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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第1部:第1章
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第27話「第1回当日2」

 ヘリコプターをおりると、俺と零璃れいり王牙おうがさんに一つずつ、腕時計のような何かを渡された。

 最初は本当に腕時計かな? とも思ったのだがどうやら違うらしい。

 画面に移された文字は、『学生証をかざしてください』。


「なんだこれ」

「公式試合では装着を義務付けられている装置。支給品だけど試合が終わったら回収、わかった?」

「ていうか、かざすだけでいいんですね」


 零璃はこれがなんなのか、という疑問よりも構造がどうなっているのかを知りたいらしい。

 なぜだ。理系なのか、零璃って。

 ああ、理系か、そうだったな。


「分解したくならない? こういうの見てると」

「ならない」

「えぇ?」


 零璃、ちょっと変わってるが……。

 これはこれでアリだな、って俺は何を考えてるんだ。


 うーん、うーんと唸りながら支給品とにらめっこしている零璃を「分解されたらかなわない」と見かねてか王牙さん。

 あとでマニュアルを渡してやる、ということでこの場をいさめる。


 ていうか、マニュアルは公開いいのか。

 構造さえわかっちゃえば、零璃が次は短時間で分解および改造しそうで怖いなぁ。

 零璃の技術力は分からないが、まず構造を気にするところから考えるにそういう系好きそうだな。


「とにかく、それを公式試合中は絶対につけとけよ。外したら……」

「外したら?」

「外したら、最悪失格になる」


 え。そんなに大事なものなのか、これって。

 ちょっと思ったよりも大事なものだった。多分、そんなに厳しいものなら行動の記録装置とかそういうものだろうな。

 そりゃあ大事だ。あと零璃に分解させちゃいけないやつ。


 まあ、さすがに学園側もそういうことを考慮しているだろうけど。


「で、学生証をどこにかざせばいいんだ?」

「画面の上」


 王牙さんの言うとおりにすると、ピロンっと音が鳴って認識された。

 表示がいろいろあってややこしいが、簡単に説明すれば俺の基本情報と今回の戦績がリアルタイムで表示されるんだろう。

 

 となると、なかなか凄いテクノロジーを使っているのかね。

 よくわからないな、俺は零璃みたいに機械に詳しいわけでも、別に機械が好きなわけでもないから。

 むしろ、どちらかというと嫌いな方かもしれない。


「おおー。ということは、学生証の方に認証が……」


 ああ、また零璃がぶつぶつと訳の分からない話をし始めた。

 俺はもう知りません。


「王牙さん」

「ん?」

「ここの地図って、公開されてる?」


 俺が王牙さんにきくと、王牙さんは頷いて施設の方を指差した。

 どうやら、普通に支給されるらしいな、地図も。


 それもそうか。

 支給されなかったら、どう見ても一年生よりも上級生のほうが有利になる。

 そもそも、能力的なものでも元々上級生が強いんだから、小なんだろうな。


「どうしたの、ネクサス君。地図なんて必要?」

「この巨大なフィールドを地図なし? 本気?」


 あ、すみませんでしたと零璃は気づいたようだ。

 ていうか、この人工島広い。広すぎ。

 いったいどれだけの広さがあるの? 本当に疑問が多い。


 だから、俺は情報を欲する。

 情報はこういう時、武器にもなりえる。


 俺と零璃の能力の相性上、森林などっていう入り組んだ場所は好ましくない。

 できれば、隠れる場所もあってある程度見渡せるサバンナみたいな場所があれば。

 理想なんだけど、どうだろう。


「廃墟とか、ぶっ壊しても構わないのか?」

「べつに。実戦で廃墟壊す壊さないとか関係ないし」


 そうか、実戦を想定してるのか。

 ……そりゃあそうだわな。最近はテロリストに対する警戒が高まりつつある。


 20年前、戦争の引き金になったのはテロリストなのだから、当たり前か。

 いつ起こるかわからないことは、起こる前兆があるときから摘み取ったほうがいいんだろうけど、さすがにそんなことは不可能。


 なら、できるだけ早期に対応できるようにということか。


「ありがとう」

「贔屓しては教師的にどうかと思うが、俺個人の考えではお前らに期待してる、頑張れ」


 王牙さんは、爽やかな声でそういうと。

 俺たち二人を、施設の中に案内した。








------------------------------------





 私が天王子学園の校門についたとき、そこにいたのはリーダーだけだった。

 リーダーの名前は、言わずと知れたこの学園最強のゼニス、理創源りそうげん氷羅ひょうら先輩。

 決して、その顔からはとても彼女がゼニスだなんてわからない。

 彼女を、ゼニスだと証明しているのはおそらく、顔や体型の容姿要素じゃなくて彼女から発散されるオーラだ。


 冷たく、爽やかながらどこか鋭さを持つ、そんなすぐにわかってしまうような独特のオーラ。


「あ、おはよぉ」

「おはようございます、リーダー」

「魅烙ちゃん、調子はどう?」


 調子は、と聞かれ私は、もちろん少し戸惑った。

 昨日は興奮で眠れない、みたいな状態じゃなかったし寧ろ早く寝た。


 だけど、この身体に来るわずかな震えは何なの?

 ……氷羅さんのオーラに反応しているのか、それとも私がほかの何かを。

 うーん、よくわからない。


「それにしても、リーダー早いですよね」

「うーん、リーダーだからこそ一番早く来るべきだと思ってるよ。ほかの人たち待たせちゃダメでしょ、リーダーなのに」


 この人、いい人だ。

 私は言葉一つでそう判断できてしまう。


「リーダーはみんなを引っ張っていく存在だよ。みんなの揚げ足を取ってどうするの? って感じだよねー。……この学園の【同盟アライアンス】のリーダーは、揚げ足を取って自分を優位に立たせようとする人の方が多いけど」


 そう、皮肉っぽく呟いた氷羅さんは、少しだけ悲しそうな顔を浮かべる。

 その顔は、何を嘆いているんだろう。


「まあ、暗い話はこれで終わりっ。どう? 武器の調子とかは万全?」

「はいっ」

「それはよかった。特に魅烙ちゃんは銃だから、手入れはこまめにしているのかな?」

「そうですね」


 私は、自分の肩に担いでいた細長いケースから、一本の銃を取り出す。

 いや、これは正しくは銃じゃない。


 でも、一般的には銃って認識されてるから、銃でいいや。


 

 

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