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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第1部:第1章
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第24話「試合前準備2」

「うん、本当にすまないが至近距離にならない限り防御だな」

「えぇー?」


 零璃れいりが不満そうに声を漏らすが、彼女……じゃなくて彼の能力を考えたらそっちのほうがいいだろう。


「零璃、能力名は?」

「【金属加工メタリークラフト】だけど」

「うん、防御だな」


 練習すれば、万能型にはなれるんだろうけど。

 普通に考えてみれば、今の体力が少ない状態の零璃に対してはどう見ても防御の方が手っ取り早い。


「俺が攻撃を担当して、そのあいだに零璃が頑張ればいいじゃないか」

「うん、ボクが頑張ればいいのかな? ……えっと、えっとぉ」


 俺は、零璃に無理しない程度で周りの戦力を確認してくれと指示を出す。

 自分の身体くらいは自分で守れるだろう。大抵の敵は俺が払えばいい。


「ところで、ネクサス君の能力の威力ってどうなのかな?」

「やってみる?」


 俺は少し考えて能力を抑える。

 これは王牙さんみたいに消してしまう可能性が有るから、というわけではなく、俺の得意分野は広範囲を吹き飛ばすものだ。

 そのため、この子乗せまい空間の中で全開したら、俺は大丈夫だろうが俺の周囲まで影響を及ぼしかねない。


「なあ零璃」

「ん?」

「零璃って力を込めるときどうやって発生する?」


 零璃がずっこけた。

 もしかして、さっきの王牙さんのせいで発音忘れちゃった? と彼は俺に訊く。


「いや、俺の両親は同一の『属性能力』でも、発声してどういう効果をもつのかちゃんと分類されてたからさ……。零璃はそういうこと教わらなかったか?」

「ボクは形状変化系だからねー、言った方が不利になるから言ってない」


 あ、ということは教わったことは教わったんだ。

 まあ、零璃は『属性能力』をほぼ扱えないからいいのか。


 ……ほぼどころか、下手したら母さんよりも使えないかもしれない。

 そのかわり、『特殊能力』の方がずば抜けて応用力の高いものになっている。


 能力名は【金属加工メタリークラフト】だが、彼の能力はそれだけに止まらないのだ。

 加工だけではなく、金属をそのまま創造することもできる。


 この真実を知ったら何人の先輩が彼を取り込もうとするんだろう?


「そんなことはどうでもいいや」


 俺は無言で左手を薙ぐようにして右から左にスライドさせる。

 と、かなり拡散されたものの吹雪は舞い起こり、ダミーが弾け飛ぶ。


 充分にテレポート対象程度のダメージは与えられているようだ。

 まあ、そらそうなんだが。


「寒い」

「知ってる」


 寒いとか言われても。なぁ?





 そして自室。

 今日は魅烙みらく澪雫みおも、かなり遅くまで訓練をすると言うことで現在二人である。


「澪雫さん、大丈夫かな?」

「何が?」

「ほら、なんか加入に後悔しているようなそぶりをしてたでしょ?」


 確かに。でも、彼女なら心配いらないような気もする。

 母親の育てた一番弟子だ。何で化は分からないが、俺は彼女を思った以上に評価している。


「そういえば、試合会場ってどこになるんだろう?」


 確かに。現在参加する予定人数は4万人程度だという。1年の様子見関係の人間が多いんだな。

 それだけの人を収容し、さらにドンバチさせる場所はさすがにここでは無理だろう。


「どこかの島に船か飛行機で移動、とか結構あり得そうだな」

「それどころか、テレポート技術がこの学園にあるんだったらそれを使って一斉に転移させそうだね」


 それもそうか。零璃の言っている方法もいけるのか。

 うーん、どうなんだろう? 日本のこの技術は、どこからのルーツかだいたい予想はついているんだけど……。


 いいか、別にこのくらいの話は零璃も知っているだろうし。

 いや、知らないのか?


「ふぁぁ、眠いね……」

「そうか?」


 ああ、零璃は体力がないんだったな。

 そのせいで、能力を使うと体力が大きく削られていく。


 零璃の体力増強を一番に考えた方がいいのか?

