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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第2部:第3章
153/199

第153話 「信条と感情」

「最初、かなり手加減してやってただろ」


 試合が終わり、帰ってきたみんなに俺はそう指摘した。

 別に、彼女たちに向かって起こっているわけではない。

 最初のターンに手加減して挑発を繰り返し、後々から本気を出して叩き潰すのは相手の精神に大きなダメージを与えるものであり、そして俺もやった。


「はい」


 あれはデモンストレーションだと思っています、と澪雫は答えた。

 そして最後まで、本当の力を使うまでに至らなかったと説明してる。


「よぉし、澪雫と蒼以外は座って良いぞぉ」


 俺はほかのみんなを通す。この時点で蒼は「あっ」と何かを察したようだ。蒼は理解が早くてよろしい。


「涼野流剣術の信条で、今回違反していると思われるものは何だと思う?」


 この時点で、やっと澪雫がそれに気付いたらしい。

 見る見るうちに顔が青くなっていった。蒼の顔色はまだマシな類ではあったが、それは彼女が正式に入門はしているものの、神御裂流がメインであり、あくまでも涼野流というのがサブだからであろう。


 しかし、澪雫は違う。彼女は涼野流だけしか入門していないし、俺の母親から一番の期待を寄せられている人物だ。


「……力に浮かれないこと。どれだけ格下の相手にも、常に全力で接すること」


 ふるえる声で読み上げた彼女の顔は、青白いっていうような状態どころではなかった。

 今にも倒れそうだ。本当、忠実にそれを守ろうとしているときはアレなのに、ドジっこなんだから。


「師範に顔向け出来なくなってしまいました」

「いいよ、報告しないから安心して」


 ちょっとホッとする澪雫に苦笑しながら、蒼の方をみる。

 蒼は頭の柔らかい正確のようだ。変に取り乱していない所から見るに、なかなか肝も据わっている。


「蒼は、何か言うことは?」

「すくなくとも、相手に出すべき本気も程度があるんじゃないかなって思うの。例えば、貴方の父親が決して本当の『本気』を出すことがないように」


 たしかに、父親は本気を出すことが出来ない。

 属性皇νεροネロと融合している以上、彼の本気というのは「この世に干渉できる神」に等しいからだ。

 実際の所、その事実を知っている人間というのは圧倒的に少なく、また父親はその力を使わないとしているため、あり得ない話ではあるが……。


 もし、父親が例えば「母親が殺された」とかで世界を信じれなくなった時、この世界そのものを破壊することだって可能だろう。

 さらに彼、持っている能力の一つに「相手の使う能力すべてを無効化する」っていうのも持っているからなぁ。

 能力者としては、身体能力も能力者の固有強化分が無効化されるため、真人間に戻った気分を味あわされるという……。

 俺なら発狂しかねないね。


「……たしかに、そうだな」

「ネクサス君が子供相手にもあんなことをするのなら別だけどね?」

「しない、しないからね?」


 なんだか、うまく言いくるめられた気がする。

 まあ、いいか。


「このあとは、観戦だけなの?」


 魅烙が、タオルで髪の毛を書き上げながら俺に聞いた。

 それに頷きながら、でもすべてが無駄じゃないぞと天鵞絨てんがい兄弟を指さす。


 俺が戦っているときに何があったのかよく分かってはいないが、しかし洸劔がやる気になっていた。

 影劉さんとタブレット端末に、なにやら書き込んでいるのが見える。


「分析中だろうし、俺達もなにかないか探すべきだろう」

「……それもそうね」


 実際、でも【エーリュシオン】は今回参加していない。

 俺の目的は、おそらく最後に行われるだろうエキシビジョンマッチだ。

 今日の来賓は……ゼオンさんと……親父もいるぞ?

 一昨日、国に帰ってないのかな。日本大好きな父親としては、俺の頼みは願ったり叶ったりなのかもしれないが。


「今回の最終戦は、一波乱起きそうだぞ」

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