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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第1部:第1章
18/199

第18話「実力と才能3」

 前回のあらすじ。

 澪雫みおがいきなりヒロインになった。


「おまっ。ちょっと」

「どうかなされましたか?」

「ほんの昨日まで、俺のことを仇のようににらんでいるのはさすがに覚えているよな?」


 すごい手のひら返しだなぁおい。


 澪雫はにこっと眼を細めると、何とも言い難い顔でベッドの中に潜り込む。

 くつろぎすぎである。


「……あのー」

「シャワーはあっちで浴びてきたので、汗は大丈夫ですよ?」

「……俺の両親は最初っから恋人みたいな関係だったからいいけど、こりゃあ駄目だろ」


 俺の父親と母親は、それこそ例えれば……。

 運命に導かれて、自然な動きで結ばれていっただけ。


 最初からなぜか好感度マックスの状態で出会い。

 そのまま流れるような状態でいつのまにか、恋人になっていた。


 父親と母親っていうのは、そういう関係だからこそ短期間での関係を築き上げることが可能だったのだ。

 特にどちらも状況が状況で、待遇も他の人と違う。


「そういうことだ。無理でしょさすがに」

「最初の方は、それこそ師範の言葉を信じていませんでしたが。貴方が努力の上でその実力というところに感銘を受けたというか」

「だから切り替えはやすぎぃ!」


 それとも、私とは寝てくれないってことですか? と澪雫は心底切なそうな顔で俺を見つめた。

 いや、たしかに容姿だけみれば絶世の美少女なんだ。


 普通の男、というより普通の男じゃなくても。

 飽きるほど女を抱いてきたであろうイケメンがみても、おそらく彼女は別格といえるほど清純なんだが。

 なんか、違う。


 この状態、どうみても清純ではない。


「ああ、一緒に寝るっていっても、変なことは想像しないでくださいね」

「……想像したら斬られそうで出来ないんだが」

「ふふ、よく分かってるじゃないですか」


 よく分かってるも何も、母親の門下生だよこの

 剣を振る速度、マッハ越えがザラにいる涼野門下生の、一番弟子ですよ!?

 下手に手をだしたら命が無くなるだけではすまないだろう。


 ……普通の、能力者程度だったら、な。


「そうだ、話は変わるけど」

「はい?」

「第一回公式試合には出るのか?」

「出ますよ」


 即答である。

 すがすがしいほどまでに即答で俺の反応が一瞬遅れたほどだ。


「えっ、出るんだ」

「逆に、ネクサスくんは出ないんですか?」

「考え中」


 明日の説明を聞いてからにしようかな、と思っていることを俺は澪雫に伝えた。

 それに対しての澪雫は「ふーん」と興味がなさそう。

 つん、と唇をとがらせるその姿も麗しい。


 ……麗しくはなかった。可愛かったけど。


「私は、属性能力に秀でていなくても、上に行けるのかを確かめたいんです。師範みたいに」

「母親は強いって聞いてるよ」


 それこそ、能力では全世界最強を誇る親父を、一方的に剣でいたぶれるくらいとは聞いている。

 うん、それなら最強は母なんじゃないかって?


 比べる基準が違うんだよ……。


「……しゃべっていたら、眠くなってきましたね」

「うん、そうだな。……もう深夜だなぁ」


 時計の方をみると、てっぺんをすぎている。

 明日は学校だ、さっさと寝よう。


 と、俺が振り返ったら、すでに澪雫は眠りについていた。

 安らかな寝息も同封済み、俺にどうしろというのか。


 襲え、と。

 気づかれて、もしくは本当は寝てなくて俺が殺される感じじゃないのか?


