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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第2部:第5章
191/199

第191話 「冷とネクストの物語」

 あるところに、「剣聖」と呼ばれている少女が居た。


 名前は「涼野すずのれい」。


 少女は絶世の美少女で、容姿だけを見れば好きにならない男は居ない。

 しかし、少女は孤独だった。自分の持っていた剣の才能と、習った剣の力。2つが見事にマッチしすぎて誰も寄せ付けない。


 その結果、少女は「学園」に入学する前の中学生時代、能力を持たない一般人と混じっていながら「化物」と呼ばれ続け、不登校になっていた。


 不登校でやることは何もない。ただただ、剣の腕を磨き続けることで16の時点で「剣聖」の称号を世界的に手に入れる。

 しかし、やはり孤独であった。賞賛する人は山ほどいても、彼女と関わりを持とうという人は少なかった。

 いつ何時も剣を肌身離さず持っている彼女は、いつしか「触れれば斬られる」と根も葉もない噂を立てられる。


 そこにつけ込む少年が居た。彼女はどれだけ雑な扱いを受けようとも、自分に「触れてくれる」彼を信じ続けた。




 しかし、それは「学園」に入学するまでであった。

 能力者のみの「学園」に、少女は能力の才能がほぼないまま、入学する。

 自分よりも強い人がいくらでもいた。能力の不得手を剣で補った少女は、そして補いきれない実力差を持った少年と出会う。


 それが、ネクスト・アルカディアであった。

 

 少年は、能力の実力に特化された人間。

 能力に限って言えば、誰に負けることもない。教師には勿論、世界の実力者に大して対等以上の勝負を繰り広げ、最終的には対戦相手を叩き潰してしまう。


 彼には脚力ももっていた。誰にも負けない速度を持っていた。

 それらを極め、導き出した「答え」を証明するかのように戦う少年に、少女は惹かれる。


 何より、彼は冷を否定しなかったから。


 冷は中途半端な存在だった。能力者視点で見れば、彼女は完全に不完全なものだった。


 能力が使えない。それこそ全くと言っていいほど使えず、AからZの格付けでいくとするなら容赦なく最低ランクだろう。

 だが、一般人……能力を使えない人間たちからすれば、その身体能力、反射速度、直感など全てが人間レベルではなかった。


 性格がいくら良かったとしても、それは変わらない「認識」の壁である。

 蔑まれ、または「化物」と恐れられ。


 それが自分の歩む人生だと感じていた少女に、ネクスト・アルカディアという存在は全てを否定してみせた。


 そして、彼女の全てを肯定したのだ。


「隣を歩け」


 と、彼女を色眼鏡で見る人間を自分自身の実力で退け、冷を認めさせる。

 それが彼にできる最大限のことであり、彼は実行し続けた。







「世界を敵に回しても、君を守る」


 この言葉を言える男性は多い。


 しかし、それを実行できる男性は少ない。


 ネクストは、それを実行できる人間であり、同時にそれを18の時に実行してみせる人間だった。









「で、この話がちょっと漠然としすぎてよくわからないんだが」


 俺は、寝室でつぶやいていた。

 先ほど、ネロが俺に話をシてくれた涼野冷とネクスト・アルカディアの物語だが、なんていうか。

 ダイジェストか何かだろうか、と判断してしまうくらいには色々わからない。


 でも、母親の過去はよくわかった。

 なんだか、ちょっとひどい話だなと思う。


『ホンの20年前くらいまでは、そういう世界だったぞここ』

「ほんとに?」


 今の制度はほぼ「全て」、親父とそれに先導された各国の有力者ときいて俺は正直驚いた。


 うーん。やっぱり、よくわからなすぎて怖い。

  

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