 今回の試合が終わったらそうしようかな。


「公式試合は、1ヶ月に1回から4回、か。……零璃聞いてる?」

「……聞いてる」


 っと、俺の方に寄りかかってくる零璃。

 思ったよりも身体が柔らかく、こてんと倒れかけたその首は俺の肩に乗る。


 寝かけてるな、仕方がない。


「寝てもいいから、説明だけしておくぞ」

「むにゃー」


 と俺は天王子学園の、年間で公式試合に関係する事柄を説明していく。

 こくん、こくんと寝かけながらも、必死に目を開けようとする零璃は見ていて可愛らしい。


 って、この人すっかり忘れていたが男だよな?

 漂ってくる匂いがどう見ても女なんだが。

 ちょっと身体検査して確かめなければ。


 こんなに主張しているのに、じっさい『ついてなかった』とかやめてほしいものだ。


「むにゃ……すぅ、すぅ」


 あ、寝た。

 どうするべきかな、とりあえず起こさないように抱き上げてベッドに乗せておくか。


 と同時に玄関をノックする音。


「こんばんはー……、遅くなっちゃった、ごめんにゃ?」

「零璃が寝てるからしずかにな」


 魅烙と、後ろには澪雫もいる。

 俺は2人を招き入れ、ふと気になって外を見る。


 ……闇の中に、こちらを向いている人が1人。


 ふむ。


「ちょっと部屋の中で待ってて」

「んぅ?」

「気になることがあってな、ほら入った入った」


 最悪、乱闘になるのか?






「はぁ、疲れた」

「どうしたんです? なにか気になる事って?」


 十分後、俺は手を払いながら自分の部屋に戻った。

 相手は小太りした1年だったが、とりあえずボコった。

 なんていうのか、微妙な人だったため、ちょっと後回し。


 顔と声は覚えたから、そのあと考えてみよう。


「いや、何でもないよ」


 あの太った男、説明会の時に教室にいたっけ?

 俺はそんなことを考えつつ、寝ている零璃を悪戯するようにつんつんしている魅烙を、ほほえましく思いながらも離す。


「で、今日はどうだったんだ?」

「そうですね……週末になって、試合が終わったら辞めます」

「はやっ」


 思ったよりも大丈夫じゃなかった。

 そんなにヤバいところなのか、あそこって。


「なんていうか、師範がみたら頭を抱える程度には酷かったです」

「あ、それはヤバいな」


 母親のことを、俺を含め誰よりも知っている澪雫のことだ。ヤバいっていったら大抵ヤバい。

 そりゃあ辞めても仕方がない。


「で、そこからはどうするんだ?」

「【小組ファーチ】は4人までですよね?」


 あ、やっぱり?

 そうくると思っていたため特に驚くこともなく。


「たしか、【小組ファーチ】でも大氷河いるんですよね?」

「一応、ペアだから特に意識はしてないけど俺がなってるな」


 今回、俺が攻撃を、零璃が防御を担当することにした。

 零璃の体力がどのくらい続くか分からないため、生き残ったばあい最後らへんは二つとも俺が担当する事になりそうだな。

 人を1人かばいながら戦うことの難しさを今回は、ちゃんと体験できそうだ。


「とりあえず、今回は敵同士ですね。戦えることを楽しみにしています」

「そうだな。魅烙は?」

「最初は自由行動だって。……タイプの似た先輩についてもらって、別にリーダーを守らなくてもいいからって」




 ……姉さんらしいな。

 ある程度自由にさせて、彼女たちを分析しようと言うことか。

 で、姉さんを守るのは……。



 まあ、赫良かくらさんだろうな。





------------------------------------




 【楽園エーリュシオン】本部。


「ねえ、赫良くん」

「ん?」

「去年の公式試合で、一番『最先制ファーストブラッド』を多く達成した人は誰?」

「数える意味もなく魂痕こんこんだろ」


 赫良くんが、私の質問に即答する。

 魂痕、っていうのは誰なんだろ?


「ああ、しらないのか?」

「ん」

「ソロで戦ってる3年だ。公式試合が始まって1分以内にはほとんどの場合、1人ふっとばしてるな」


 ソロ、の方が動きやすいのかな。


氷羅ひょうらは、ソロの経験がないもんな」

「そうだね、……最初の戦いから、赫良くんとペアだったから……」


 今はほとんど使われていない【小組ファーチ制度】、一年前もほとんど使われてなかったけど。

 どうなんだろ、あれ結構便利だよね。


「今回の第1回、使う人はいるのかなぁ?」

「そもそも、そんな制度知らないっていう可能性もあるよな……」


 私は校則を隅から隅まで読んで発見したから。

 他の人は、読もうとしないんだろうなぁ……。

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