「……師範ぅ」


 寝てる。

 そして、愛しい人を呼ぶわけでも何でもなく、まさかの師範呼び。

 これは俺にどうしろと言うのだ。


 レズを期待しろと言うのか。

 それとも、俺に改造されたいのか。




「……師範みたいに、つよく、なりたぃ」


 いや、それは違う。

 俺は寝言を入っている澪雫に対して、心の中で否定した。


 親父ははっきりといっていた。

 出会ってから数年、母親は全くもって強くなかった、と。


 たしかに戦闘力は強いかもしれない、技術面で世界一であり、【剣聖】という肩書きがあるのかもしれない。


「しかし、冷は。……ある意味、普通の女の子よりも弱かったぞ」


 親父のせりふが頭の中を駆けめぐる。

 そう。


 だからこそ、俺は魅烙みらくに虚勢を張ってほしくなかったのだ。

 同時に、零璃れいりやそこにいる、澪雫にも。


 ありのままの彼女たちでいてほしい。


 そのための環境は……。


 俺が、作ろう。






------------------------------------






「うわぁぁぁどうしようどうしよぉぉぉぉ!」

「魅烙ちゃん、落ち着いてよ」


 零璃くん、魅烙はどうすればいい!? と目の前にいる美少女はボクにすがってきた。

 さっきまで魅烙ちゃんはなきじゃくっていたけど、それをボクが慰めたけど……。


 うーん、ネクサス君のことになったら、周りの女の子はみんな不安定になるね。

 ……澪雫さんも、なんかさっきハイテンションだったし。


「嫌われたらどうしよう……」

「ふぅー、好きなんだね。ネクサス君のこと」

「うん、好き」


 うわ、即答だ。

 驚くボクにたいして、魅烙ちゃんは首を可愛く傾げた。


 まあ、しょうがない、のかな?

 ネクサス君から聞いたけど、魅烙ちゃんの家族って少々特殊らしいし。

 魅烙ちゃんが、ネクサス君を好きになるのもほぼ決まってることだってネクサス君は言ってたし、なぁ。


「どんなところが好きなの?」

「全部」


 これも即答……と、ボクは苦笑気味。

 悩んでも仕方がないけど、と魅烙ちゃんの頭をぽんぽんとはたくようにして、元気づける。


「ネクサス君、嫌わないっていってたから大丈夫だよ」

「……本当?」


 むしろ、あの調子じゃかなり魅烙ちゃんのことが好きなんだろうな、って予測できる程度には。

 好きなんだろうなぁ、これが両片思いっていうやつなのかな?


「大丈夫大丈夫」

「でも、朝、とか」


 たしかに朝は、修羅場になりかねないような気がする。

 澪雫ちゃんが、ネクサス君への好感度をガンガンに上げて接して入るみたいだし。


 それにしても、ネクサス君って親が親だから才能型だとおもったけど、努力型の能力者だったんだね。


「魅烙ちゃん。ネクサス君は、魅烙ちゃんが思ってる以上に魅烙ちゃんを大切にしていると思うよ」

「んぅ?」


 あぁ、可愛いなぁこの子。

 ネクサス君、こんなに可愛い女の子に囲まれてもそれに気づいて……はいるんだろうね。

 でも、やっぱり扱いが苦手なのかな?


 ネクサス君なら、多少気障な台詞を吐いて格好つけなくても、自然体で何とかなるような人なんだから。

 ていうか、少しだけ話をするだけでも分かる、素であの人はかっこいい。


「自信、ないなぁ」

「自信は後でついてくるものなの」


 ボクも、自信はないからねぇ……。

 新入生で自信のある人って、本当に限られてくると思う。


 ネクサス君とか洸劔こうき君とか、ネクサス君とか洸劔君とか!


「とりあえず、ボクはそろそろ寝ようかな」

「まって」

「ん?」


 ボクが振り向くと同時に、気が付けばボクは……。

 魅烙ちゃんの腕の中に、包み込まれていた。


「あぅ」

「本当に男?」

「男だよー!」


 わしゃわしゃ、と身体をまさぐられる。

 ……つ、付いてるし。


 付いてるし、ちゃんと戸籍上も男だもん。

 ただ、何を間違えたのかボクが女っぽくて、赫良かくら姉さんが男っぽかったからそのまま育てられたって言うか。


 鍛冶屋だから、正直そんなに関係ないしね。


「うーん、男だ」

「男だってばぁー!」


 スカートを履いても、違和感を覚えなくなったのはいつからだろう。

 ニーソックスに、ガーターベルトを付けても大丈夫になったのはいつだろう。


 うーっむ、覚えてないや。

澪雫さんがツンデレから、ツンデレデレデレになりつつあると思うのは私だけだろうか……。

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