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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第1部:第1章
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第14話「成績披露2」

「……で、結局連れ込んじゃったんだー」


 今、俺の部屋には3人の美少女がいる。

 間違えた。2人の美少女と1人の美少年がいる。


「連れ込んでない連れ込んでない」

「でも、……女の子を……」


 そうやって俺をあおっているのは、零璃れいりだ。

 面白がっているが、正直現況は零璃である。


 この部屋、教えたの絶対に零璃だろ。


「……こうやって侍らせてるなんて、いやらしい」

「それならそれで、何で入ってきた霧氷むひょう


 そう。……数分前だ。

 チャイムがなって出てみたら、目の前に霧氷澪雫みおがいた。

 用件を聞いても答えないし、俺が途方に暮れていたら零璃が来て。


 零璃に反応したように、霧氷が「私もおじゃましますね」と勝手に入ってきた。

 勝手に入ってきたというのに「いやらしい」呼ばわりである。

 俺は怒ってもいいと思う。


「ところで、今はなにをしていたのですか? 零璃君」

「序列コードと、成績のお披露目会だよー」


 うふふ、とそんな声が聞こえてきそうな顔で零璃は目を細めた。

 その可憐さたるや、そこらへんの女子よりも絶対に女子力は上のような気がする。


 実際、そうなんだろうけど。


「零璃君はどうだったんですか?」

「んー、『D/D/EX』」


 勉強も出来なければ、この世界で一番一般的な『属性能力』も位階滅敵に扱えない。

 しかし、『特殊能力』欄は上限を突破している。

 つまり?


 つまり、凄く普通じゃないってことだ!

 当然、霧氷の目が見開かれる。


「えっ」

澪雫みおさんはどうだったの?」


 霧氷は、確か母親と一緒で『属性能力』が不得手だったはずだ。

 そもそも、涼野流剣術は『特殊能力』扱いだったはず。


 しばし考え込むようにして、俺たちに教えるか教えまいか悩んでいたらしい霧氷は、俺たちの成績を聞いてから考えることにする。


「『C/A/A』な、俺は」

「……えっ」

「それはどの意味だ」


 親が親だから、勉強はともかく属性能力も特殊能力も『EX(エクストラ)』だと思ってたらしい。

 【ゼニス】である姉さんなら可能かもしれない、というかその可能性が高いけど、俺は才能が足りていない。

 そのため、実力が無くても努力で何とか出来ていると思われる。


 俺の走力は、おそらく『特殊能力』扱いだろうな。


「魅烙は『S/B/C』にゃー」

「……『A/D/A』です。序列コードは550」


 うわぁ。

 俺は本能的に、彼女の不遇さを知ってしまった。


 期待値がほぼ無い。


「……やはり、英雄の子供たちは高めに設定されてるんですね」

「うん、たぶん……」


 霧氷の何とも答え難い質問に対して、気まずそうに目をそらしながらも答えたのは零璃だった。

 それにしても英雄、か。


 丁度20年前の天王子3年生は、本当に優遇されているな。


「ところで、学園を散策してみませんか?」

「ん?」

「貴方には話しかけていません。零璃くん、行きません?」


 そんなことだろうとは思ったよ!








