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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第2部:第5章
193/199

第193話 「頂点《ゼニス》への生き残り戦 1」

「勝ち逃げのような形で、学園を一時的に休んでしまい、申し訳ありませんでした」


 全学園の生徒のうち、殆どが集うスタジアムの壇上で、ぺこりと頭を下げるのは俺の姉であった。

 最強の帰還、と誰がいっただろうか。聖女の凱旋、とだれが表しただろうか。

 俺には個人を特定などできなかったが、そんなことはどうでもいい。

 

 となりで、澪雫みおがこちらを見つめている。

 

「どうした、澪雫」

「いえ、なにも」


 彼女はそういったが、恐らく俺の表情についてだろう。


「私は心配です。無理をするんじゃないかなって」

「無理はしないよ」


 壇上では、「どう責任を取る」とか「勝負が怖くなったのか!」とかヤジが飛ぶ中、姉さんがマイクを持って淡々と処置について説明をしていた。

 嗚呼、かなり顔色が良くなった方だと思う。

 

「今からここで、次期ゼニスの選抜を行おうと思います」


 言葉に、全学園生徒が口を噤んだ。

 声が完全に消えたスタジアムで、姉さんは言葉を続ける。

 

「ルールは簡単です。【ゼニス】になることを希望する人以外は観客席へ。希望する人はここに残ってください。希望者全員で生き残り戦を行い、勝利者と私が、明日の正午ここで、戦います」

 

 簡単でしょう? と問う彼女に、声をあげる人は誰もいない。

 いや、一人いた。俺に問いかける澪雫だ。

 

「では、私は観客席へいきますが。ネクサスくんはどうします?」

「無論残るよ」


 澪雫も参加すればいいのに、と提案してみたが。澪雫はすでに観客へ行ってしまった。

 彼女を皮切りに、他の生徒も多くが観客席へ向かっていく。


 それにしても、こうみると志願者っていうのは少ないんだな、と。

 

「200人くらいか」


 6万人も生徒がいるというのに、残ったのはそれだけか。

 思ったよりも臆病者チキンが多いらしい。

 まあ、仕方ないか。

 

刑道けいち

「ネクサスは最後だ」


 目の前にいる小柄な少年は、俺にそう言ってくるりと踵を返す。

 

「後ろは任せた」

「後ろから刺されるぞ?」

「それは困る。楽しみがなくなる」


 その声は、本気だな。

 ならいいか。俺も半分手伝うことにしよう。

 

「皆さん準備はいいですか?」


 一泊置いたあと、スタジアムに光が充満した。

 

 

 

ーー




「うーん、やっぱりあの二人かぁ」


 壇上でつぶやいたのは、氷羅であった。

 目の前で行われている、試合というよりは殺し合いを、じっと見つめている。


「あのね? 何人でかかってこようとも、ここは無理だよ?」


 隙を見て自分を、襲撃してくる生徒たちを蹴散らす。

 そもそも、氷羅自身は1歩も動いていない。薄く彼女に張られた吹雪の壁に、誰もが圧倒されている。

 

「貴方たちじゃあ、やっぱり力不足なんだよ」


 そう言い捨てると、再び戦場に目をやった。

 彼女の目には、広範囲攻撃で他を圧倒する2人の姿が写っていた。


「ほらほら、あそこに突っ込んでいったほうが。チャンスはあるんじゃない?」

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