第194話 「頂点《ゼニス》への生き残り戦 2」
俺は一切の容赦なく、視界に入る敵全部に対して属性能力を発動する。
人に容赦はあっても、能力は容赦を許してくれない。
その言葉を裏付けるように、俺の発動した吹雪は、氷の塊は、そのまま敵にぶつかり、被害者は二転三転と地面を転がる。
「刑道、そっちはどうだ?」
刑道は、フィールドを大きく隆起させている。
俺も彼も、どちらも直接手はくださずとも、敵が勝手に自滅している有様である。
こんな試合をみて、何故熱狂しているんだろうか、観客席は。
このくらいオヤジの世代、普通だったんだろうと考えるとレベルの低下を感じる。
「よし」
……よし、俺はこれで終了。後ろを向き、ちょうど刑道も終わったのか、こちらを向く。
ここから1対1だ。
今まではずっと仲間として来たが、今日こそ好敵手として向きあおうじゃないか。
「お前とずっと、戦いたかった」
「俺もだよ」
刑道の言葉に頷く。確かに、ずっと戦ってみたかった。
2年生のなかで、もっともな有力候補なんだから当たり前か。
今まで、ずっと激突を待ちわびていたんだ。
俺は後ろに体重をかけて蹴りを繰り出した。遠心力を利用して回転し、同時に右脚へ氷属性を有りったけ注ぎこむ。
右脚が白く発光し、次の瞬間それは吸い込まれるが如く鳩尾へ。
しかし、それをすでに。
彼は見切っていたのか、バックステップで避けて。
拳が飛んできた。
硬化させているだろうから、完全に鈍器だろうな。
そう判断して俺はそれを軽くいなすと、彼から一度距離を取る。
振りぬいた拳圧で、地面に亀裂が入ったのが確認できて。
俺は、当たらなくて本当に良かったと思った。
さて、どうやって攻めるか。
スピードに、ものを言わせてみるか?
周りが一段階、遅くなったのを感じた。
自分が速くなったのは確かだろう。同時に感覚も加速し、全てが冗長に……認識が移る。
「く、そ」
ははは、刑道の言葉すら遅く感じるな。
俺はほくそ笑みつつ、彼の下へと殺到する。
同時に、右手へ武器を生成。いつもどおりの斧槍ではなく、片手剣を創りだす。
そして、振るのではなく投擲。
属性のことも考えて、恐らく亜音速で吹っ飛んでいったんじゃないかな、と。
風を切る音が、到達した後に遅れてやってきた。
ソニックブームを生じさせながら、一直線に刑道の心臓へ。
模擬戦だから死なないが、これで一撃必殺になりえるだろう。
「ほう」
しかし、こつんとしょぼい音がしたかと思うと、剣はすでに霧散していた。
……押しつぶしたのだ、亜音速で飛んできた剣と、タイミングを合わせて刑道が。
「うっそだろお前……」
おい、嘘って言えよ。怖すぎるだろ流石に……。
新作の学園モノを上げました。
タイトルは「四煌の顕現者-八龍ゼクスの学園記録-」です。
↓
http://ncode.syosetu.com/n0245dc/
あと、ゼニスが終わったら次のお話も書きます。
タイトルはもう決まってて、「初焉終のウェルザンド」になると思います。
ネクサスの息子のお話です。