことはべつに大した問題じゃない。

 人間と変わらない姿をしているんだから。


 そして、私は。



 紛れもなく父と母の遺伝子を受け継ぎ、ネクサスの姉である。

 それだけで、今はいい。

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