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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第1部:第1章
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第15話「成績披露3」

「うわぁとはなんだ、うわぁとは」


 と、八神やがみ王牙おうがさんはその、水色の髪の毛をガシガシと掻きつつ、俺と烏導うどう先生の方に近づいてきた。

 よくみれば、その髪の毛は水色とは少し違うことが分かる。

 どう言えばいいのか分からないが、水色というよりはイメージが凍り色に近い。


「で、ネクサスお前はここで何をしているんだ?」


 と、同じくして疑いの目をかけられたため、俺は烏導先生へした説明を繰り返した。

 ふむ、と考え込むようにして校舎の方をみる王牙さん。


「そうだネクサス。氷羅の方から聞いているのか?」

「何を?」


 第1回公式試合の話だ、と王牙さんは笑って俺に告げて、逆に烏導先生は苦虫を噛み潰したような顔をした。

 王牙さんの声は、例えるなら真夏の海だろう。

 さわやか! というイメージを前面に押し出しているような人である。


 ちなみに年は40に近く、現在37歳だったはずだ。

 普通の人なら、それを聞いても決して信じたりはしないだろう。


 まあ、能力者に美形が多いというのは統計上かなり信憑性のあるものらしいこの世界、それが当たり前なのかもしれないが。


「第1回公式試合……もうそんな時期か……」

「嫌そうだな、輪化りんげ先生」

「……嫌だよ」


 烏導輪化先生は生徒指導の先生だ、そりゃあ学園公認とはいえそういことには難色を示しているのだろう、と思って俺は同情するような目線を送る。

 王牙さんは、別の意味で嫌そうな顔をしていた。


「……俺も参加できるのっていつだっけ?」

「生徒の前で怖がらせるなよ、王牙先生」


 王牙さん、親父から聞いていたとおりに血の気が強い。

 いや、幼少期のイメージはもう少しまともな人だったから、それ以上に凶暴なんだろうか。


 ……いや、凶暴というよりは別のイメージだ。

 言葉にうまくできないのが悔やまれる。


「それにしても、先生方って名前で呼び合っているんですね」

「同い年だし、俺と華琉はるが名字一緒だからな」


 いや、結婚しているんだから普通でしょうと言いたかったが。

 ……よく考えてみれば、日本に来るとき母親は本名ではなく涼野すずのれいで名乗っているし、もう何がなんだか訳が分からないです。


 俺は烏導先生と八神先生、二人のルックスを見比べながら、この二人が名前で呼び合っていると、腐った人々がきそうだなと思った。

 筋肉隆々の二人組、これはもっと想像がかき立てられるかもしれない。


 俺としては、考えたくもないものではあるが。


「そうだ」

「あ?」


 烏導先生、思い出したように手をたたき、王牙さんに話しかけた。


「さっき、アルカディアとこの学園最強の教師は誰かという話をしていたんだが」

「ああ、俺か輪化先生だろうな」


 この人も即答か。

 日本人だというのに、謙虚という二文字はこの二人にないらしい。


 ちなみに、俺はこの前烏導先生の能力を……ミニ太陽の生成を目撃したが、実を言うと王牙さんの能力を詳しく知らない。

 親父に言わせれば「自然現象を自在に操る」とかなんとか。


「そういえば、ちゃんと勝負したことって無かったな」

「どこで勝負するんだ……。学園がいくらあっても足りないぞ」


 始末書とか書くのは俺なんだぞ、と烏導先生。

 それに対して王牙さんはバツの悪そうな、イタズラをして叱られた少年のような顔をしていたが学園が消し飛べば始末書も何もないと思う。


「あれ? 輪化先生ってそんなに威力……ああ……」


 王牙さんが察したような顔をした。







「ネクサス、お待たせー。あ、先生方もお揃いで」


 姉さんが、魅烙をつれて帰ってくる。

 帰ってきた魅烙の顔は少し変わった? と俺が聞きたくなる程度には変貌していた。


 それは王牙さんも勿論気づいたらしく、満足そうな顔で首を縦に振っている。


「魅烙、第1回公式試合に出る……」

「おう」


 どうやら、姉さんに言いくるめられたらしい。

 俺が姉さんへ目を向けると、姉さんはウィンクしながら下をぺろっとだしてうまくはぐらかそうとしていた。


 ……うぉぉ。

 体型が幼女なだけに、その破壊力は計り知れないものをはらんでいる。

 そういう趣味の人が今そばにいたら、卒倒する人も出てくるんじゃないか、と思ってしまうほどだ。


「先生方は、こんなところで何をしていたのです?」

理創源りそうげん、君が弟君を放置するから話し相手になっていただけだ」

「なるほどぉー。ごめんね、ネクサス」

「それはそうと、そっちこそ何をしている? 今日は授業がないだろう?」


 烏導先生、尋問をするかのように姉さんへ質問をするも、姉さん動じず。

 何でもないようにメイン校舎の屋上を指さして「【同盟アライアンス】の会合ですよ」と答えた。


 ここで出るか、同盟制度。


「なぜ、学園1位という実力を持っているのに生徒会に入らないんだ?」

「単純な一つの理由として、生徒会に影響力を集中させたくありませんからね」


 んん?

 難しい話になってきたぞ?


 と、俺と魅烙が頭を傾げていると、会話に参加していなかった王牙さんが説明してくれた。


「この学園では、生徒会も一つの同盟アライアンスだからな」


 アライアンス会議っていうのがこの学園にはあるらしく、簡単にいったら生徒総会のようなもので?

 上位10つの同盟アライアンスが、この学園の方針について話し合うらしい。

 そこで今一番権力を持っているのが言わずとしれた最大のアライアンス、【生徒会】で次いで2位が姉さんの率いる【楽園エーリュシオン】。


 ……姉さん、なんか痛くない?


「どうしたの、ネクサス」

「なんか、同盟の名前が……」

「んん? エーリュシオンって、『神々に愛された英雄たちの楽園』でしょう? 特にメンバー的には間違ってないよ?」


 ああー。

 お姉さん、親父の代の子供たちしか……ってことかな。


 いや、メンバーとか正直どうでもいいんだよ。

 なんでそんなに痛々しいネーミングなんだ?

 異名の【氷帝姫ヒョウテイキ】もなかなかだったけども。


「ふつーのネーミングでしょう?」

「……あのなネクサス。……非常に言いにくいんだが」


 口に出すのも恥ずかしい、と王牙さんは俺に1枚のプリントを渡す。

 アライアンスのトップ10と序列のトップ10。団体名と異名が一覧になっている。


 とても痛い。


「序列2位が【覇王グランドマスター】……、序列3位が【騎士道ホーリーロード】……」


 姉さんや、零璃れいりの姉である赫良かくらさんので充分痛いと思ったら、もっと上がいた。

 ……ていうか序列2位……上に一人いるんだけど。


「異名は基本的に3年で3回、変更できる。序列2位の生徒会会長は、2年の会長就任時に最後の一回を使っちゃったんだ……」


 ちゃんと考えろってか。

 まあ、そりゃあそうだろうな。


「ところで、姉さん成績は?」

「入学の時の?」

「うん」

「『S/EX/EX』だったけど、こんなのごろごろいるよね」






 ……もうやだこの学園。

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