「というわけで、魅烙と俺は別働隊だな」

「わざわざついてこなくてもよかったのに」


 相変わらず、俺に毒をはく霧氷を無視し、俺は魅烙の服装をみて改めて困惑した。

 首輪……じゃなくてチョーカーそのままかよぉ。


「魅烙のコレ、ちゃんと引っ張っててにゃ?」

「いや、やらないからな?」


 鎖を差し出されたものの、流石に拒否。

 魅烙が許しても世間体が俺を許してくれない。


 彼女も流石に察してくれたようだ。

 鎖をチョーカーから外してホットパンツの方に付ける。


 ……そして、甘えたように俺の腕を抱きしめた。


「んん?」

「ほら、澪雫ちゃんもいなくなったし……」


 周りを確認して、誰もいないと断定していたらしい彼女は、上にいた姉さんに気づかなかった。


「って、ゼニス!?」

「こんにちはー」


 すとんっ、と地面に着地した姉さんに、魅烙が本気でビビったらしい。

 俺の腕を締め付ける力が大きすぎて、正直痛い。


 姉さんはあどけない顔をして、俺と魅烙を見つめる。


「ネクサス、早すぎない?」

「いやいや、付き合ってないよ」


 と、ここで魅烙が訳分からない、といった顔をしていたため説明する。

 もちろん、姉さんにいいのか許可をとってから、であるが。


「えーと魅烙。こっちがご存じ学園最強ゼニスの、()()氷羅ひょうら・アルカディア」

「にゃ!? 理創源りそうげんさんじゃ……」

「だから、本名」


 パニックに陥った魅烙に、俺は再度説明する。

 どうだろうこの子、少し驚きすぎかな?


 と、姉さん。

 魅烙を興味深そうに見つめて、ああ! と納得したようにうなずいた。


華琉はるさんの娘さんかな?」

「にゃ……」


 いったい何が起こっているのか、把握できていないというような顔で魅烙はうなずいた。

 そんな魅烙と視線を合わせながら、姉さんは含み笑いをこぼす。


 何かたくらんでいるんだろうなーと、俺でも分かるような顔だ。


「魅烙ちゃん、だっけ」

「はいっ」

「第1回公式試合には出るの?」


 公式試合の話か。

 俺は公式試合についての記憶を頭から絞り出そうとしたが、それよりも先に姉さんが説明してくれた。


「そう、第一回の。授業の最終日にあるんだけど……」


 詳しくは先生からも説明があると思う、と姉さん。

 先生って、どうみても担任は魅烙の両親なんですが……。


 まあ、そういう意味なんだろうな。

 分かった理解。


「今わざわざいうってことは、戦力がほしいのにゃ?」

「そういうこと」

「……ゼニス一人で充分な気もするにゃ」


 その言葉を聞いて、姉さんはかなり虚を突かれたような顔をしていた。

 それもそうだわ。俺も今とっさに思ったし、ふつうの人ならそう思うだろう。


 何せ、学園最強。

 6万人の能力者の中で実質1位なのだから、いらないような気もする。


「うーん、どう返せばいいのかなぁ」

「何か、困ったことでもあるのかにゃ?」


 んー、と姉さんは難しい顔をした。

 そして、俺の方を振り返る。


「ちょっと、魅烙ちゃん借りてもいい?」

「はいはい」


 俺のものじゃないんだから、借りるとか借りないとか無いと思うけど。






「……アルカディアか」

烏導うどう先生、こんちは」


 魅烙と姉さんがいなくなり、俺は移動するわけにも行かず校門近くで座っていると、見回りにきたらしい生徒指導の烏導先生に会った。

 うん、昨日も会った。


「何をしている?」


 疑うような目で俺を見つめる先生。

 その声は、相変わらずというかなんというか、まだ2日目というのに一回で判別できてしまうほどだ。


 本当に、森の主みたいな声をしていると思ってしまう。

 声が特殊すぎるというか、厳かというか。

 でも、聞いてて居心地の悪くなるようなものではなく、むしろいい。


「連れが姉さんに連れて行かれちゃって」

「というと、あの猫科の……八神やがみ魅烙か」

「そうです」


 烏導先生、遠い目をする。

 おそらく、その両親のことを考えていると思われる。


「聞きたいことがあるんですけど」

「ん?」

「現在、天王子学園で最強の教師はどなたですか?」

「俺か八神王牙だな」


 即答である。

 って、自分のことかなり強いって自覚しているあたり本当に強いんだろうな。


 『八咫烏の導く日輪の化身』か。

 うん、普通に考えて強い。昨日ミニ太陽を生み出して俺の氷を溶かしていたし。


「八神王牙もかなり強いのは知っているだろう?」

「ええ、親父の相棒ですから」

「20年前に世界を救った代表格の一人、だな」


 直接戦ったことはないが、一回抗争が起こったときに彼の戦いをみたことがある、と烏導先生。

 やっぱり、天王子学園って6万人も生徒がいるから、たまにそういうことが起こるのかと思ったらその通りだった。


「ほら、噂をすれば影だぞ」

「……うわぁ王牙さん」


 本当に噂をすれば影だよ……。

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