第145話 「ゼニスの権限」
「加入?」
否定が澪雫、神御裂姉妹、零璃、七星と清崙の6票に対して。
影劉さん、刑道、ルナナ、スローネ、魅烙、俺の10票で結果は加入を検討することになる。
澪雫はうろたえ、怒りが収まらないと言った様子で口を開きかけた。
目ぇ恐っ。睨んだだけで人を殺せそうだ。殺気を確実にはらんだ表情で、憎々しげに俺達を見つめている澪雫だったがすぐに目を伏せる。
「結果はこうなってしまったが、俺からは一つ条件がほしい」
「ん?」
「試用期間がほしい。期限を決めず一緒の時間を過ごし、そのあとどうなるかみてみるというのはどうだろうか」
影劉さんの判断は、おそらく澪雫たちに配慮したものであることは、気づくことが出来た。
もっとも、その意見を聞いて澪雫の表情は幾分かいいものになったし、少々不安げだった七星も顔を傍目で分かるほどに明るくする。
洸劔の拘束も解かれ、彼はというとなんと言えばいいのか分からないという顔で俺達を見つめている。
まあ、いいとしてだ。それは別にいいとして、さて話もおわったっし帰ろう。
「帰ろ」
「はい」
「影劉さん、洸劔と同じ部屋でもいいでかね」
「……嫌だと言っても、……部屋がないのか」
「はい」
洸劔の部屋割りは困難を極めるほどではなかったが、難儀だった。
刑道と清崙が同じ部屋。俺は一人部屋だが、澪雫と魅烙が自分の部屋からこちらにメインを変えたため実際3人部屋である。
そうすると、女性の部屋に洸劔を入れるのはあり得ないとして残りの部屋は影劉さんの部屋だけなのである。
片づけが済んでいないのもあって、上階はごっちゃごっちゃだが、もし試用期間後も仲間入りするというのならそこにあてがえばいいだろう。
「仕方がないな。こちらとしても、色々と監視が出来て好都合だし」
影劉さんなら、きっと洸劔を傀儡にしてくれるよ。
兄弟の情がどこまであるのか俺には分からないけど。
俺は、弟がいないからね。
「とりあえず、ネクサスはどうしたい? 君が【ゼニス】の座に立ったとき、暗躍役は必要かね?」
「俺はまだ、この学園の頂点がどれだけの権限を持つのかよく分かってないんだ」
「そうだな。……正直、何でも出来るぞ」
いや、その何でもっていう基準が分からないんだが。
「日本全国にある、5つの能力育成機関があるだろ。たとえば【暗滝学園】、兵庫県にあるソレは能力に頼らない武器戦闘を主体としているんだが」
「それは、その学園の【ゼニス】の方針だからって言いたいんです?」
「そうだよ」
ああー。へえ、そもそもの教育方針まで変えることが出来るのか。
多分、それを維持し続けるために途方もない強さを保っていたんだろうけれど。
「まあ、それは暗滝学園の創立からずっとなんだがな。変えようと想えば、本当に変えられる」
少しずっこけて、俺はでも可能なのか、と考えた。
それも可能なのならば、本当に能力育成機関において【ゼニス】という学園のトップは特別なんだろうと言うのは考えられる。
容易に可能だ。
「まあ、どう変えようとしたって下位の人が優位になる未来はないけどな。なぜかは分かるか?」
「そもそも、【ゼニス】になる人が上位であるから」
「当たり。下位の人を援助して、自分たちの立場が壊されたら元も子もないしな」
そうかー。いや、俺は改革とかどうでもよくて。
いや、どうでもはよくないか。王牙さん達からちゃんと父親の世代に何をやっていたのか聞いてみよう。
父親の世代の状態に戻してみたい。同じ環境で、勉強してみたいという気持ちはいくらでもある。
なんだかんだ言ったって、俺の一番尊敬するのは父親で次点が母親だ。
努力をして座を勝ち取ったという意味なら母親のほうが断然上なのだろうけれど父親と同じ力を得てこそ分かることもある。力は得てから初めて理解できるものなんだな、と。
「ネクサスはどうしたいんだ?」
どうしたい、か。俺でも充分だと思うけど、最低限私刑可能な部隊はほしいかな。
あとは影劉さんにまかせよう。
「……そうだね、外敵叩き潰すための別働隊がほしいかな」
ラノベでよくある「生徒会の権力」を地で行く設定




