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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第2部:第3章
150/199

第150話 「学園公式試合 伍」

「あの状態のネクサスとは、死んでも戦いたくないな」


 影劉えいりゅうは、隣にいる弟の洸劔こうきにそう話しかける。

 洸劔はただ、青ざめた顔をしてネクサスの無双状態を見つめていた。


 最初から、その武器が彼のものだったように、ネクサスは属性宝を使いこなしていた。

 斧槍という武器は、刺す、斬る、引っかける、叩くといったように様々なことが一つでできてしまう万能武器の一種である。

 そのため、使いこなすには一定以上の実力を要し、さらには慣れも必要となる。

 さらに、彼の持ち合わせているものは属性宝。武器の方が使用者を選び、まるで今のように確かな自我をもつ存在だ。


 それを、使いこなしているということは。彼の実力は一目瞭然なのだ。


「洸劔、お前が澪雫さんや魅烙さんに手を出したら、恐らくあんなのじゃ済まないぞ」

「……うん」


 洸劔は最初からそのような気はなかったが、生きている気がしなかった。

 1年前、非公式試合の「お返し」がアレなのだ。同盟『機動要塞フォートレス』の面々には、学園中の笑い物になるとかという前にトラウマになっていることだろう。

 それがもし、澪雫や魅烙でなくても、たとえば神御裂かんみざきの双子姉妹にちょっかいをかけて彼女たちが不快になったら。

 そのままネクサスに直行したら、恐らく殺される。


「ネクサスは、ネクストさんの性格をさらに激化させたものだって聞いてる」

「本人から?」

「本人から」

「なるほど……納得だよ」


 たしかに、アレは母親から聞いたネクスト・アルカディアの本質。行動概念そのものだと洸劔は納得する。

 外敵にトコトン厳しく、仲間にはトコトン優しい。

 しかし、ネクストはその中でも仲間になれる人は引き入れる優しさが合ったが、ネクサスにはそれすらない。


 ネクストは自分から仲間を増やしに行くが、ネクサスは仲間伝いにしか行かないのだ。


「洸劔、本気でソキウスに入るのか?」

「兄さんは嫌なの?」

「嫌っていうか。……俺はネクサスの意志に従って色々暗躍しているだけだよ。それに洸劔が協力してくれるなら、ネクサスの理想も速く達成される」


 その言葉に、洸劔は影劉が本気でネクサスへ希望を見いだしていることに気付いた。

 洸劔が入学する頃、影劉は「つまんね」とこぼしていたのを覚えている。だからこそ、彼は忙しさを選んで影劉のように自由人ではなく、もう1人の兄の作り上げた同盟アライアンスに参加することにしたのだ。


 しかし、そこを壊してしまった。兄さんはどう思うだろう、と自分を責めながら、でも今は結局、影劉という兄と同じアライアンスにいる。


「俺も、ネクサスの希望に添えるように頑張るよ」

「ネクサスは、一世代前の状態に天王子学園を戻したいらしい」

「つまりは、母さんの世代だね」


 天鵞絨雨海。ネクスト・アルカディアに恋し、結婚後も愛されながらも結ばれるということをやめた女性。

 今も伝説の良き友人であり、また剣聖の友人でもある。


「前の世代は、天鵞絨はアルカディアに守られていた」

「でも、今回。天鵞絨はアルカディアを助ける」

「そういうことだ」


 影劉は、洸劔が自分の考えを完璧にわかってくれたことを確信し、ほくそ笑んだ。


「さて、試合も終わりそうだな。次の試合は誰がいく?」

「私達が行くよ」


 影劉が声をかけると、魅烙と澪雫が手を挙げる。

 しかし彼はそれを突っぱね、新入生をのぞいた全員を指名した。


「いや、次は全員で総力戦をしよう。圧倒的勝利を、ソキウスに捧げようかね」

「そうですね。……行きましょうか」


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