第143話 「会議一時ストップ」
「つまり、貴方は原因がネクサス君にあるといいたいのですか?」
澪雫の口調は落ち着いたものだった。確かに落ち着いたものではあったのだが、怒りはあふれ出している。
彼女の憤怒は冷気へと状態を変え、一切の容赦なく洸劔を襲った。
その冷気がどこか増大しているようも想えるのは、俺が彼女の能力の栓を開けたからだろう。
能力は感情で幾分か上乗せされる。また、いきなり開花すれば暴発するのも納得できる。
澪雫は、全くといっても使えない状態から俺レベルは無理でも、魅烙と同じくらいまではレベルアップした。
魅烙は天王子学園で考えれば上位だ。そう考えれば、ある意味では彼女が「覚醒」したと考えてもいいだろう。
「冷気が漏れてる」
「……ええと、どうやって絞ればいいんでしょう?」
やっぱり、コントロールが難しいのかね。
俺はどうしようかと考えた結果、今は俺が操作した方が早いとして彼女の手綱を引っ張ることにした。
直したと同時に、俺が与えたと言ってもいいくらいのものだったから。
こちらも、特に苦労することなくその操作に成功する。
「つまり、洸劔がいいたいのは。【ソキウス】に表だって支援するかしないかで二分されていたのを、解散の危機としていながら放置したのが原因だと?」
「……惨めだが、そう」
「これ、失礼だけど完全に天鵞絨洸劔が悪いでしょう……」
魅烙も何とも言えない顔で、洸劔を見つめていた。
助け船がない彼は、なにを言い出すでもなく、机の上を見つめている。
俺たちがどうこう出来る問題なら、良かったんだけれども。
正直どうにもならないっていうのが俺の感想だ。このあと、ソキウスに彼が加入したいのかどうかは別として、【ー雷帝ー】がまた復活することの手伝いは、俺には出来ない。
そもそも、二分した理由にソキウスが含まれている。暗黙の了解を破った人々に拒否を感じている人と、伝説の「ソキウス」リーダーの息子が「ソキウス」を復活させることに肯定的なグループ。
どうやって仲直りさせるんだろう?
「ところで、解散したあとはどうなってるんだ?」
「2000人越えてるからね……。いくつかの大型、中型、小型同盟になってるよ」
彼は、その中の「ソキウスに肯定的な同盟」に誘われているらしい。勿論人望はないわけではなかったから、頂点の座は約束されているみたいだ。
でも、洸劔はそれを断ったという。
「……ソキウスに入りたいとか、言うんじゃないでしょうね」
同盟は、1000人を越えれば超大型。
100人で大型、25人で中型と呼ばれる。
正直、大型と超大型、中型と大型で間が離れすぎている気がするが、今まで1000人越えなんて1つしかなかったし、それが基準になっていたんだろうなとは思う。
澪雫は、強く拒絶の意を示していた。
これ以上にないほど、その目は厳しいものになっている。
「私は絶対にいやですからね」
うわぁ。これは無理そうだな。でも、正直こればかりは。
澪雫一人の意見だけでは決めかねる。
「魅烙はどう思う?」
「私は、正直どっちでもいいかな」
魅烙は適当にそう返すと、詰まらなさそうに突っ伏した。
どうも、話をする気はないらしい。
さて、どうしようか。
この話はソキウス全員の意見を聞く必要がありそうだ。なにが正しいとか、正しくないとかは関係なく。新しい仲間として迎え入れるか入れないかが論点になってくるのだから。
「澪雫、全員をここに呼んで」
「……はい」




