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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第1部:第1章
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第29話「第1回当日4」

「半ば強制的にっていう状態にはなってしまったが、この学園に入ってみてどう思う?」


 親父はどうやら俺に質問をしているらしい。

 ほとんど「可愛い生徒が多い」という不純な理由から入学を決意して、後付のように俺は自分の目標を決めた。


 この学園は楽しいかって言われたら……。


「うん、楽しいよ。入学してよかったなって思ってる、ありがとう」

「それはよかった。……再建されているとはいえ、天王子学園は俺とれいの母校だ。姉弟きょうだいそろってここに在学しててうれしい」


 うん、そりゃあそうだろうな。

 そして、俺は両親がこの学園のことをすいている理由も何となくわかっている。


「んー、澪雫みおちゃんは?」

「澪雫なら、涼野流剣術の【同盟アライアンス】にいると思うけど」


 母親がそう聞いてきたため、俺は答えた。

 と、母親かなり「あっちゃー」という顔をしている。


 ん?


「あそこは入っちゃダメなの。正直あそこ評判良くないでしょ?」

「うん、澪雫が後悔してた」


 あら、母親はやっぱりすべてお見通しなのか。


「あそこはダメ、とは?」

「ええと、零璃君おはよ。……えっとね、まず涼野流で固まるっていうこと自体がおかしいかなっておもうよ」


 どうも、涼野流は『チームの補助』を得意としているのだという。

 そして、同じタイプが一緒に居たら大体は干渉しあって思った以上にいい結果が出るわけはないのだという。


「そもそも、涼野流は個人の実力を上げていってるから、仲が悪いし基本的に」

「それを、母さんはどうしようとも思わないのか?」

「思う思わないじゃなくて、私があれこれしきっても彼女たちは不満を持つだけ。自分たちで気づかなきゃ。なんでも指示を受けないと動けないなんてただの機械人形ロボットじゃない」


 ……なるほど。

 うーん、しかしどうやったら脱退させられるのか見当がつかないな。


「同盟脱退は基本的にできないねー。まあ、例外の一つとして一番簡単なのは……リーダー同士の承諾だけど、絶対にそんなことあそこはしないだろうし。私だったらするけどねー……、あとは……」


 これは姉さん。

 姉さんは【同盟アライアンス】のリーダーだし、色々と知っているんだろう。


「ネクサスが新しい【同盟アライアンス】を作って、あそこから引き抜けばいいんだよ!」

「えっ」


 でも、【同盟アライアンス】ってたしか5名以上は必要なんじゃなかったっけ。

 あと、引き抜きってなんだ、引き抜きって。


「つまり、リーダー同士が、一人を取り合うってこと。……そうだ、ネクサスがあの伝説の【同盟アライアンス】を再建してよ」

「あ、それ面白そう」

「……いいな」


 姉、母、父が俺に無茶ブリをしている。

 そんな物作ったら、絶対に俺は学園のありとあらゆる生徒を敵に回すだろう。


 それでもいいのか? まあいいけどさぁ。


「なんだっけ、【ソキウス】だっけ?」


 父親の作り上げた【伝説】の同盟、【ソキウス】。

 なんで伝説って言われているかと言えば、20年前活躍した人のほとんどがこの同盟にいたからだ。

 勿論、そんな恐れ多い名前をほかの人がつけようとするわけもなく、姉さんの話によるとどうやら暗黙の了解で【ソキウス】という名前は使用不可になっているらしい。


「王牙、別に校則では決まっていないんだろう?」

「決まってるわけないだろ」


 と、いうことだ。

 俺は頷いて、とりあえず姉の方に手を伸ばした。


「ん? 何か欲しいものでもあるのかな?」

「とりあえず、俺は魅烙みらくがほしいかな!」


 魅烙、零璃、俺、あとは痕猫あとねこ刑道けいちにも声をかけてみよう。

 あと一人、どうしようかな。


「名前だけなら貸そうか?」

「あ、赫良かくらさん」


 これで5人。

 うん、で澪雫をこちらに引き抜けたら、赫良さんは姉さんに返せばいいのか。


「……ねえ、何か澪雫ちゃんを引き抜ける前提で話をしているような気がするんだけど、気のせいかな?」

「気のせいじゃないぞ」


 わぁ凄い自信、と零璃が目を張っているが別に大したことじゃない。

 母親の門下生ということは、母親よりは弱いのだ。

 そして、確実に言えるのは絶対に姉さんよりも弱いということ。


 それなら、俺はとりあえず負けるわけにもいかないし、負けるつもりはない。

「随分と強気で来たなぁ」

「自信過剰はいけないと思っているけど、俺は自信に伴う実力もちゃんと持ち合わせているつもりだぞ」


 俺が言い切ると、零璃はなにか言いたそうに口をパクパクさせていたが、すぐにそれをひっこめる。


「まあ、親ばかっていわれるかもしれないけど。氷羅もネクサスも強いぞ」

「間違いないね。だって私たちの子供だもの」


 遺伝子的に「強い」といっているようなものだし、最初は弱かった俺でも努力でここまで来るとはできた。

 しかも、親父に言わせたら俺はまだ強くなる余地があるという。

 それなら、手加減をする理由がみつからない、だろう?


「とりあえず、俺はこの一戦で大きな戦果をあげるよ。零璃と一緒にな」

「……うん」


 よし、やる気十二分。

 あとは、試合開始を待つだけだな。

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