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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第2部:第4章
166/199

第166話 「生涯共ニスル人」

「ほら、すぐに会っただろ」


 烏導先生は、俺達を見て仕方ないなと笑いかけた。

 彼はその身分からか、こういう時によく審判役として呼ばれるらしい。


 今日はもしかしたらのことを考えて、御氷一族の物理的な意味での有力者も集まっているわけだし、他の人は彼ら彼女らが守ってくれることだろう。


「ネクサスくん、やっぱりこういうことになってしまうのですね」

「うん、こういう事にはなるだろうなと想った」


 正直、俺の場合負ける理由が今のところ見つからない。

 相手がまだ澪雫に未練を持っているのなら、俺が完膚なきまでに叩き潰して諦めさせてやる。

 人間的に、俺を社会的にぶっ潰そうとするのならそれは無理な話だ。さすがに御氷一刻といったところで、日本を犠牲にしてまで俺を叩こうとは思わないだろう。


 万が一そうやったとしても、普段は温厚な所謂「現人神」の父親が彼を許さないだろう。父親は自分の周りのコミュニティを大切にし過ぎるあまり、現人神になってしまった人なのだから。


 それが結果的に世界を救った、平和をもたらしたことになろうとも、それは父親にとってはどうでもいいことなのだ。

 【神羅の伝説】なんて大層な異名を付けられたところで、彼の考え方は達観しているものでもなければ博愛主義にも染まっていないと聞いている。


「あの、ないとは思いますが負けないでくださいね」

「うん、ないとは思うけど負けないよ」


 ないとは思うっていうか、ない。

 フラグとかっていう存在は知っているけれどそれはなされるべき時になされるものであって、こういう言動が直接関与しているとは思っていないからね。


「今回は問答無用で本気だ。とりあえず、相手の人を殺すつもりで戦うつもりだよ」

「自分を忘れてしまわないように、お願い致します。……私は、ここにいますから」


 そういって、澪雫は俺の心臓部分にそっと手を置いた。

 ああ、やっぱり日本人だなって感じた。彼女は心にずっといると言いたかったのだろう。


 日本だけとは言わないが、アジア系の人間では多くの人が、心臓に「心」というものは存在すると考えているが、西洋人は頭のなかに存在すると考えている。

 思考がどこから始まるかというのを考えれば頭のなかにあると考えるのは妥当だし、でも俺はアジア人的な考えのほうが好きだ。

 心臓は一番大切なところで、そこに人を判断するための「心」が存在すると考えるのは本当に優しさに、溢れているなって感じてしまうのだ。

 感じるなんていう漢字にも「心」は宿っているのだし、やっぱり漢字って神秘に溢れているものなのだあと。


「ようし。……澪雫は俺のなんだ?」

「……生涯を共にする、人です」


 俺の声色が少々変わったのを察してか、その表情に恥ずかしさは消え、まっすぐに俺を見つめる彼女。

 正直、それだけ理解できているのなら問題はない。生涯と澪雫は言ったが、俺の生涯はおそらく人間よりも遥かに長いものになる。


 なんて言ったって、文字通りの現人神の子供なのだから。

 本物のそれである父親は、母親が俺を身ごもる前に彼女へ半永久的な命を与えたと公言している。


 ということは、俺もその同類になったということだ。氷羅姉さんだって、メンテナンスが必要なくなるように、身体の中で自動修復できるようにしさえすればいい。


 そして、俺は澪雫と魅烙にも、父親が母親にされたように命を与えることが可能であろう。

 だから、澪雫がそれだけ理解して、更に覚悟もきちんと出来ているのなら、俺に心配はなにもないのだ。


「分かっているのなら、大丈夫だよ」

「何が大丈夫なのか、澪雫には理解できないのですが」


 澪雫は首を傾げていたが、彼女に笑いかけるだけ笑いかけて俺は前を向いた。

 半径20メートルほどのフィールドが広がっており、その向かい側には御氷一刻がただ一人、準備をしていた。

 その手に握られているのは、妖刀【飛雪ヒセツ】だと解説されている。どうも、彼が生まれた時に打ってもらった刀らしい。


「まあ、御氷一族の人間が、何も能力を持っていないとは考えにくいよな……」


 まあ、こちらとしても相手が本気を出してくれるというのなら、こちらとしても手加減する必要はないわけだし。

 結局、前のアライアンス戦でも相手を殺さないようにすることで精一杯であった。今回は肉塊に変えてやるとしよう。


 でも、あまりにも一瞬で終わってしまうのは問題だからね。

 属性宝の真の力、【神力ゼニス】を持って実行させる。


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