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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第2部:第1章
132/199

第132話 「澪雫:衰弱」

 朱鷺朔清崙含め新入生が【ソキウス】に入って、3週間がすぎる。

 スローネは銃の才能、七星は能力の才能、清崙は徒手格闘の才能がそれぞれ見つかり、現在の状況はとてもいい、はずだった。


 代わりに、澪雫の状態が日に日に悪くなっている気がした。

 まず、病気がちになった。風邪をひく頻度が余りにも多くなって、学園にほとんどいけなくなる。

 3日、1日学園に行ってっていう感じ。


 病院に行くことも勧めたが、澪雫は聞かない。

 聞くとかではなく、この学園がある「通称」天王子島。そこにも巨大な病院はあり、そこなら通信で座学を受けること程度は出来るのだが、それを彼女は断ったのだ。


「もう少しで直りますから、あまり心配しないでください」


 彼女は俺が、彼女の部屋に行くと、弱々しい笑顔でそう笑った。

 とてもそうには見えない。むしろ、彼女の何か……正しくは命の灯火が、消えていくような感覚がする。

 もしかしたら考え過ぎなのかもしれない。元々病気がちで、それを直すために身体を鍛える。それのために母親の剣術を学び始めたが、ちょっとぶり返しただけなのかもしれない。


 それでも、やっぱり不安だ。

 澪雫の看病で同盟アライアンスとの時間は削がれ、1年生はほとんど刑道や影劉さんに任せてしまった。


「澪雫さんも疲れてるけど、貴方も大概にしなさい」


 魅烙は、実に我慢してくれていた方だと思う。

 澪雫と魅烙はどちらも俺の恋人であり、どちらが欠けてもおそらく俺は精神をすり減らしてしまうだろう。

 澪雫の看病や、心配などですでにすり減らし始めた精神を、魅烙が癒してくれた。


 こう考えれば、自分の気持ちがとても弱いことに気付く。


 俺は、魅烙に説教を食らった後、おとなしく膝枕されていた。

 姉なんていないのに、姉がもしいたらこんな感じだったんだろうかと考えてしまうほど、魅烙は包容力がある。


「私のことは、今は考えなくていいからね」


 静かな声に、はっとして。顔を上に向ける。

 今までもさんざん、いや、全くと言っていいほど魅烙を意識したことは少ない。

 澪雫との生活がとても楽しかったのだ。最初は親の仇のようににらまれていたというのに、恋人になってからはとても幸せだった。

 魅烙には、まだ何もしてあげていない。


「でも、これだけは忘れないで。私は、お母さんの二の舞にはならない」


 つまり、俺をあきらめはしないと言うことだ。

 彼女の母親、華琉さんは。

 自分の娘に、自分の夢を託して、半分つかみかけている。


 でも、行動からわかることはある。

 魅烙は、母親の夢だから俺とつきあったわけではなく、彼女の意思でそうやっている。


 だから、俺も答えなければ、彼女に申し訳が立たない。


「……澪雫が元気になったら、みんなでどこかいこうか」

「出来れば3人でがいいかな、と思って」


 彼女の言っている意味が分かった。

 でも、お楽しみの前に、遣らなければいけないことがある。


「魅烙、一人じゃちょっと勇気の足りないことがあるんだ」

「……何かな」


 魅烙はずっと、俺の髪の毛をなでていた。

 今日は離してくれないだろう、まあ、それもいい。

 澪雫のそばには今、零璃がついてくれているから問題はないだろう。


「明日、ほんとうに何もないのか、霧氷家に行きたいんだ」

「アポなしで? ……うん、そうね」


 霧氷家は一般家庭と聞いている。

 が、実際は違う。そのくらい、名前についている漢字「氷」から、表向きはなんとかなっても、5聖家に調べて貰えばすぐにわかることがある。





 御氷みこり家の分家なのだ。日本の氷属性有力家の。

 関帝家に次ぐ、刀鍛冶の名門。


 ちなみに、俺の母親の旧姓である「涼野」も、分家である。


 ……そう考えれば母親と澪雫、両方に剣術の才能があるのは納得行くものだろうとは。

 考えられないだろうか。


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