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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第2部:第5章
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第187話 「剣女の能力戦」

 ネクサスくんは、私の目の前に立っていました。

 顔の様子は落ち着いており、こちらをまっすぐに見つめています。


 審判役の影劉えいりゅうさんはオモオモとした顔つきで、私達をじっと見ていました。

 一体何が始まるのか、と心配しているようでもあり、良い研究材料だと期待しているようでもあります。


 とにかく、まあ私は戦いのい切符を手に入れられたのです。それが何を意味しているのか、未だはっきりとはしていませんけれど、ネクサスくんと試合をすることで、それもはっきりするのでしょう。


「準備はいいか?」


 影劉さんが私達に声をかけました。ネクサスくんは神剣を、私は以前授けてもらった師範からの剣を手に持ち、構えます。


 ネクサスくんの身体から、氷属性のオーラが容赦なく噴き出すのを感じました。これが絶対強者の証なのかもしれません。この前のアライアンス対抗戦で、ネクストさんもこれに似たようなものを噴き出していた記憶があります。


 もっとも、ネクストさんのものはこれと比べ物になりません。彼は現人神なのですから、息子とは言え未だ人間であるネクサスくんを比較対象にするのは酷というものなのでしょう。


「俺の父親は、母親に一度として勝てなかったってさ」


 ネクサスくんはそうやって、私を試そうと言うのでしょう。

 でも、師範は天才であっても、「努力型」の天才だと私は知っています。「剣聖」として剣術界に未だ君臨し続けている師範でも、毎日の鍛錬は欠かさないと聞いたことがあります。


 それなのに、私はリースさんの感覚を手に入れてから鍛錬を怠っていました。恥ずべき点です。これからは、これまで以上に力を入れないと。


 対してネクサスくんの父親であるネクストさんは、先天的な天才だったと。

 ネクストさんは、自分の感情をうまく能力に乗せられる人だと、師範からは聞いています。能力というものは、そもそもが感情から溢れ出る物らしい、というのが最近の見解です。気性の荒い人が強いというわけではなく、その感情が何に向いているかが大きな素質となっているのだと。


 ネクサスくんも、充分すぎるほど感情は載せられています。ですが何かが足りないのでしょうか。

 私にはよくわかりません。でも、ネクサスくんの隣を堂々と歩いて行きたいから。


「私は、かちます」


 勝算はあります。今までネクサスくんが戦っているのを見てきましたから。

 大体のパターンが有ることもわかっています。私の反応速度なら、ネクサスくんの攻撃をいなす程度は可能でしょう。そのままカウンターを当てられずとも、攻撃に向かないかぎり、涼野流剣術は体力を僅かしか消耗しません。


 能力が不得手な能力者や一般人が、能力者から身を守るために開発されたものですから。

 相手の能力にまされないのなら、相手の能力限界が来るまで耐えればいいと。


 その後、やれるだけ反撃すればいいという考え方だそうです。受動的な戦いですが、私はいいと思います。


「両者準備」


 影劉さんはさすがこういうことには慣れているようです。淡々と試合を始めようと考えているのですね。わかります。


 私は構えを取りました。ネクサスくんはこちらを向き、リラックスするように剣先を下に垂らしたまま、突進の体勢を取ります。


 緊張が今から、伝わってきました。

 師範と対峙したとき以上のものが底にはありました。


 それは何が問題か、大好きな人がそこにいるから。

 大好きな人と、こうやって戦闘ができる。戦闘狂的な考えかもしれませんが私はそれがとてもうれしいのです。

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