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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第2部:第5章
198/199

第198話 「ゼニス戦」

「やっとここまでこれたんだね、ネクサス。けれど、ここで私に勝利したとしても、それは結局この学園という小さな箱庭での頂点」

「……この先もっと広い場所に行く。けれど、それはまず、姉さんを超えて。……父さんの領域に達することが最低条件なんだよ」


 俺も、姉さんも。ギラギラと目を輝かせてそう言った。

 そもそも簡単な話。姉さんをまず超えて【頂点ゼニス】に達しなければならない。


 それには【神力ゼニス】が必要で、俺はそれを手に入れることがでっきた。


 ゼニスが変わるかもしれない、ということで、スタジアムには多くの観客が集まっている。

 いつもどおりの【第1 刃夙ハツトドーム】であった。

 しかし、いつもと違うのは……人が集まりすぎて、席が埋まっているだけでなく、立見席もいっぱいなことだろうか。


 姉さんは俺を見て、嬉しそうな顔をしていた。何処までも淡いその瞳を俺は見つめつつ、俺は集中力を上げてゆく。


 目の前の戦いが一番なのだ。俺にとっては。

 俺の夢を、目標を、達成する第一歩になりうる戦いが今ここからはじまるのだから。


『両者、準備』


 王牙さんの声が聞こえ、俺は準備を始める。

 今回は自分も姉さんも、他の武器を使わずに己の力のみで戦うことを承諾してくれた。


 自分の持つ属性能力と、【神力ゼニス】。同じ属性、同じ系統の能力で、純粋に勝者を決める。

 派手さは全く無いのかもしれない。けれども、観客はみんな理解してくれるだろうから。


 俺は、これで構わないと思っている。


「覚醒もなしで。はじめよう。姉さん」

「そうね。……はじめましょう、ネクサス」


 ここから、俺の本当の戦いだ。

 学園内で異次元の強さと言われてきた姉さんとの戦い。


 ずっと憧れてきて、目標にしてきた父さん。

 神に愛され、才能に恵まれた「天才」であり、世界の救世主である父その人。

 その遺伝子を、子である俺よりも強く引き継いでいる人工生命体である姉さんに、俺は今から挑むのだ。


『これより、ゼニス決定戦を始める! 双方再準備!』


 高らかに宣言される中、俺は意識を更なる高みへと集中させる。

 【神力ゼニス】を、さらに。さらに自分の内側から取り出すようにして属性能力と一体化させた。


 今、開放すればスタジアムを吹き飛ばす程度の力は持っているだろう。だが、それを絞る。壊す必要はない、倒すべきは目の前の少女、姉さんであり、この会場ではない。




---


 観客席で、私……霧氷むひょう澪雫みおは、目の前の試合の開始を待つ他ありませんでした。

 出来れば、彼の隣で戦いたかったという気持ちが無いわけではありません。そもそも、心に決めた誰かのために戦おうと想って、私は師範に着いて行くことを決めたのです。


 最初から、意識していたのかもしれません。ネクサスくんのことを、私は何時から気になっていたのでしょうか。

 私にはわかりませんが……、いえ。


 そんなことはどうでもいいのです。

 私はネクサスくんにあこがれていました。ずっと、その心の強さを持ったネクサスくんのことを。


 心の強さで、私の命を救ってくれたことも、一生忘れることはないでしょう。

 だからこそ、支えていきながら、隣で戦いたかったのです。


 けれど……。

 この学園にいる間は、それが出来なさそうだから。


 私は能力者としては底辺に近い身分です。ほんの数カ月前まで、属性能力は使えない状態だったのですから当たり前ですが、それでも「特例中の特例」である師範のような存在になりたかったのかもしれません。


 目標はできました。けれど、師範には全く届きません。

 それでも、私は剣を手放せませんでした。


 私は、能力者として生きていくことを決めたからです。

 同じ御氷家の分家である「涼野」と「霧氷」、違いがあればまだ、私が多くの部分で弱いからでしょうか。


 それも、ネクサスくんと一緒に居られたら、何時か……。


 克服できそうな気がするからこそ、私は前を向き続けたいのです。


 試合がもう少しで始まります。ネクサスくんは本当に強くなりました。

 私よりも、何歩も先を行っています。


 次は、私が追いかけましょう。

 目の前の、少年を。






『試合……開始!』


残念ながら、戦闘は全カットです。

次回最終回。

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