第163話 「御氷兄妹」
昨日更新した分ミスってました。
申し訳ない……こっちが最新話です
交流会と銘打ってある通り、それの基本は世間話や社交辞令であった。
かく言う俺たちも、それぞれがそれぞれの現代当主につれられて挨拶に向かう。澪雫とは1時間後に待ち合わせを取り付けて、でも母親は霧氷家とやっぱり仲がいいらしく、殆ど一緒にいた。
「あそこにいらっしゃるのが、御氷一家だよ」
澪雫の父親が紹介してくれる。御氷家の次代は男2人、女1人の3人構成。
俺たちが近づいていくと、あちらもこちらに気づいたようで、当主らしき中年の男性が手を挙げた。
「初めまして、ネクサス君。澪雫さんは久しぶりだな」
髪の毛は逆立った黒色。容姿から威厳を感じるその人は、オーラも確かに他の人と違って見える。
父親とは勿論比べものにならないが、日本でいうとそうだな。母親の強者のオーラから少々の優しさを消したものだろうか。
やっぱり、御氷一族というのは強者が似通ったオーラを持ち合わせているのだと実感できる。
母親、涼野冷と霧氷家当代の創雲さん、そして目の前にいる御氷須臾のオーラは相違点が多少有れども、本当に似通っているといえるものだ。
「こちらが長男の瞬だ」
紹介された男をみやり、なるほど似ていないと確信した。
どうみても、先ほどの人……恐らくここの次男とパーツは似通っているが、まるっきり違って見える。
男の俺から見ても格好いい。細型になればこうなるんだな、と納得させられるパーツの良さがそこにはあった。
それが、先ほどの人は体型のせいですべてがつぶれ、醜く演出してしまっている。
「よろしく」
「こちらこそ」
彼に手を差し出すと、長男の御氷瞬は躊躇うことなく俺の手を握った。
性格もよし。
「次男の……おい、あいつはどこ行った」
「さっきどこかへ。なにも言わないでいなくなったから、僕は知らない」
「ならいい」
その場にいない御氷家次男のことは特に重要なことではないらしく、そう簡単にモノゴトを飛ばすと次は娘を紹介された。
ふむ。刹那と呼ぶらしいその女性の姿は、どこかしら少女期の母親にも似ていたし、今の澪雫にも似ていた。来年天王子学園に入学するため、準備中なのだとか。
「ちょうどいい機会だ。瞬、刹那。ここを案内して同時に自由時間もとってくれ」
全員が到着してからイベントらしきものははじまるのだという。
俺にはよく分かっていなかったが、どうもブースなどを設けて食事もとれるらしい。
「はい。それじゃあ、行こうか」
「澪雫、正式に婚約おめでとうだよ。本当に」
移動中、御氷瞬は澪雫にそう話しかけていた。
聞くところによれば、彼にとって澪雫は御氷刹那とともに妹同然の存在だったらしい。
俺にはヴァロッサがいたけれど、あまりよく分からないな。妹分の存在が出来たら変わるのかもしれないけれど、シルヴィーは微妙な立場だったし、彼女は俺のおつきではあるものの、付き添いは許可されていないため別館にて待機している。
英雄12家も入れるという扱いだったら良かったのに。そうすれば八神家やアルカディア家、デスロスト家なども出席を許可されていたし、シルヴィーも入って良かったはずなのだが。
まあ、涼野家の本当の当代はちゃんと別にいるんだけれどもね。
母親の姉で凍霧さんという人がいるんだけれど、今日はどうしても出席できないらしく、そのかわりらしい。
「澪雫のこと、お願いする」
「勿論」
「聞けば、病も治してくれたと。……澪雫がネクサスと出会えたのは、最大の幸運だったのかもしれない」
幸運ではなく、恐らくは必然だったんだろうなと考えられるけれど、いちいち否定するのも面倒なので黙って頷いた。
今はこの状態に感謝するべきなのだ。うん。
和やかな雰囲気が続く。そのなか、最初に到着したのは料理店を代々営んでいる火喰家の料理ブースであった。
奥の方に当主の姿も見える。……包丁を持った鬼神か何かだろうか、あれ。
「火喰家は能力関係ではなく、あくまでも料理店を優先しているらしいからよく分からないんだ」
「へえ」
「でも、料理は逸品だよ」
刺身の皿を渡され、裁いてすぐのそれを口に入れる。
……おう。おう。
まだぴくぴくしてる感覚がする。なんだこれ。
「西洋の人って、生魚いやなんだっけ?」
「いや、親父が好きだったからね。俺も好きだよ」
「そっか」
にこにこと笑顔を見せて、御氷瞬はじゃあ今度送るね、とそういった。
送る?
どこに? 同盟本部へ、かね?
「そういえば、瞬さんって何歳です?」
「タメ語でいいし、瞬って呼んで。……その質問へ対しては、23と答えようかな」
つまり、澪雫とは6歳差か。
「……ちなみに私が15です。兄は今夏から、臨時勤務教師として天王子学園の先生になるのです」
御氷刹那が補足を入れてくれた。なるほど、送るっていうか、直接持ってくるのかね。
と、ここで後ろから聞き慣れた声がした。
熊のように深く、低い声だ。
振り返ると、そこにいたのは……。
「烏導先生? なぜここに?」




