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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第2部:第2章
139/199

第139話 「澪雫:嬉し涙と約束された人生」

 ネクサスくんが帰ってきた。

 そのことに気づくのに、私は彼が部屋に入ってから数秒、それを把握することができませんでした。

 それは、となりにいた七星さんも同じ。


 容姿が変わっているわけではありません。

 性格も、特に変わっていないようです。


 でも、雰囲気が、前の、……1日前の彼とは大きく違って感じられました。

 何かを卓越したような。何かを超越してしまったかのような、そんな感覚。

 しかし、目の前にいて私の手を握っている人は、確かに私の大好きなネクサスくんでした。


「あの、本当にネクサス君です?」

「どこか変かな?」

「ええ、全体的にオーラが全然違いました」


 何て言えばいいのでしょう。

 目の前に、ネクスト・アルカディアさんが立ったらたしかこんな感じでした。

 威圧はあまり感じませんが、そのオーラの密度が前の10倍くらいに濃いのです。


 強者の雰囲気でした。前から、ネクサス君は学生の中でも十分に強いですが、今のオーラを判断すれば、理創源りそうげん氷羅さんですら1発の蹴りでKOさせられそうです。

 そもそも、このオーラに当てられただけで、男子生徒の半分くらいがのけぞりそうですね。ひどい場合、そのまま逃げたり気絶したりするのかもしれません。


 とにかく、私はまだ平気ですが。

 七星さんの赤らめた顔が、完全に女のそれなのですが。


 なんですか、フェロモンなんていう物質とか、異性を引きつける効果も強化されているといいたいのですか。

 ……ちょっと、流石にそれはやめていただきたいですね。


 ゲームはあまりしたことがないのですが、たとえれば魅了レベル50くらいだったのが500くらいになった感覚です。

 と、思えば私も頭がぼぅっとしてきました。……俗世は一度絶ったのに、これはひどいですね。


「とりあえず、澪雫の病を治す」

「……むぅ」


 やっぱり、知られていたようです。おかげで私が考えた計画の風船はパーンです。

 ただいま破裂しました。私の人生は、18では終わらなさそうですね。


 でも、何時いつまでも彼と一緒にいられるのなら、いやな感覚はしません。

 私の最後の恋人はネクサスくんで決定です。病があろうとも、なかろうとも。


「手、貸して」


 いや、もう握られてるんですが。

 そう言おうとしたところで、彼の目線からもう一つの手だとわかり、彼に差し出します。


 ネクサスくんが私の手を、自分の手で包みます。

 彼自身が光り出したかと思えば、ぱっと。


 私の中で引っかかっていた体のしがらみ全てが、解き放たれたような妙な爽快感に満たされました。

 先ほどまで感じていた息苦しさとか、身体の違和感とか。

 あと、同時に頭の中の悩みなども全部。一度、初期状態にリセットされたような感覚です。


「とりあえず、病を消すと同時に属性能力を能力者同様に扱えるようにした」


 いやいや、そんな簡単に解決するはずがないのです。

 私が、悩んできて能力を諦めて、涼野流に入った意味が全て吹き飛びました。


 ……いえ、それはないですね。

 涼野流剣術は、能力者でも役に立つ護身術としても、攻撃手段としても利用できますから。


「扱えるようにはしたけど、やっぱり訓練をしなきゃ完全とはいえない」

「これからは、ネクサスくんと一緒に能力戦闘も可能ですかね」

「おうよ」


 その返事が、どうも頼もしく聞こえて。

 私は身体がほっこりするのを感じました。幸せでいっぱいの人生が、これからは送れそうです。


 先天性の病で一度は大人になることを諦めて。

 特化型能力者としても十分に劣るレベルだからそんな自分が悔しくて涼野流剣術を習って。

 師範の息子である人と出会い、紆余曲折あって恋人になって。


 その全てが、もしかしたら奇跡なのではないかと考えてしまう自分がいます。

 同時に、これがもしかしたら必然だったのかもしれないと考えてもいます。


「ええと、これは?」


 薬指に違和感。私はそっとネクサスくんから手を離して、そこにあるものをまじまじと見つめました。

 ……指輪です。シンプルに銀色ですが、素材は鉄でも銀でもないですね。

 何でしょう。……彼は真面目な顔をしてこちらを見つめていますが、それが何かは教えてくれないそうです。ただ、それがただの銀色ではないことに気づいて。多分凄く高いものなんでしょうね。

 でも、それがなにを意味するかは私にも分かります。

 ネクサスくんのとなりをみると、魅烙さんも同じものを付けていることから、だいたいの察しはつきました。


 彼や魅烙さんに話をしたいことはたくさん。でも、声はくちをぱくぱくさせても、出ません。

 ただ、頬を何かの液体が伝っていることに気づいて。


 それが涙だと分かって、魅烙さんに親指で拭われて。

 やっと、自分の気持ちが理解できて、私は指輪を胸に押しつけるように、抱きしめました。

この章は今回で終了


これで、やっと主人公が強くなりました。

次はゼニスになるまで、を書きたいのですが、せっかく正式に結ばれたことですし。


恋愛メインフェイズがもう少し続きます

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