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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第2部:第3章
154/199

第154話 「エキシビジョンマッチ」

「今日のエキシビジョンは、特別にゼオン=デスロストとネクスト・アルカディアが好きなだけ付き合ってくれるそうだ」


 王牙おうがさんは、少年時代に戻ったような無邪気極まりない顔で笑っていた。

 普通なら「様」を付けなければならない立場の人に対して敬称無視で呼んでいるところ。そこが、王牙さんという存在の特別性を物語っていると言ってもいいだろう。


「誰からやりたい?」


 父親が来賓席から一っ飛びでフィールドに降り立ち、会場全体に話しかける。

 穏やかな口調だったが、誰1人動くことが出来ない。

 それもそのはず、彼らっていう団体は「能力の完全なる制御が可能」として、【アビリティ・ギア】の不携帯が認可されている。

 だから、オーラがあふれ出してしまっているのだ。先ほど壊した俺よりも高密度で、なおかつ広範囲に。


 純粋な氷属性の威圧は、まるで身体を本当に凍らせてしまったかのように冷たい。普段話をしているときはそうでもないのに、今真に迫ってソレなのは、父親が戦闘準備を既に終わらせているからなのか。


「複数人一緒でもかまわないぞ」


 誰も動かないのを見て、少しオーラを絞ろうと考えたのか、身体が動くようになってきた。

 そして「複数人可」という言葉を受けて、同盟アライアンス単位で挑んでみよう、という人が現れる。


 もちろん、俺達ではない。


「ほう」


 フィールドに立った、勇敢な少年少女に対して父親は眼を細めた。

 天王子学園の生徒も、まだ捨てたものじゃないと考えたのかもしれない。

 そして、0から10の数字を提示し、どのくらいのハンデを受け持つか訊いた。0だと人間に対する全力だろう。属性宝も使うとおもう。


「では、7で」

「『遺産』なし、覚醒無し、属性能力以外の能力無し。このくらいか」


 父親の言っていた『遺産』っていうのは、簡単に言えばこの世界に現存する伝説の武具、だ。

 属性宝7種もそうだし、他にも星を神としていた人たちが作り出した15個前後の武具。他にも属性皇の世界の産物とかも存在する。


 見つかっていないものもあるし、適合者がいなくてっていうのもある。

 大体はSAS……特殊能力者協会が管理しているんだけど、どうしても適合者がそれを必要とした時、物理的な障壁をすべて突破して向かうため協会の建物が破壊されるということが多々あって……。

 一度倒壊危機があって以来、保管庫の天井は取り払われているという。


 俺も何回かSAS本部の保管庫には案内されたことがあるが、雨の時は書類は大変だなぁと思っていた。


「王牙、合図を頼む」


 勿論、挑戦者の人たちは無制限だ。【ギア】も外している。

 生徒程度の能力ではこの会場は破壊されないと思ったのか、それとも破壊されても立て直すのかよく分からないけれど。


「生徒分の挑戦者がいなかったら、俺も久しぶりに戦おうかな。……ああ、OK」


 とんでも無いことが王牙さんの口から飛び出し、そのあと快諾の合図が入る。

 どの人もこの人も、前世代は戦闘狂ばかりだ。本当に呆れる。









 ネクスト・アルカディア。この世界最強の戦士と謳われた男は、息子である俺から見てもかっこよかった。

 18の時に世界を救い、その後「剣聖」の涼野冷と結婚。21の時に俺が生まれてからも、数々の改革をした。

 その行動の基本理念が家族・仲間であっても、今まで差別されてきた「不完全能力者」、今でいう「特化能力者」の地位向上は大きい。


 そして何よりも安全な場所でのうのうと生きるタイプの人間じゃない。


 炸裂する色とりどりの爆発や銃弾や、交錯する刃の軌跡を見つめて、俺が感じたのはやっぱり制限されていない属性能力というのは美しいということだった。

 視力効果っていうのはやっぱりいい。

 なにより、それがハンデにもなり得る……なり得てないな、これは。

 父親のそれは、「見えているのによけられない」んだから。


 視覚では判断できるはず何だが、父親の能力はその派手さに反して発動までの時間が極端に短く、同時に標的までの到達速度も視認できるが身体が追いつかないほど速い。

 さらに身体能力は腕の筋力、膂力がクソほど弱体となっている代わりに脚力にすべてをかけているかたちとなっているのだ。


 能力最強の彼であれば、まあそれでも劣らないって言うのが本当にアレ。


「それにしても、師範は今日いらっしゃらないのですね」

「道場本部にいると思うけど……ああ、澪雫早退は許さないぞ」


 いつもなら、ここで澪雫は「でも師範が」とごねるところだ。

 しかし、今日ばかりはそれどころではないらしく、うつむいてはいと一言返事をするだけである。


 そうこうしているうちに、こちらに対しても冷たい突風が吹き付けるようになってきた。

 段階を踏んで、どこまで挑戦しているアライアンスの生徒たちが耐えられるのか、試している。







 ……って、試合終了してるじゃないか。

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