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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第2部:第3章
159/199

第159話 「龍牙・業火・神羅 伍」

三人称視点

 ネクサス・アルカディアと八龍鎌斬・八神王牙が戦っている間、ゼオンとネクストはまるで違う戦いを繰り広げていた。

 生徒たちの注目は、専ら2人の戦いであると共に。同盟アライアンス【エーリュシオン】のメンバー、それに手加減しているとはいえ八神王牙と2対1で互角に渡り合っているネクサスにも十分すぎるほど注目は行っていた。


 ネクストは氷を、ゼオンは炎を。それぞれ相手に属性としてビーム、光線はもちろんのこと機関銃、ミサイルにまで形状と特徴を変化させてお互いに撃ち合っている。

 めまぐるしく立ち位置を変えながら、極彩色のエフェクトを発生させて花火のようにしている彼等の戦いは、ただ戦闘に参加させている人たちだけに効果を発しているものではなく、確かにエキシビジョンマッチとして観客に「魅せる」戦闘でもあった。


 戦闘の能力としては極端に高い。移動速度や威力、その他にも幾多の制限をかけている2人ではあったのだが、それでも双方の曖昧な状況しか、殆どの人たちには分かっていなかった。

 どちらが優位に立っているのか、分かるのは生徒の中でも来賓の中でも極々一部でしかない。


 実際には火力よりも機動力に優れているネクストが優位に立っており、火力は絶大なものの代償として機動力と、攻撃発動までの時間にタイムラグが発生するゼオンのほうが劣勢には立っているのだが。


「やっぱり、こういう戦いは不利だな」


 ゼオンはつぶやく。ネクストとは既に何十年と良き友で、同時に良き好敵手ライバルとして過ごしてきた。

 2人が出会ったのは物心が付いた頃で、隣国の親同士の仲もあり、彼らの性格も見事に合致マッチしていたと言うべきなのだろう。


 性格面での相性は抜群であったが、残念ながら対峙したときの相性は悪い。

 幼少期、戦闘の是非も分からないころはゼオンが圧倒的に強かった。火力とその物量、面の攻撃によって敵を圧倒するその作戦に、センスが追いつかないネクストは惨敗していた。


 しかし、天王子学園に入学するころには立場が逆転していた。敵の攻撃に対していち早く察知し、本能的または直感的にそれらを回避することが可能になっていたネクストは、ゼオンの物量をすべて避けきれるほどになっていたのだ。

 あとは、そのスピードと繊細な動きを利用しつつ、相手に近づければ負けはあり得ない。


「でも、これならどうだ?」


 ゼオンは笑い、その様子に異変を感じたネクストは突進していた動きをやめ、空中で彼を見つめる。

 見つめると同時に、ゼオンの展開していたすべての銃から光線の誘導ビームが放たれる。

 一転、それをすべて避けきるためにきびすを返した彼に対し、全方位から囲むようにではなく、必ず1方向だけあけてビームは迫って行く。


 そう、相手の動きをそれでコントロールしているのだ。ネクストもすぐにその意図を察したが、ビームなだけあって早さが先ほどと段違い、相殺させることが出来ない。

 さてどうしようか、とネクストは戦闘の中、頭をフル回転させた。

 そして、いつもは忘れていた懐に隠している脇差しの存在を思い出す。


「……冷、別に世界の救世でも何でもないが、力を借りるぞ」


 それは、彼が涼野冷と結婚したときにプレゼントとしてもらったものであった。

 関帝家のオーダーメイドで、彼女がデザインしたもの。

 ネクストはそれを大切にするあまり、冷が「使えば使うほど手になじむのに」としょんぼりしても使わなかったものだ。


 世界の救世に使おうと思っていたのだが、とネクストはこんな状況に脇差しを抜いたことに苦笑する。

 その脇差しは青白く、凛としており美しい。


 【剣聖】涼野冷という存在そのものを体現したようなものであった。


「冷」


 ネクストはつぶやき、それを構える。

 そして刀は光を灯したかと思えば、次の瞬間にゼオンの放ったそれらはすべて跡形もなく霧散していた。


「……【能力を斬る】ための刀、か」


 能力者的な能力をほぼ持たず、剣の腕のみで能力者たちと渡り合った女性そのものだな、と。

 ネクストは笑い、ゼオンに違う笑みを見せる。


「此方も本気で行かせてもらう」

次回でこのお話は終了ですかね。


その次は御氷家編になります

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