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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第2部:第4章
170/199

第170話 「身の程」 

  簡単に言えば、それは自分がその宝具を扱いきれなかったということに集結する。格好つけてそれを召喚したまでは良かったが、相手がその根本を覆すような搦め手を使ってくるとは考えが及ばなかったのだ。

 すこしうごけば動くだけ傷が痛む。外傷は何もないのに、内側がすべて内出血しているように感じてしまうほどだ。

 

 しかし戦況はこちらに傾きかけている。宝具を諦めて覚醒した瞬間、透明であろうとも彼の動く気配が俺に情報として伝えてくれたのだ。相手はここで、こう動こうとしている。それがすべて視覚、聴覚に渡って注ぎ込まれ、慣れ始めた脳がそれを超高速で分別していく。

 その結果、俺は相手を捉えることに成功した。

 

「宝具はどうした?」

「俺には少し早かったみたいだ」


 相手の煽りには軽口で返し、さも余裕があるように見せる。残念ながら、後ろにいる澪雫には見抜かれているだろうけれど。

 それにしても、先ほど澪雫は確かに無理をするなといった。俺にはそう聞こえた。

 

 でも、無理をせずにはいられないんだ。ごめん澪雫、あまり忠告とか聞けなくて。

 

「レプリカがやはり、俺にはちょうどいい」


 SAS日本支部から物理的に飛んできた氷の属性宝を手にして、俺は再びそれを構え直す。

 やはり、これの方が持ちやすい。心なしか、自分の痛みも消えていっているように感じられる。

 

 もしかしたら、本物の属性宝が持ち主の命を削るとしたら、こっちは持ち主を回復させる能力を持っているのかもしれない。今までダメージを負っていない状態で呼び出していたから全く気づかなかったけれど。

 とりあえず2、3回試しに振ってみる。やはりこちらの方が動きやすい。

 

 そして相手の情報は視覚として頭の中に入ってきている。これは好都合だ。わかりやすいし間違えようがないのだから。

 

「いまから、一方的に試合を展開させていただく」

「はっ」


 この人は何を言っているのやら、と嘲っていた御氷一刻は次の瞬間、自分の拳が避けられたことに目を疑っただろう。

 こちらには全て「視えて」いる。相手がどう動くか、それらは予測できている。

 相手の動きさえきちんと理解できれば、怖いものなど何もないのだ。

 

 御氷一刻の拳……透明な上に氷属性を密かに秘めているそれを避けて、俺はその槍を突き出した。

 血までは透明にできなかったようだ、手を貫通した槍を引き抜くと、血が噴き出す。

 

 同時に相手の集中力が切れたのか、それとも何か他のトラブルが発生したのか透明化が解除されたのである。

 

「みつけた」


 相手の動きは、体格と比べれば予想以上に早いものであった。能力者としてもおそらく上位の身のこなしだろう、上に大きく飛び上がってさらに能力を原動力に、後ろに飛び退こうとしたのだから。

 しかし俺は本来速度特化の戦闘方法だ。超高速で敵を撹乱し、その速度のままあらゆる方向から攻めるのが俺のやり方である。だから、こういう時は一番反応のしやすい。

 

 相手は人間が、縦の動きに反応しずらいことをわかっているようだった。

 だが相手が悪い。視覚として相手が飛び上がるのを確認するとともに、覚醒時の本能が俺を突き動かしている。

 

 相手はこう動くだろうという予測が確信に変わった瞬間、俺は前に進んでいたのだ。

 敵からやってくる攻撃を躱さず突進し、止めと言わんばかりに属性宝が青白く発光する。

 

 御氷一刻の顔が一瞬恐怖に歪んだ気がしたが、俺は攻撃を中断することなどなかった。

 そこまで情けがかけられるほど、俺は優しくないし心に余裕もないのだから。

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