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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第2部:第5章
188/199

第188話 「醒力:AWP」

 速い。


 試合開始とともに私はそう感じました。彼の速度が、何もかもが、こちらの今まで見てきた中で一番速いということが、すぐに分かる程度には。


 今まで手加減していたのでしょうか。たしかに、この速度で相手に突っ込めばそのまま殺してしまいそうです。能力に制限がかけられても、生身の身体能力に制限はかけられません。


 もっとも、能力面の制限も、「神力」を手に入れてしまったネクサスくんには関係のない話です。

 滅多に使いたがりませんが、その意味はわかっています。大切な時のためにとっているのでしょう。


 それが何か、私にはよくわかりません。ただ、どうしても色々と引っかかるところがあるのです。


「考え事は良くないぞ」


 後ろから声。一瞬だけですが、考えに気を取られて彼の姿を見失っていたようです。

 私にはどうしようもありませんでした。背中を強く蹴られ、能力の吹き飛ばし効果も相まって強く吹き飛ばされる。


 そのまま大きくローリングしながら私は前方へ吹き飛ばされていました。



 しかし、追撃がありません。



 ネクサスくんは手加減をしているのか、他の原因があるのかわかりませんでしたが、次に来るはずの攻撃がありませんでした。


 ネクサスくんの攻撃は残酷さを併せ持っています。能力の源が殺意と愛情なのですから当たり前です。


「大切な人への愛情を、敵には殺意として向ける」


 それは、大切な人を守る最強の楯になっていたでしょう。

 同時に、憎き人へは最凶の鉾となっているのです。


 矛盾とはよく言ったものです。しかし、ネクサスくんが複数いるわけではないので、それが実証されるかはよくわかりません。


「考えるな」


 感じろ、とはよく言ったものです。ただ、私の場合はそれが出来ます。

 私は自分の本能が赴くまま、剣を振りました。


 眼を閉じていても、寧ろ聴覚が自分を強化してくれます。

 左から轟音がしました。ネクサスくんが「生身」で突撃する風切り音です。

 そちらに目を向け、後ろへ一歩、小さく下がります。


 そこからいなすのは簡単です。

 質量の暴力だろうが、速度の暴虐だろうが、私には関係がありません。

 剣を走らせるのです。ネクサスくんが向かっていくのに合わせるように。


 力はほとんど使いません。


 ただ、押し出したい時にほんの少し、氷属性で圧力をかけるだけ。

 自分はその反動で少し後ろへ下がります、それだけで、ネクサスくんの突撃は大きく私から離れていくのですから。


「ぐぬ」


 しかし、ネクサスくんの突撃はそれだけでもかなりの威力です。うまくいなせて無かったらアレで病院送りかもしれません。

 師範の戦っている姿をきちんと見ていて良かったです。


 ネクサスくんの脚力は、ネクストさんのお下がりでしょうか。

 いや、お下がりではないですね。少なくとも、能力の載せ方がうまいです。

 今回は「神力」を使わないと宣言したということは、それを本当に使っていないということです。


 ネクストさんは、「神力」を使ってして超高速移動を可能にしています。でも、今回ネクサスくんが使っているのは普通の「醒力」です。


 ああ、「醒力」というのは私達の使っている属性能力ではなく、覚醒を可能にした人たちが、属性能力を使うときに無意識に使っている能力のことです。


 これはどこだったかな。ネクストさんの書いた本で読んだのでしたっけ。やはり現人神になれば、自分の知っている知識量も増えるのでしょうね。


 ちなみに「属性能力」は「Ability Power」なのでAPですが、「覚醒能力」も頭文字だけを取ると「Awake Power」なのでAPです。

 そのために、区別するために「AWP」になっているらしいですね。


 上位互換みたいで分かりやすいでしょう?

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